第22話 神器の重要性を知るの遅すぎませんか?


 あれから一日。

 俺の体の傷はまたたく間に治っていった。

 こればかりはトッティも理解できないらしい。おそらく、スキルの副産物かなにかだという予想をしていた。

 スキルの副産物なので、ここでは超回復とでも名付けておこう。漫画やアニメで見たものをそのままパクっただけだけど、なんかかっこいいだろ?


 俺はトッティに体の隅々(プライバシーは守って)見てもらったあと、2人きりになった。

 なぜかというと、ブレスレットを奪われたから。これは大変なことだ。なのでふたりきりになりあの場で起きたことすべてを話した。

 サリアには部屋から出てもらった。 

 ミーちゃの死の真相を教えたいのはやまやまだが、多分あいつは俺よりも年下。辛いことをわざわざ言う必要もないだろう。


「……で俺はその男に惨敗して、ミーちゃがいなくなったってわけだ」


 トッティは俺の話を途中頷いしたりしながら、すべて無言で聞いていた。こんな真面目なトッティは俺がショウタを殺したとき以来だ。

 

 少しの沈黙の後トッティは「なるほど……なるほどなのじゃ」と顎に手を当てながら、理解したような言葉を発した。そして続ける。

 

「要するにお主たちのことを痛めつけた理由は、元はショウタの所有物であり神器であるあのブレスレットなんじゃな?」


「あぁ……多分。なんであいつが神器のことを知っていたのかわからないけど……」


 そう。そこがわからない。

 あれは傍から見たらどこにでもありそうなただのブレスレット。だがあいつはブレスレットを求めて俺たちの屋敷を壊し、ミーちゃのことを殺した。


 いや待てよ。

 もしかしたら、あいつはブレスレットの価値がわかっていたんじゃないか? たしかあいつ、ミーちゃのことを殺したとき「これでおあいこだな」って言ってたよな……。

 「おあいこ」

 …………まさかあいつって!


 俺がそこまで考え、トッティに言おうとしたとき「ふむ……。おそらくじゃが」と先にトッティの口が開かれた。


「男の方……あやつはお主と同じく、異世界人のものじゃ」


 どうやら、トッティも同じ結論に至ったようだ。


「……なるほどお前たちのことを、屋敷ごと吹き飛ばしたのはスキルか」


 すべてがスキルだということにすると、あの俺のことを片腕で持ち上げるような怪力に合点がいく。

 だが、怪力だけで屋敷を吹き飛ばすことができるのか……?

 いや、吹き飛ばしたのは後ろにいたあの女のほうか?


「うむ。そのはずじゃ。魔法では到底できない領域のものであった。それにお主さっき、ワームホールが繋がらなかったりと言っておったな?」


「ん? あぁ。ワームホールといあよりかはスキルを使うことができなかった気がする……」


 そう。スキルを使えなかった。

 もし、ワームホールを使えたのならばいくらでも戦うことができた。


「それはおそらく、解除の指輪と呼ばれている同じく神器によるものじゃ」


「解除の指輪……」


 俺はずっとスキルを使えなかったことが理解不能で頭の中でモヤモヤしていたが、その霧が晴れスッキリした。だが同時にトッティの言葉で再び霧が戻ってきた。解除の指輪。そんなもの聞いたことがない。


「うむ。解除の指輪は名前通り、なんでも解除することができるのじゃ。例えばなかなか開けられないビンのフタから、牢屋の鍵まで。ありとあらゆるものを、解除することができるものじゃ」


「なんだそれ……チートじゃねぇか……」


 俺はトッティから語られる、解除の指輪の説明に絶句して無意識にありがちなマンガの1ページのような言葉を発していた。

 多分というか、確実に解除の指輪を完璧に使いこなすことができたらこの世界自体を解除することもできる。

 言っちゃえば全部無効化できる。


「おそらく男は神に近い存在じゃな」


「どういうことだ?」


 俺は、トッティから語られる話がますます大きくなってきていることに虚無感を感じつつも問いかける。


「そもそも神器というものは名前の通り、神のものなのじゃ。じゃから、神しか扱うことができない。それを使いこなすことができるって言うことは、そやつは神気を放っているということになるのじゃ。ということはすなわち、そやつは神に近い存在なのじゃ」


 トッティは真剣な顔をしながら饒舌に説明した。


「……まったく言ってる意味がわからないんだけど」


 だが俺にはその言葉は届かなかった。

 なんか神とか神器っていう単語だけは聞き取れた。

 トッティはのじゃ口調だから長々しく話すと何がなんだかわからなくなる。

 本当、のじゃロリは大変だ。


 トッティは「ようするにじゃ!」と声を荒らげ、


「あやつは神なのじゃ!」


 何故か「ふん!」と首を横に振りながら怒っているような態度で言ってきた。

 なんでこいつ、こんなに不機嫌なんだ?

 俺は疑問に思ったが深く考えず、トッティが言っていた言葉を考える。


「神か……」


 もしあいつがトッティの言った通り、神であったら俺は無謀にも戦いを挑もうとしていたってことになる。

 本当に、無知ほど怖いものはない。


「うむ。じゃからそやつに神器が7つ揃えられ悪用される前に止めなければ……。協力してくれるかのぉ?」


「あたりまえだ」

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