第34話 何かを決意した男の顔は決まってる


「はぁ〜……」

 

 寝たことによってある程度、頭の中で整理がついた。

 未来の俺が言っていたことをまとめてみると、今は神になっているけど周りのみんなはいない。自分は間違えた選択をしてしまった。神器というものは神になるときに必要なもの。それが欲しがっている連中がいる。近いうちに大きな戦いが待っていると、そんなところだろうか。


 神器を欲しがっている連中というものはある程度予想がつく。未来の俺の喋っていた内容から察するに、その連中は周りの人たちがいなくなるほどの強敵。そういう存在は見当がつく。ほかの神だ。たぶん俺や他の死んだ人を異世界に飛ばしているやつらが敵。トッティはないと思うけど。


 たぶん未来の俺はそいつらに勝ったんだと思う。そして、目的を果たすことができた。だけどそれは間違った選択であった。う〜ん……。なぜ、未来の俺が過去に声を送ったのかわからない。


 だってそうだろ? 

 大きな敵に勝って目的を果たしたんじゃないか。

 …………もしかして、トッティや他の人たちを失ったから何じゃないか? 最後に未来の俺はトッティたちのことを仲間とは呼んでいなく、『家族』と呼んでいたことがその仮説に信憑性が湧いてくる。


 そんなことで過去になんか……。いや、ありえる。ずっと引きこもって死んだあとに初めてできた仲間とも呼べる人たち。未来の俺はそんな大事な人をなくして孤独に耐えられなくなったのか?

 多分そうだ。未来の俺は間違った選択をしてしまったせいで周りの人たち全員を失った。だから、失うなと言うことなのだろう。


 だが俺はまだ、肝心の7つ目の神器を見つけ出すことはできていない。

 もしかしたらその7つ目の神器が強大すぎて俺でも、犠牲がなかったら勝てないほどのものなんじゃないか……?


「何を考えてるんだ俺は……」


 いやそんな嫌な想像ばかりしてはいられない。

 俺は、未来の俺のことを信じてこれから行動することにする。仲間……いいや家族を失うなんて嫌だ。


 まずは神器だ。

 俺はそう決断し、扉を開いた。

 のだが、扉の目の前に今にもノックをしそうなトッティがいた。


「む? もう体調は戻ったのかの?」


 トッティは慌てて右手を後ろに隠してまるで今、たまたますれ違ったかのようにふるまってきた。


「あぁ。もう大丈夫みたいだ」


 俺は笑いそうになったが、こらえて普段通りにふるまった。

 するとトッティは「ピカッ」と明かりがついたかのような、満面の笑みを浮かべ口を開いた。


「そうかそうか! それは良かったのじゃ。わしは今から朝食を食べに行くとこなんじゃが、一緒にどうじゃ?」


「じゃあ、せっかくだし一緒に行こうかな」


■□■□


 大きな四角いテーブルの上。

 そこには数々の皿が置かれており、皿の上には見たことのない料理の数々がある。


「のじゃぁ〜ん。もぐもぐ……。くかぁ〜! さすが神界の食べ物じゃ! 下界とは比べ物にならないほど美味なのじゃ!」


 王冠のおじさんと隣同士で、俺とは対面に座っているトッティがまだ口の中に食べ物が残っている状態で言った。


「うむ。さすが我が娘。いい食べっぷりだな」


「む? マサル食べないのかの?」


 食べないわけじゃなくて、口入にれるのが怖い。

 だって青いエビのようなものだっり、赤い血でできたようなスープなんだぞ……? これが神界での料理なのか?

 いくらなんでも見た目が悪すぎるぞ。

 

「いやぁ〜ははは……。今食べるよ」


 俺は苦笑しつつ、青いエビをフォークでぶっ刺してかぶりついた。


「もぐもぐ……」


 なんだこれは?

 味はエビと変わらない。だけど、エビのような弾力のある歯ごたえにもかかわらず、歯で噛んだらとろけていくようだ。まるでA5の肉だな……。まぁ一度もA5の肉なんて高級食材、食べたことなんてないんだけど。


 対面に座っている二人が俺の食べているところを食べていた手を止めて、じっと見ている。

 …………。


 こんな状況で食べづらいんですけど!

 まぁ神界の料理が下界、しかも異世界人の舌に合うものなのか気になる気持ちもわかるんだけどさぁ……。


「どうじゃ?」


 トッティはハラハラしているような顔をしながら聞いてきた。


「おいしいです」


「はっはっはっ! そうだろう。そうだろう。なんたってこの食べ物は神界のだからな」


「「「もぐもぐ」」」


 そして三人は無言で料理にがっついた。


■□■□


「はぁ〜!! 食った食ったなのじゃ……」


 トッティは「ゲプゥ……」という汚いゲップをし、背もたれに体重をかけリラックスした。


 こいつ、おかしい。だって俺と王冠のおじさんは3品ほど食べたら満足になり、フォークをおいたのだがこいつはずっと食べ続けていた。

 20品以上もだ。いったいそんな量の食べ物、こんなちんちくりんの体にどうやって入っていったんだ……? お腹は全然膨らんでおらず、見た目は一切変わっていない。


「はっはっはっ! 溜めておいた食材をすべて食べ尽くしてしまうとは。さすが我が娘だ」


「あの……」


 俺は料理を食べて忘れていたのだが、するべきことを思い出したので勇気を出して王冠のおじさんに話しかける。


「どうした? 我が娘の友人。マサルよ」


「……そろそろ、下界に帰ってもいいでしょうか?」


「うむ。そうか。ならば下に降りる手続きをしておく。久しぶりに会えて嬉しかったぞ。我が娘」


 王冠のおじさんはそう言って椅子から立ち上がった。


「のじゃ!? わしも下界に帰らないといけないのじゃ?」


「それはそうだろう。これは罰なんだから」


 王冠のおじさんは甘えている娘を前にしても、厳しい言葉をいってそれをする。親ばかだと思っていたけと、意外とちゃんとしている神なんだな。


「む……。マサル。もう少しここにいるのって……」


「ダメだ」


「むぅ……」


 トッティは俺の言葉に納得がいっていないかのように唸る。


「そんなに落ち込むんじゃない。我が娘よ。なに、罰が終わったらまたすぐ会える」


 王冠のおじさんはそう言って、トッティの頭を撫で部屋から出て行った。


「お父様……」


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