五月

五月晴れの空の下①

「明日は体育大会です。今までの練習の成果を発揮できるように、今日はゆっくり休んで、明日に備えて下さい。」

昨日の帰りの会では、真野先生にこう言われ、そして今日を迎えました。今日は体育大会でした。

3年1組の教室では生徒34人の声が響き渡っていました。大会に向けて気持ちが高揚しているのでしょう。あいちゃんもその内の一人でした。

「ねえ、どうする、一位とかとれちゃったら。」

「それはないでしょ。私の体育の成績どんなだと思ってるの。2だよ、5段階評価の2。」

「そんなんまだ分かんないでしょ。」

こんな感じで、私たちは話していました。

「まあ、明日は私の恩人が見に来るから、せいぜいドベにならない程度に頑張るわよ。」

「恩人?なにそれ」

「見た目はただのヤクザだけど、いい奴だから」

「ふーん。わかった。紹介してよね」

「んー」

あいちゃんは私から物騒な単語を聞いても動揺しないようになっています。私の過去が波乱万丈であるということは、とうの昔に承知しているのです。私のことをほんの少しでもわかってくれている人が一人でもいるというのは、ありがたいことです。

ところで、私たち二人がエントリーした競技は二人三脚です。二人で一緒にできるもので、なおかつ運動神経がなくても何とかなるという条件を満たす競技がそれしかなかったからです。あいちゃんの方は体育は得意分野ですが、私の方はと言えば、全くの運動音痴ですので、仕方ありません。

ここまでの経緯が分かれば、あいちゃんのテンションが上がることも無理はないと理解できるのではないでしょうか。

五月に入り、何とか私は西の森中学に馴染んできました。始めに声をかけてきたあいちゃんは当初クラスで浮いていたものの、持ち前の明るさでだんだんと溶け込んでいきました。

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