たかが詩じゃないか

詩音 悠

『うたかたの恋』

桜吹雪の舞う下で 

儚く揺れてる影ふたつ

胸に顔を埋め春の宵  

あゝ うたかたの恋だから

唇を重ねます

優しいだけの男だった 

嘘がつけない女だった

後悔しないと誓いを立てて

男と女 激しくからだ求めます



午後の翳りに蝉の声  

飛沫がきらめく蒼い波

汗で肌が湿る夏の午後  

あゝ うたかたの恋だから

欲望に溺れます

優しいだけの男だった  

嘘がつけない女だった

切ない引き潮 哀しみ浮かべ

男と女 とまどい捨てて流れゆく



紅く染まった池の水  

紅葉が水面を震わせる

散り残りの枯葉 燃える秋  

あゝ うたかたの恋だから

ため息を刻みます

優しいだけの男だった  

嘘がつけない女だった

煌めく夕陽が心に染みて

男と女 微笑みながら歩きます



風が騒いで雪が散る

氷のつぶてが頬を打つ

足袋の白さ冴える冬の朝 

あゝ うたかたの恋だから

永遠を信じます

優しいだけの男だった  

嘘がつけない女だった

差し込む明かりが障子を染めて

男と女 光に抱かれ眠ります

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