五月晴れの空の下②
今日、あいちゃんはとびきりの笑顔で登校してきました。クラスカラーのはちまきを道中で既に身につけていました。私はその姿にもはや呆れるしかありませんでした。
「あいちゃんって本当に運動が好きなのね。そりゃクラスで浮くのも無理ないわ。それで、いつ『話』すればいい?」
「いつでもオッケーよ。委員会入ってないし。良かったよ、実行委員とかならなくて。委員になったら一日中ずっと仕事だし、そんなのやったら楽しめるものも楽しめないよ。」
「あいちゃんらしいわ。」
学校に着くと既に会場の準備は整っていました。
私たちは二人三脚に出場します。ある日、出場種目を決定する日が設けられました。その時に、私たちは示し合わせて同じ種目に立候補したのです。ペアは、選手が決まってから組まれます。よって私たちは共に走れることになりました。
必要な荷物は地べたに置き、教室に椅子を取りに行くと、教室では、黒板に大きくメッセージが書かれていました。
「みなさん、おはようございます。いよいよこの日がきました。今までみなさんは今日という日のためにとても頑張ってきたと思います。みんなはとても仲がよく、あたたかいクラスです。素敵なみんなの姿が見られることを楽しみにしています。私は本部での仕事があるのでなかなか直接応援の言葉をかけてあげることはできないかもしれません。でも、心の底からみんなが健闘し、素晴らしい体育大会となることを祈っています。」
私は言いました。
「真野先生ってこういう熱いことするんだね。」
「そうね、ああ見えて意外と熱血漢なのよ。前からずっと。」
私は昨日の夜はよく眠れませんでした。なんてタイミングなんだろう。よりによって今日になるとは誰が予想できたでしょうか。
椅子を運びながら私は観客席を見回しました。大丈夫、まだ来てない。
「生徒諸君に連絡。開会式は五分後からだ。それまでに全員応援席に着き、室長は点呼を済ませ、担任の先生に報告するように。」
「あら、急がなきゃ。おーいのぞみん、なにしてるの。早くしないとまずいよ。」
「あぁ、ごめんごめん」
私たちの出番は午後イチです。午前中は暇であるはずですが、あいちゃんは応援に精を出すに違いありません。私は、「話」は閉会式まで全て終わってから行うことにしました。
「1組~1組~頑張れ~あと少しだよ~」
「おーい頑張れ~」
「抜かされるなよ~」
歓声が大空に響き渡ります。ピンク色のはちまきの集団は美事な一体感を漂わせていました。その集団の中の一人があいちゃんです。
「倉沢さん、今日は頑張るね」
「そりゃ、目一杯楽しみたいから」
「ほら、のぞみんもだよ。頑張れーって叫んでみ」
「う、うん」
「持久走はかなり疲れる種目で大変だと思うけど、頑張ってねー」
「のぞみん、堅いって。ほら、いろいろ考えてるんだと思うけど、ちょっとだけそのことは忘れて、楽しもうよ。ねっ?」
「うん」
私はほほえみました。
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