第17話 ここは汚れ仕事ばかり
私は孤児出身のサリア。今年で16歳になる。
親は知らない。
私が小さい頃、この国に捨てたらしい。
姉弟は同じ孤児出身の子どもたち。あの子たちは本当にかわいい。
ずっとこの子たちのお世話をしていたい。だけど、私は今日で成人。私の孤児院は成人するまでしかいられない決まりになっている。
生きていくにはお金がいる。
この混沌の国、ダーサイドクラッシャーには冒険者ギルドはない。あるのは代わりとなる、仕事の張り紙を好き勝手貼る場所。そこにはなんの呼称はない。昔から住んでる人たちが困ったときに不特定多数に仕事与える場として作ったらしい。
そう思った私は今、ここに来ている。
っと! そんなこと、どうでもいいや。
仕事仕事、え〜と……。
「
女限定。毎晩23時から24時。体。一万
」
「
女。子供がほしい。5万
」
「
男。犬。報酬なし
」
「はぁ〜……やっぱりか……」
貼り紙に書かれている仕事はどれも体を売る仕事ばかり。体を売る仕事が多いかもしれないって言う想像はしてたけど、多いんじゃなくてそれしかないなんて……。
私はその時初めて外に出ることの恐ろしさを知った。
だけど、生きていくためにこんなわがまま言ってちゃいけない! でも流石に体を売るのは、お金がなくなったときの本当に最後の最後。
体は妥協して売る!
ここに来る前にそう決めた。
私は諦めずに重なっている依頼書をめくり、お宝が眠っていないか確認する。
「
女。いっぱい殴られたい。1万
」
「違う」
何なんだこの依頼主は……。
殴られたらあざができちゃうじゃん……。
さてはおバカさんだな!
「
女。身長100cm〜110cm。踏まれたい。五千
」
「違う」
この依頼主もおかしい。
身長100cm〜110cmの女なんてまだ幼い子じゃないか。
そんな子に踏まれたいなんて……。
さてはこいつもおバカさんだな!
「
男。後ろ。3万
」
「違う……」
…………。
後ろってなんのこと?
私はどの依頼書を見てもどれも体を売る仕事ばかりでもう、自分の仕事はこれしかないのかと妥協しようとしたとき。
「あった!」
「
屋敷で働くメイドを緊急募集!
《条件》
・女性
・家事全般を一人で可能
・優しく包み込んでくれるようなお姉さん(巨乳)
・使用人のようにこき使われても大丈夫
・毎日おやつを3回くれる
―――――――――――――――――――――
面接後即採用! 住み込みあり! 報酬は1ヶ月、三十万! ホワイトな仕事です!
住所……□○△□○◇
」
初めて体を売る以外の依頼書を見た。
え〜となになに……。メイドか……。
私は女だし1つ目の項目はクリアっと。
孤児で率先して家事をしてたし家事全般はできるから2つ目の項目もクリア。
ん? お姉さん? これはよくわかんないけどむ、胸は人よりあると思う。3つ目の項目もクリア。
使用人のようにこき使われても……。まぁいいかな? だってこの仕事はメイドだし。4つ目の項目もクリア。
おやつ……? なんのことがわからないけど……ペットにあげるのかな? それなら全然できる。5つ目もクリア。
えっと……下のやつは……。
え!? 三十万!?
「これだ!!」
「何がだ?」
私が思わず声に出した言葉に、反応した声があった。慌てて声がした後ろを見ると、ガタイが大きくて怖そうなおじさんがいた。
「あっすいません……。おじゃましました〜……」
本当は「きゃっ!!」と悲鳴を上げたかったけど、そんなことしたらあのおじさんになにされるかわからない。
だってあのおじさん絶対、何人か殺してる。
うん。だって目つき怖かったもん。
■□■□
「はぇ!?」
紙に書かれていた住所に来てみたんだけど……。
ここってお屋敷じゃない!?
なんで!?
どうして!?
私はてっきり、小さな家をお掃除するメイドさんだと思ってたんだけど!
もしこの依頼主がやばい人だったら私はどうなっちゃうの……。はっ! まさか1ヶ月金貨10枚もくれるのってそういう……。
私はそこまで考えて、想像するのはやめた。
だって悪い想像は本当に起こっちゃうかもしれないって本に書いてあったし。
現実にそうなるかはしらないけど。
「よし! ――コンコン」
私はどんな人が来てもいいように気合を入れ、恐る恐る扉をノックした。
「…………」
あれ?
反応がない。
「――コンコン」
「…………」
もう一度ノックしてみたが反応はない。
もしかして私、騙されたのかな?
そう思いその場からさろうとしたとき、
「は〜い。はいはい。今出るよ〜……」
男の人の声が聞こえてきた。
「わ、私はこのお屋敷のメイドの貼り紙を見てきたした!! よろしくお願いします!」
「…………」
「あの……えっと……。メイドの募集してますよね? この紙を見てきたんですけど……」
「ほ、ほ、ほ、本物……きゅう」
「え!?」
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