七月
目指した未来へ
23日(水)
一昨日、終業式がありました。通知表がひとりひとりに手渡され、真野先生は両親に見せてぜひ褒めてもらうように言っていました。私には両親はいません。いるのは体調が悪いのを我慢して私のために懸命に働いている友希姉だけです。友希姉は私の成績に興味があるのでしょうか?それはわかりません。なので、私は友希姉のストレスがまた増えてしまわないように、あの紙切れは誰にも見せないことに決めました。
成績はここに書き出しておきます。それは、勉強を頑張れ、という自分へのメッセージのつもりです。
成績を上げないと、学費の安い公立高校に入学できません。だから、費用の高い私立高校に進むのだけは、なんとしても避けたいのです。
国語 4
数学 3
社会 3
理科 2
英語 4
美術 5
音楽 3
体育 2
技術家庭 3
合計(内申点) 29
西の森中学を卒業した者が行く高校としてメジャーなのは、地元の西の森高校です。優秀な子はずっと昔からこの辺りで名を轟かせてきた公立高校・
西の森高校に入るためには、だいたい内申点が35ほど必要だそうです。今の私の成績は29ですから、6も成績を上げなければなりません。これはたいへんです。内申点30くらいの子が進学する学校としては、
私は勉強を頑張ります。それとともに、紗希姉探しをします。
あいちゃんという親友が私のそばにいてくれるから、私は大丈夫です。
紗希姉を見つけ出し、友希姉が健康を取り戻し、私は西の森高校に進んで幸せなスクールライフを送る。それが理想の未来です。
でも、一つ気がかりなことがあります。
それはあいちゃんの進路です。あいちゃんは良い家柄の子ですので、おそらく天陽高校を第一志望にするでしょう。別の学校に、分かれてしまいます。
あいちゃんなら大丈夫だと思いますが、それでも私は心配です。進学した後、私は一人でやっていけるのでしょうか。
それ以前に、私の家庭はどうなってしまうのでしょうか。
正直に言います。
怖くて怖くて仕方ない。
未来が怖い。
どんな苦しい未来が待っているのかと想像すると、悪寒や動悸がします。これでは私まで病気になってしまいます。それはいけません。
怖い。怖い。怖い。
あいちゃん。あいちゃんは、絶対、私のそばから離れないでほしいです。
さあ、弱音ばかり吐いていてはいけません。来週の土曜日、8月2日がいよいよその日です。室堂へと旅立ちます。
あいちゃんは準備万端だと言っていました。私の家でお泊り会をするという名目で両親から許可をもらったそうです。あいちゃんに親をだまさせてしまったことは申し訳なく思いますが、それは仕方ありませんでした。
あいちゃん、奥田さん、瀬川さん、そして私。その4人で、あの室堂平へと足を踏み入れます。昔遊んでいた思い出の場所。変わり果ててしまった思い出の場所へ。
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