「話」
体育大会のプログラムがすべて終了したあと、私はあいちゃんと奥田さんを体育館裏に連れていきました。そこで「話」をするためです。内容は、私の生まれ育った環境のことでした。あらかじめ、話すことは頭の中にきちんとメモしてあったので、すらすらと言葉を紡ぐことができました。
「私、家庭がちょっと複雑なの。10歳上と9歳上のお姉ちゃんがいて、友希と紗希っていうの。お母さんは、ちゃんと診断を受けたわけじゃないんだけど、たぶん恋愛依存症。小学生の頃は、学校が休みの時期になると、私たちは富山にある母方のおばあちゃんの家に預けられて、その間、お母さんがどこにいるかはわからなかった。おばあちゃんは立山連峰の室堂平っていう場所で、旅館を経営していたの。自然に溢れた空気のおいしい場所で、私はいつもお姉ちゃんたちに遊んでもらってた。
お父さんのことは知らない。お姉ちゃんたちのお父さんと私のお父さんは別の人。
友希姉は高卒で就職して、その後すぐに、お母さんは男の人と一緒に家を出ていった。だから、私たち姉妹だけで暮らすようになったの。」
「そっか。いろいろ大変なんだね。のぞみん、頑張ってるんだね。」
あいちゃんのこの言葉から、彼女の人柄を感じ取れたと思います。あいちゃんは信頼できる人だ、と思いました。
「ところがね、私が中1の時、紗希姉が突然失踪したの。」
「ええ!?」
「うん。そうなの。紗希姉、いなくなっちゃったの。」
「そこで、俺が依頼を受けた。」
「奥田さんが?」
「希望が、俺に紗希さんを探すことを依頼してきた。なかなか苦労したんだが、この間やっと居場所がわかった。」
「そこが、室堂なの。」
「室堂……。あの、土砂災害の?山が崩れて何百人も死んだ、あの場所?」
「そう。」
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