第3話

「町の東側のコンビニ」


「サンキュー!」


 学生服の男たちは、あっという間に走り去って行った。


「ふん」


 私は鼻を鳴らして、帰路に戻る。

 釣り下がる提灯に彩られた。たこ焼きの屋台のおじさんが、青味がかった顔をして、こちらに寄って来た。


「あの人たちは、泉学園の粛清係なんだよ。学校で違反をした生徒を撲殺寸前までしてしまうぞ……。多分に学校からこんな時間まで追い回しているんだろうて……。誰だか知らないが。お前さんが嘘言ってくれて助かっただろう」


「え……。本当の事。私、言っちゃった……」


 私の言葉におじさんが、更に青くなる。

 その時、私にぶつかった人がいた。

 急いでいる少年だった。

 あらぬ方へと駆けて行き、私はその少年が落とした携帯を拾ってやった。

  

 途端に携帯が鳴りだした。

 

 知らない電話番号だが、携帯から大きな声が出て、恐らくぶつかった拍子か何かで通話のボタンが押されたのだろうなと思った。

 

 私は電話を切るのも躊躇っていたので、仕方なく携帯を耳に当てた。


「玉西か?! 俺、コンビニにいるから! スクーターで来い!」


「え! 誰よあんた!」


 相手の声に、どこかで聞いたことのある声だと思った。


「あんた。誰だ! 玉西の彼女か?! 悪かった! 早くあいつと変わってくれよ!」


 切羽詰った。この見当違いの声を聞いていると。ああ、そうかと思った。


「さっきの茶髪の男ね! 私、嘘じゃなくて、本当のことを言ったから!」


「ええ! 何を言ったんだ!」


「コンビニにいるって!」


「……」


  あの茶髪が少し静かになった。その時。むかしむかしのことが頭の中に、過ってきたような?


「なあ、あんた。俺のことなんで? ああっー!! あの時の!」


「ふふん」


 私は鼻歌まじりに余裕を見せると。相手は急に予想もしなかったことを言った。

 受話器越しから、聞こえてくる次の言葉に私は更に苛立った。


「頼む! 結婚してくれ! 俺の名は! 聖次だ!」


「はあ?」


「一度。見たときから好きになってたんだ。その浴衣姿がグッドだ!」


「はあ?」


 電話が切れると、私は唖然としていた。

 何故か胸がムカムカしてきた。

 しばらく、じっとしていると、隣におじさんが佇んでいた。「顔が真っ赤だぞ」と冷やかしていた。頭に血が上った私は履歴からリダイヤルした。


「あんた何よ!」


「あ! いてて!」


 受話器越しからは、木刀みたいなもので何度も殴る音と聖次の呻く声が漏れ出していた。


「ちょっと、待ってて!」


 私は町の東側のコンビニまで駆けだしていた。

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