第41話 切断の剣
「すご……これが神器の力か……」
俺は目の前で、切り刻まれ動かなくなった亜種を見てそう呟いた。
「すごいのじゃ〜……」
後ろの方からバカみたいなトッティの声も聞こえてくる。トッティがバカみたくなるのもわかる。
なんたって、今持っている神器。切断の剣で亜種のことを一瞬にして切り刻み、その形がなくなっていったからだ。多分だけど、トッティにはなんで亜種が切り刻まれたのか見えていなかったと思う。それほど早かったということだ。
俺も正直、目が追いつかなかった。剣を持った瞬間、腕が軽くなりとりあえず振り下ろしてみたら勝手に亜種のことを切り刻んでいた。まったく……この神器は解除の指輪や防御の服のように完璧ではないのか?
こういうことを早めに知っておいてよかった。もし、今が絶体絶命でこの神器しか使えないとかそういう状況にでもなっていたら取り返しがつかない事態になっていた。
「な、な、な、何が起こったんですか!?」
俺がそう考えていると、ルイサが間抜けな声を出し目をまん丸くして叫んだ。その隣りにいたギルドマスターもその意見に同感したのか、「うんうん」と首を立てに降っている。
あぁ、そうか。こいつらにはこのことも知らなかったのか。
教えたほうがいいか……?
いや、そんなことしたらよけいこいつらの頭をこんがらせるだけだ。今はその時じゃない。
なので俺は「はは……」と苦笑しながら続ける。
「見えなかったか? 俺が亜種を切り刻んだよ」
「…………?」
ルイサは俺の言った言葉を理解できていないような「?」を顔に浮かべた。もちろんその隣りにいるギルドマスターも同じく「?」を顔に浮かべている。
そして二人は同時に顔を見合い、
「「?」」
首を傾げた。
こいつらは一体何をしたいんだ?
まぁ、今はそんなこといい。
「馬車を進めろ。これから、亜種の元凶となっている黒い物体を討伐しにいく」
俺はそう言って、顔を見合っている二人のことを無視してトッティがいる荷台に乗り込む。
「はいっ!」
サリアは俺の言葉をを待っていたかのような元気な返事をした。
そして、馬を動かして……。
「ちょっと待ってくれよ!!」
ルイサは慌てて後ろから荷台に乗り込んできた。その後ろには無言のギルドマスター。こいつ、さっきまでかなり重要人物っぽかったけど一気にモブキャラになったな……。まぁそんなことどうでもいいか。もともとこいつの顔、モブキャラみたいだし。
「ついてくるのか? この先の道は命の保証はないぞ?」
「当たり前です!! 私はマサル様のためなら死もいとわないのです!!」
ルイサは力強い声で言ってきた。そしてその後ろにいるモブキャラ兼ギルドマスターは、空気を読んで頷いた。
馬車の中だとかなり声が密封されているので、耳が痛い。なんでこいつは、俺に忠実なくせにどこかネジが外れてるんだ?
「わかった。ならついてこい」
■□■□
「ここが、お主が言っておった黒い物体に惨殺された国なのじゃ?」
トッティは荷台から体を乗り出して正面の壁を見てギルドマスターへと問いかけた。
そう俺たちは3日間の馬車での移動の末にとうとう、亜種を生み出した元凶がいると言っていた国にたどり着いたのだ。
国についきそうそう、トッティが問いかけたくなる気持ちもわかる。だが俺は合点がいった。なぜ、こんな場所に見知ったギルドマスターがいたのかということに。
「ここって、シャリア王国か?」
目の前には見たことのある高い壁。
俺たちが一度、逃げた国。
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