君の言の葉
私は泣きました。思いっきり泣きました。
こんな風に、思いの丈を空にぶつけたのは久しぶりです。私が最後に泣いた日は、もう覚えていません。
あいちゃんは、帰りの新幹線の中で、手紙を書いてくれました。直接言うのは難しいから、文章に起こして整理してから私に言葉を贈りたい、とのことでした。
私は、その手紙を読んで、また涙しました。あいちゃんの私への想いに感動し、堪えきれませんでした。
「私はもちろんのぞみんのお姉さんに会ったことはないから、その人について知っていることは無いに等しいんだよね。でも、私にもその存在に対して思うことがあるよ。
それはね、私にとって本当に大切な、かけがえのない友達であるのぞみんをつくりあげたものの1つなんだなってことで。言葉足らずでうまく伝えられていないかもしれないけれど、私がのぞみんとこうして友達になって、学校でいっぱい話したり、勉強会をしようと約束したりできるのも、その「紗希さん」という存在があるからだよね。それは、生命をたどる意味だけに留まらず、今の「櫛森希望」っていう一人の人間自体に深く影響を及ぼしてきたと私は思うんだ。
私たちは中3で、受験生で、時間がいろいろなものに縛られているよね。だから、簡単には遠出する時間を作れないし、家族のことを一番に考えることは難しくて、どうしても、私みたいな普通の人間は、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっちゃう。でも、のぞみんはお姉さんに会いに行く決断をした。そのことを、私はすごく尊敬しているんだ。
もちろん、その途中で苦しくなったらいつでもまた頼ってね。私はいつだって、いつまでだって、のぞみんの信友(勝手にこんなこと思っててキモかったらごめん。お互いを信じあっている、友達ってことです)でいるから。
お互い、勉強頑張ろうね!!
今より何倍も何百倍も成長して、また出校日や新学期会えるの、楽しみにしてるから。」
私は返事を書きました。
「あいちゃんの友達で良かった。」
これには、たった一言だけど、深い意味があります。
良かった、というのは過去形です。私たちは、今の今までは、ただの親友でした。でも、私たちは今日から、あいちゃんが言ったように、信友になります。お互いの苦しみを共有し、2人で一緒に成長できること。それが信友だと思います。まさに、私たちはそんな2人なのではないでしょうか。
返事を書いた紙を渡すと、またあいちゃんはシャーペンを手に取り、書き始めました。今度は、書くための所要時間はとても短いものでした。
「こちらこそ。
これからも『信友』でいさせてください。」
私たちは互いの顔を見つめ合いました。そして、ふふっと笑いました。
実は、友希姉の病気の治療が、思うように進んでいないのです。7月の最後の日、いつもの通院でそう言われたとお姉ちゃんから報告されました。
このままだと、退職に追い込まれてしまうかもしれないということでした。お姉ちゃんの主治医によると、入院も視野に入れているとのことです。
そうなると、私には家族がいなくなります。中学生では、1人暮らしは認められていません。私は、どうなってしまうのでしょう?
そんな不安も、手紙に書きました。信友のあいちゃんに、想いを伝えました。
「大丈夫。何があっても、私がいるよ。」
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