五月晴れの空の下③
「喉が壊れそう。めっちゃ叫んだわ。」
「次は何?」
「ランチ」
「もう午前の部は終わりなんだ。なんか早いね。」
「そうね、五十メートル走、五十メートルハードル、持久走、ハンドボール投げ、女子リレー、男子リレー、混合リレー、それでおしまい。ところで、『話』はいつするつもりなの?」
「全部終わったあとにしようと思って。それで大丈夫かな?」
「いいよいいよ。その、紹介したい人ってのはもう来ているの?全然分からないんだけど。」
「来てたよ。混合リレーのとき。今日はまともな格好してた。」
「ああ、そう。そりゃ分からないわけだ。ヤクザみたいな人って、前は言ってたもんね。」
ーー正門には立派な桜の木があると教わった。それを目印に学校の外周を歩き回ってみると、確かにその場所を見つけることができた。担当の先生がやって来る保護者一人一人に名前と自分が誰の親なのかを書かせている。面倒なことをするもんだ。
男は名前を書き、保護者として中に入った。記した子供の名はもちろん希望の名前だ。運動場では生徒が走っている。ああ、今はリレーをやっているのか。ピンク色のはちまきの集団の中にそれらしい人間を発見した。楽しそうに満面の笑みで声を張り上げている。あいつも青春ぽいことできるんだな。そりゃそうか、ああ見えてあいつはまだ15歳なんだから。
初めて会ったとき、あいつは12歳だった。しかし、女子高生くらいに偽っても問題なさそうだった。大人っぽいけど、やはり実年齢には逆らえない。中身はまだまだ中3の女の子なのだ。
あいつがこちらを見た。どうやら気づいたらしい。俺も手を振ってみる。あいつが俺に向かって微笑んできた。かわいい。
あいつは二人三脚に出場すると言っていた。ということは午後イチか。もう少し先になる。隣で一緒に走る子が例の倉沢藍子だそうだ。よく見ておかねばーー
私たちは仲良く一緒に教室へ戻りました。椅子は運動場に出してあるため教室には机しかありません。仕方なく、弁当を床に広げ、食べ始めました。クラスの皆がそうしていました。
「今日のメニューは何?」
「唐揚げ。」
「いいなぁ」
「ちょっとあげようか」
私は唐揚げをもらうかわりに梅干しをあげました。私の弁当には毎日梅干しが入っていますが、正直、迷惑な話です。私は梅干しが嫌いなのです。
「んんーうま。」
「んんーすっぱ。」
「んんーって、シンクロしたね。」
二人揃って照れてしまいました。それを隠すかのように、あいちゃんが言いました。
「あのさ、二人三脚の最後の練習、早く食べてやらない?」
「うん、いいよ。」
「頑張ろうね。一位目指そ。」
「なにそれ!プレッシャーだなぁ。」
私は話しながら感傷的になっていました。私にとって、運動会の日の昼御飯を友達と一緒に食べるなんて久しぶりのことだからです。
私の喉に空白の塊が詰まりました。私は、あわてて白米を掻き込みました。
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