第25話 混乱っていうのは混乱って書くんだよ?
マサル様から計画を聞いて早、一週間。
私はあのあと、急いでこの国住んでいるファンクラブの人々に自分たちのすべきことを話した。もちろんそれが、マサル様の計画だといえことは伏せながら。
私は普段から同じファンにはなにも強制することはない。なので、そいつらも気づいたであろう。それがマサル様からの命令だということに。そうとわかったらみな、断るわけがない。皆よろこんで引き受けてくれた。
そして、今に至る。
私たちはすべての準備が終え、あとは掛け声のみとなった。掛け声というのは、今から始まることにマサル様からのお言葉だ。
「お互い健闘を」
「はい! では行ってまいります!」
私が興奮のあまり大きな声になってしまった。だがマサル様はその言葉に、「頑張れ」というような顔をしてきてくれた。
まったく。
この人って人は……。
「行くぞおまえたち!!」
「「うぉおおおお!!!」」
そうして私たちは意味のない雄叫びを上げ、
「いーけいけいけいけ!!! 止まるな!! 私に続けぇ!!」
「「うぉおおおお!!!」」
マサル様から教えてもらった作戦は単純明快。
我々、マサル様のファンクラブの人たちがダーサイドクラッシャーで暴れまくってここに住んでいる人々を移動させることにある。
なぜ移動させるのかなどは聞いていない。
だが、大体予想はできる。
おそらくマサル様が戦うときに、ここの人々になにか残骸が当たったら危ないと思ったからなのだろう。
戦う相手は我々には到底倒すことのできない、この国で一番強いと言われているトッザ。
マサル様は絶対に勝つ。
であれば我々は、勝つために必要な手助けをする。
それが私の作ったファンクラブの鉄則である。
「きゃ!? なんなの!?」
「俺たちはこの国を乗っ取りに来たっ!!!」
ファンクラブの一人が、か弱そうな女性を脅している。一度、マサル様から盗賊をするのは禁止という命令が出てからというもの、私たちはずっと脅すようなことはしていない。だがあいつは、さすがもともとここダーサイドクラッシャーで悪党をしていただけある。
私でも迫力があって怖い。
「なに!? だ、大丈夫だ! この国にはトッザ様がいる」
「そうだそうだ!」
住民たちは、一人の言葉に同調し始めた。
「あのお方が来たらお前たちは処刑だ!!」
こうなることは予想できていた。
ここにいる人々は人任せ。それは、ダルが元々ここで住んでいたからよくわかる。
こういうときのために準備さてきたものは……。
「あぁん?? お前たち。こいつみたいにずたずたにされてぇのか?」
「ひっ! 逃げろぉ!!」
住民たちは、私が血まみれのような男の人がょうを出したらすぐ逃げていった。まったく、バカな奴らだ。
よし、この調子でやるぞ……。
「あとはあなた様次第です」
マサル様。
■□■□
「よし。上手くいってるな」
俺はスキルを使って、上空から今どんな様子なのか見ていた。
まったく、さすがダルだな。
俺が思っていた以上に、ここの住民たちが混乱してこの国から逃げようとしている。
「のぉのぉ〜……。わしにも見せてくれんのかのぉ〜?」
トッティはどこか申し訳無さそうなか弱い声で俺に頼んできた。
そ、そんなこと言われても絶対に見せないからな。
別に変な意地は張ってない……たぶん。
「よし行くぞ」
「うむ」
トッティは俺が完全に無視し、別のワームホールを開いたにもかかわらず何もつっかかってこなかった。
こいつも、そろそろ自分の扱われかたが慣れてきたのだろうか。
■□■□
「のじゃ〜……。ここが神器を持ってるトッザの屋敷……。随分豪華じゃな」
トッティがトッザのワームホールをくぐり抜け、発した第一声はなんとも気が抜けた言葉だった。
だが、俺もその言葉に同感だ。
おそらくここは廊下。足元には赤く上品そうな絨毯。壁には、どこかの湖のようなきれいな絵画が飾られている。そして廊下の奥は見えない。暗くはないが、その先が長すぎてどこまで続いているのかわからない。本当に豪華なお屋敷だこと。
「あぁ。ショウタの屋敷とは全然違うな……。もうここは敵地だ。絶対に離れるなよ……ん? トッティ? はぁ〜……。なんなんだよあいつ」
周りを見てもトッティはいない。
俺はここから一歩も動いていないので、いなくなったのはトッティ。ため息をつくがそんなのは意味がない。
俺は一緒に来る前に守られなくても大丈夫だ的なことを言っていたのを思い出し、あいつを信用して足を前に進めた。
■□■□
わしはここにある物があまりにも自分が見てきたものとはまったく別物だったため、ずっと見入っていた。
「すごいのじゃ〜……。おいマサル。あの絵を見てみるのじゃ。あれ、なんかすごいのじゃ。……? マサル? のじゃ〜……。あやつ自分で足を引っ張るなとか言いつつも迷子になりおって……。仕方ない! このトッティ様がお主のことを助けに行ってやろう!」
隣りにあった扉が開かれた。
そこから出てきたのは女。赤いワンピースを着た女だった。
わしはサッと構えて何が来ても対応できるようにした。だってここは敵地。確実にこやつはわしの敵となる存在。
わしはなんて話しかけようかと悩んでいたとき、
先に女の口が開かれた。
「あらあら〜随分と可愛らしい侵入者ねぇ〜」
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