第27話 油断禁物



「黙れ」


 トッザは重い声とともに、俺の顔面めがけて殴りかかってきた。


「――! 危ねぇ……」


 俺は危機一髪で避けれたが、拳が少し髪の毛に当たった。

 なんてスピードだ。もし拳に当たったら俺の顔なんて、粉砕されちゃう……。


「ふむ。避けるか。ならば」


 トッザは拳を俺が避けたことに納得したかのような言葉を発した。俺はなにか嫌な予感がして、その場から少し下がりトッザから距離を取る。

 そして次の瞬間。

 トッザの両手のひらから赤い光がしたと思ったら、またたく間に小さな魔法陣のような光を発していた。

 俺はそれを見て、目を丸くし口を開いた。


「えっ! ちょちょちょっ!! 魔法なんて反則だろ!!」


 これは俺が漫画で見たことのある魔法を出す前にい見る、魔法陣だ。

 ずるい。

 トッザは神器を5個ももっていて、体は頑丈。さらに魔法まで使おうとしているのだ。俺は、スキルを無効化される神器があるのでワームホールは使えない。なのでこの通りナイフ一本だ。


 まぁ、死を覚悟した戦いにずるというものがないことは承知なのだがあまりにも自分が不利なのだ。


「これは魔法ではない。神器であるネックレスの力だ」


 トッザは両手のひらを俺に見せつけながら自慢げに説明し始めた。


 俺はそこ言葉を聞いて心のなかでガッツポーズを決めた。なぜなら、またこいつが無駄に喋ることによってなにか弱点を見つけられると思ったからだ。


 だがガッツポーズは崩れることになった。

 なぜならトッザは俺のことを見て、「おっと」といい


「危ない危ない。喋りすぎるところだった」


 と笑いながら言ってきたからだ。


「ッチ」


 さすがに考えていたことが明確すぎたか。

 だが終わったことはいつまでも引きずっても仕方ない。

 俺はそう思い、ある作戦を実行した。


「クソっ……。ちょこまかとちょこまかと部屋中を逃げ回りやがって……」


 それはスキルのおかげなのか、素早く動き相手のことを混乱させることだ。

 トッザは予想通りの反応をした。


「ふむ。これは大変な事態だ」


 俺は、残像を見て困惑しているトッザのことを見てついつい面白くなって煽った。


「私の真似をするな! ぜんぜん似ていない! それに不快でしかない!!」


「うぎゃ!」


 俺の体はトッザの足に踏みつけられた。いつかの盗賊のような大勢になって動くことができない。

 こいつ、一体何キロなんだよ……。


「ふぅ。やっと捕まえたぞ。マサル?」


「――――!?」


 相手を追い詰めたときに見えた油断を俺は見逃さなかった。


「やっと捕まえたぞ。トッザ?」


 今度は先程とは真逆の位置で、俺がトッザのことを馬乗りする形で見下ろした。

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