幸せへの道③

25日(水)

今日の試験科目は、国語・英語・理科でした。私は文系科目が得意なので、国語、英語はあいちゃんの指導の成果もあり、かなり手応えがありました。しかし、理科のテストでは、わからない大問が5つもありました。テスト範囲は、等速直線運動や等加速度運動、仕事についてでした。

わからない問題がある度に、私は姉のことを考えてしまうようです。

昨日の数学の反省を生かし、理科の試験時間中はなるべくお姉ちゃんたちのことを考えないよう気を付けていました。国語は時間ギリギリですべて解き終わり、また英語も同様でした。お姉ちゃんのことを考える暇はありませんでしたから、きっとあいちゃんの講義の成果が発揮できたことと思います。

理科は今回の期末テストの中でもっとも自信のない科目です。なぜなら内容が物理分野だからです。ただでさえ苦手な理系科目、それでもって、特に苦手な物理とくれば、30点台であろうということは容易に想像がつきます。あいちゃんの講義を聞いたおかげで内容は半分くらい理解できていましたが、半分理解しているということは完璧に理解している分野の問題を全問正解しても、単純に考えれば50点くらいしか取れません。あいちゃんのように90点台をマークすることなど夢のまた夢でしょう。


さて、テスト返しの日が楽しみです。過去最高の成績を出すことができたか。それ以上に、ちょうどその日、瀬川さんに会うことになりました。

瀬川さんというのは、今度室堂へ行くときに付いてきてくれる山岳ガイドの方のことです。奥田さんが親切な方を探し出してくれました。

当日の段取りが徐々に決まってきました。

まず、ここ西の森を始発の列車で出て、そして始発の北陸新幹線に乗って富山に向かいます。そこで奥田さんと瀬川さんの2人と合流し、車で室堂平にできる限り近づきます。土砂災害が起こったあと、行政の許可なしで足を踏み入れるのは私たちくらいのものでしょうから、今現地がどのような状況になっているのかは全く想像がつきません。車で近寄ることもできないほどの荒野となっているのか、それともある程度は入れるくらいの、予想よりはマシな状況なのか。

私は過酷な登山となることも覚悟しています。

紗希姉を探すため。そして友希姉と紗希姉を再会させるため。

私自身のことなど後回しでいいのです。


パニック障害は、きっとストレスが原因なんだと私は思います。ただの予想ですが。

友希姉にとって、妹の紗希がいなくなったということは相当なストレスでしょうし、その上私を養わなければならない責任も背負っています。責任と、労働と、自らの気持ち。すべてを心の奥底にしまいこんできた友希姉のために。そして今もひとりでどこかにいるであろう紗希姉に、また家族で過ごしてもらいたいから。

私は頑張ります。何としても。

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