『時間の国のお嬢様』 P.10~P.16

 続きのページを捲れば、顔のぼやけた髪の長い少女がページを跨いで描かれていた。古い紙質をなぞるように触れつつ、少年は物語の続きに目を通してゆく――――――――。


 二人の女の子を待っていたのは、あこがれていたあの『神様かみさま』。


 『神様かみさま』は二人を歓迎してくれ、たくさんのおはなしをしてくれました。そして『神様かみさま』からくれた「二人ならお嬢様になれるよ」という一言は、一生忘れられない言葉となるのです。


 この日もらった『神様かみさま』からの言葉を胸に、その後、二人はゆめに向かってがんばります。時にはあきらめかけたけれども、それでも二人ははげましあいながらがんばったのです。


 それから、――――八年の月日があっという間にちました。


 とうとう迎えたこの日、あの二人は宮殿の広場に集まったみんなに手をふります。


 ――――そう、がんばった二人はみごと、夢を叶えたのです!


 宮殿の前、二人の就任しゅうにんをお祝いしてくれるたくさんの人たち。


 二人はうれしさいっぱいで手をふります。


 だけど。


 ふと、二人は一つの『かんがえごと』をしました。


 ――――どうして一番えらい『神様かみさま』になれたのかな?

 ――――どうして『神様かみさま』の次にえらい『死神しにがみ』になれたんだろう?


 だって、一年生がはじめから一番と二番になるのなんておかしいよね? なんで?


 でも、二人はやっぱりよろこびます。お嬢様になれたことがすごくうれしかったら。


 だけど、二人はそのわけをあとから知ることになるのです。――――『神様かみさま』と

死神しにがみ』は特別な代償だいしょうを払わなければならないというわけを。


 代償だいしょうって、なに?


 そう、――――心をこわしちゃうこと。


 そのことに気づかぬまま、時はあっという間に過ぎてゆきました。


 心がこわれ、むかしとは変わってしまったあの二人の女の子。


 むかしと変われば、なかよしだった二人の関係かんけいも変わります。


 二人はおしごと以外、一切おしゃべりしをしなくなりました。


 ろうかで顔を合わせても、おはようのあいさつすらありません。



 二人はお嬢様になってから、友だちではなくなっちゃったのです。

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