第35話 トッティの決意


 最近、マサルの様子がおかしい。明確には最近というよりかは、神界から下界に戻ってきたときなんじゃ。あやつは下界に帰ったら真っ先に神器を身に着けおった。 


 かぁ〜……。本当に何を考えてそんなことをしたのかわからないんじゃが聞いてみるところ、「用心に越したことはない」らしい。


 まぁ確かに用心しておくことは大事じゃよ?

 大事なんじゃが、四六時中ゴツい剣とか痛々しい黒い服を着ていられるとなんだか心が落ち着かないのじゃ。まぁ、わしが心が落ち着かないことは良しとして。

   

 前まではわしのことを、「のじゃロリ」だの「ちんちくりん」だの意味のわからない呼び方をしていた。たぶんじゃが、どれもわしのことをバカにしている呼び名だと思う。じゃって、呼んでいるときの顔が少し前のわしがよくいたずらするときの顔にそっくりじゃったから。

 って、そんなことはどうでもいいのじゃ。


 とりあえずあやつは今、わしのことを名前で「トッティ」と呼んでおる。どういう心境の心変わりでで名前で呼ぶようになったのか知らんがなんかあやつに名前を呼ばれるとおかしいんじゃ。

 それに名前だけならなんとも思わない? わけじゃないのじゃが、あやつわしに対してというよりか、わしとサリアに対しての接し方が変わった気がする。


 前までなら、わしが騒ぎ立てると適当にあしらうんじゃが、今は「ふんふん。それで?」とちゃんと聞いてくれるのじゃ!

 まぁ聞いてくれるのは嬉しいんじゃが、今までわしのことをうまく扱っていた。なのに、急に優しくなってなんか人が変わったようじゃ。

 それはわしだけじゃない。サリアも同様のようじゃった。あやつはある日わしに相談してきたのじゃ。「この人、本当にあのマサル様ですか?」と。

 

 あぁ……そういえばあやつがおかしったのはあれもじゃな。あやつが時間の石に触っていたときじゃ。

あのときわしと、お父様は久しぶりの再開にうれしくなって会話が弾んでいたんじゃが、あやつは数分くらいずっと時間の石を触って険しい顔をしていたのじゃ。


 神界から帰ってきてわしらへの対応がなんであれ、わしはこやつと一緒にこの異世界に飛ばされたのじゃ。

 あやつが前世でどんな生き方をしていたのか、知っている。あやつがどれほど苦しい日々だったかなど、わかったようなことは思わない。じゃけど、いつもあやつは自分の中ですべてを解決しようとする。


 それはわしらのことを心配させないようにしているのかもしれんが、それは逆効果になっているとは気づいておらんじゃろう。


 だからわしらがあやつに何があったのか気になるというのもあるんじゃが、あやつのことが心配じゃ。

 どういうことなのか聞かなければ。

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