第26話 神器というのは人の手にあまる代物
トッティがいなくなったとしても俺がすることは変わらない。元々トッティは来る予定じゃなかったんだ。もとの予定に変更したと思えば気が楽というもの。
俺は先のない廊下を漂い続けていたら、自分の勘に導かれ一つの扉に手をかけた。
そしてドアノブを回し、部屋の中に入る。
そこは真っ暗。それもそうだ。電気がないんだから。俺はそう思い、もう一度あたりを見渡す。
すると僅かだが廊下からの光でベットが見えた気がした。そのベットは漫画やアニメでしか見たことのない、貴族のような屋根付きのベット。
ここは、誰かの寝室なのだろうか……?
「――コツコツ」
俺が疑問に思ってきたら後ろから足音が聞こえた。
俺はその足使いに聞き覚えがある。
覚えているというよりかは忘れられない。
「はっ!」
俺は足音が自分の間合いに入ったと思い、素早く腰からナイフを引き抜き斬りつける。
「ふむ。一度負けたにもかかわらず、もう一度挑みに来たその丹精だけは褒めてやろう」
その攻撃は、容易に片手で静止させられた。
目の前にいる人物、トッザは前は上半身裸だったが今回は、服を着ているようだ。この部屋に明かりがなくてどんな服を着ているかはわからない。
トッザは俺の手首を握りつぶすような力でつかんでいる。
「ぐっ……」
俺はまたも、何もできない現実に挫けそうになっていた。
「だが、お前は私のことを倒す策を持っていない。それはここに自殺しに来ているということとそう変わらないぞ。マサル」
「なんで俺の名前を?」
俺は、トッザが名前を知っていることが衝撃的だったため質問した。
俺は自分で名前を名乗っていない。
もし俺のことを前もって知っていたのならば、仲間が危ない。そう思ったのだが……。
「ふむ。私がお前の名前を知っていてそんなに疑問か?」
「あぁ。疑問だね」
「では、もうすぐ死ぬお前に情けとして教えてやろう。お前も神器の存在については知っているだろう?
あれは、限られたものにしか扱うことができない神の道具。そして、その中の一つに知りたいことを知れるイヤリングがあるんだ」
「それで知ったってわけか……なんだよそれ」
本当に神器というものは何でもできるものなんだな……。俺はスキルでもどうやっても勝てない物を持っているやつにどう勝てばいいのかわからなくなった。
それにこいつは、神器のことに詳しそうだ。
トッティが予想していたとおり、神が絡んでいることは明確。
こいつは一体何この神器を隠し持ってるんだ?
「ふむ。私は合計で5つの神器を所有している」
「な!?」
俺はトッザが、決して口には出していない疑問に答えたため驚きを隠せなかった。
だってそうだ。
トッティから聞かされているのと、ここに飛ばされる前に聞かされた話だと神器は全部で7つ。
その過半数以上もの数を自分が持っていると言っているのだ。
もしかすると、口に出していない疑問に答えたのは俺の頭の中で考えていることを知る神器があったりして……。
「ふむ。そうだ。そのとおりだ。これも神器の力でお前の脳内で考えている言葉を読み取っている」
「気持ち悪いな!」
俺は素でトッザの言葉に反応した。
こいつが持っている神器のせいで、知られたくないことを知れるんだ。こいつの前ではプライバシーというものがない。
頭の中を読み取れる相手。
だがおそらく先程から読み取って、俺に話してくる内容からすべては読み取れないとみた。
なせならトッティと言う人物名を出しているにもかかわらず、そいつについては何も言ってこないからだ。あいつはちんちくりんでも、一応神。
そのことを知ったら目の前のバカ異世界人の俺のことなんかより、あいつのほうが優先順位が高いと思う。なのでこいつは相手が考えていることをすべて読み取れるわけではない。
ただちんちくりんのことなど興味がなく、触れなかったというだけかもしれないが。
「ふむ。お前は外見だけだとバカに見えるが意外と、考えて行動するタイプなんだな」
「それって褒めてるのか?」
俺は話を変える。
コイツは俺の考えていることの確信にはついていない。おそらく、長考したことによってその内容までは読み取れないとみた。どうやら俺の予想は的中していたようだ。
「いいや。バカにしてる」
「クソがっ!!」
俺はトッザの言葉を聞いて感情的になり、ついつい手が出てしまった。
もちろん、勝機など微塵も感じてない。
どうせ、止められる。
案の定俺の手首は再び片手で容易に止められてしまった。あぁ〜あ……。こっちの予想はあたって欲しくなったけど。
「ふむ。そのバカでかい威勢も褒めてやろう」
俺はトッザの言葉を聞いて再び感情的になった。
止められている手を力ずくで
両手首を抑えられる形になった。
「はぁ……はぁ……」
なんだ。なんなんだ。なんで俺はこんなに目の前のやつに腹を立っているんだ。なんでこんなにイライラしてるんだ。
わからない。
だが、俺の怒りは収まることはない。
「ふむ。それは神器を扱うものと戦うときに一番大切なことだ」
「クソ! くそ……。 く、そ……」
目の前のやつに、イライラはしている。そして口が動いている。だが実際に俺は、そんなことは思っていない。
これはんなんなんだ?
まさかこれもスキルの代償なのだろうか……?
俺の心は至って正常だった。
そしてどうすれば神器を持っているトッザに勝てるのか考える。
「私は自殺願望者にかまっている暇はない」
「グッ……」
「見事と言うような死に様ではないが、無謀に相手に立ち向かう精神だけは見事だった」
「な、に……?」
俺は思いっきり顔を殴りつける。そしてトッザが少しよろけ、手で鼻を拭って鼻血が出ていることを確認する。
そして……。
「さっきから一人でべちゃくちゃ喋り過ぎなんだよ!」
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