五月晴れの空の下④

「さあて、練習しましょ。ラストスパートだよ。」

あいちゃんは頭に着けていたピンク色のはちまきを取り、私たちの脚を縛りました。せーの、とあいちゃんが合図し、あいちゃんは左足を、私は右足を前に出します。息ぴったりでした。

いちに、いちに…。


ーー二人の掛け声が男の耳に小さく入った。男はそっと笑ったーー


「あー、あー。生徒諸君に連絡。只今午後の部開始十分前。五分前に全員席に着きなさい。また、室長はそれまでに点呼を行い、担任の先生に報告しなさい。点呼が終わり次第二人三脚の選手は入場門前に集合。実行委員の生徒は今すぐ本部に集まりなさい。」

あいちゃんは教頭のアナウンスが始まると同時に、はちまきを自分の頭に巻に直しました。私たちは2人とも準備万端です。スー、ハー。スー、ハー。深呼吸をします。

この大会のルールはいたって単純です。いくつもの競技を行い、1位のクラスには5ポイント、2位のクラスには4ポイント、というように速かったクラスほど高い点数が入ります。体育大会の優勝クラスはそのポイントが一番高いクラスとなります。3年生にとっては、最後の体育大会です。彼らの気合いは他の学年の何倍もありました。

「只今より、西の森中学校体育大会午後の部を開始します。」

「プログラム8番、二人三脚です。選手が入場します。」

入場時に使われる勇ましいファンファーレが鳴り響きました。選手は走って入場します。その中に私とあいちゃんの姿がありました。

まずは1年生。まだあどけない、かわいらしい子も多く、ヒョコヒョコと走っている様子を上級生は温かく見つめています。

次は2年生。先輩らしい貫禄がようやくついてきました。

そしていよいよ3年生の出番です。最上級生ならではの威厳を持っています。今回が最後なだけに、盛り上がりもひとしおです。

私たちは第3走者です。アンカーにいかにいい順位でバトンを渡せるか。第2走者までにかなりの差がついている場合も多いために重要なポジションであります。

さっきまでいた応援席では、クラスメイトがこちらを見て大声を張り上げています。頑張れだの、一位になれだの、様々な声が聞こえました。

第1走者がスタートラインに立ちました。いよいよレースが始まります。

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