私と君の共同作業①
――バン!号砲が鳴った。
桜木さんと結城さんペアが走り出した。二人はスタートしてすぐトップスピードで走る。一気に一位に躍り出た。内側に入り、自分たちの場所を確保する。
「いいぞいいぞ。そのまま突っ走れ!」
「桜木ちゃん、結城ちゃん、すごいよ!」
「ねえのぞ!これはいけるよ。うちらも頑張ろう!」
「ね、ね、すごいね!一位も夢じゃないよ!」
珍しく希望のテンションが上がっている。
さすが体育の成績が5のコンビなだけはある。運動神経抜群。保体係の常連。
第2走者の岬くん、門脇くんペアがスタンバイしている。門脇くんは右手を後ろに出し、バトンパスを準備は完璧だ。
桜木さんが左手にバトンを持ち、前へ差し出した。桜木さんが走りながらうんと腕を伸ばす。門脇くんの手に渡された。バトンパス成功。
「この調子だよー!」
「まだまだいけるよ!」
応援席からの声もだんだん大きくなる。希望たちは脚を結ぶ紐を確認し、スタートラインで準備する。このままなら1組の圧倒的な勝利は間違いない。希望はそう思った、はずだった。
「あっ!!」
藍子が声をあげた。
「やばっ!!」
「あいつらマジかよ。」
走っている二人のバランスが崩れた。転んだ。後ろから2組のペアが追い越して行く。5組も追い越してゆく。
岬くんも門脇くんも痛そうにしている。脚がきつく結ばれていてうまく立ち上がれない。
何とか立ち上がるともう4位になっていた。序盤で出遅れた3組もすぐそばまで近づいている。何とか走り出し、希望たちのところまできた。二人の怪我を負った脚と悔しそうな表情が希望と藍子の目に入る。藍子が言った。
「一気に巻き返すよ。」
やけに冷静な声だった。
いっせーのーせっ!!
練習と変わらない息ぴったりな走りだ。二人の持ちうる最も速いスピードで走る。二人にはもう応援の声は聞こえない。
1、2、1、2、
4組を追い越す。5組を追い越す。
はー、はー。
希望の息が切れてきた。
藍子は無我夢中になっている。
互いの肩を持つ手に力が入る。藍子が門脇くんから受け取ったバトンを希望に渡した。希望は左手でぎゅっとバトンを握りしめる。コーナーを回るとあと少し。もう少しでアンカーのところにたどり着く。一瞬でも早く田崎くん、本宮くんペアにバトンを渡す。それだけを考えていた。
希望がこんなに学校行事で熱くなったのはもしかしたら初めてなのかもしれない。太陽の光を身体中に浴びて田崎くんの右手にバトンを渡した。2組のペアはもう目の前にいる。あとほんの少しでも一度1位になって、そして3年生二人三脚リレーを制する。アンカーが猛烈な勢いで走る。2組も猛烈な勢いで走る。1組対2組。どちらがこの闘いを制するのか。
ほぼ同時にゴールテープを切った。
審判の川村先生が1位のクラスの名前を叫ぶ。
「2組!!」――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます