第1話 のじゃロリってバカだな
「はっはっはっ〜。よくぞこの場所に来たのじゃ」
「あ、あなたは!?」
「神じゃ」
はっ!? 神? 神ってあの神様だよな……?
やっぱり、死んだら神様に会うっていう言うのはラノベ通りなんだな……。ん? てことは、これから神様からなんか頼み事されるんだよな。
異世界召喚?
異世界転生?
俺はチートにしてくれればどっちでもいいぜ!
「早速じゃが、お主にある神からの頼みを聞いてほしいんじゃ」
「なんなりと……」
これってあれだよな?
「頼みっていうのは世界を救ってください!」とかそういう類のやばめの頼み事だよな? まぁ、「あなたは前世ではとても不幸に会いました……。なのでもう一度人生をやり直すチャンスをあげます!」とか言う感じの優しい頼み事なのかな?
あぁ〜……なんだろな。なんだろな。
「そこに散らばってる紙を集めてわしにくれ」
「紙?」
「まぁ紙じゃなくて、書類なんじゃがの」
「書類?」
異世界に行く感じの頼み事じゃなくてそっちね。はいはい。まぁ一応、この先のことを考えて神様に媚び売ったほうがいいよな。
「ちなみにその書類めちゃめちゃ大事じゃから、絶っっ対に破いたりするんじゃないぞ」
「わかりました」
了解したことはいいんだけど、見る限りどこにも書類なんてどこにもないんだけど……。
「あぁ、お主からは見えないじゃろう。ほらあっち。あっちに進んでいけばあるのじゃ」
え……?
いやどこだよ。
■□■□
「お〜。助かった助かった。わし、この書類取りいくの面倒くさくてのぉ〜……」
ていうかそれがさっき死んだ人を迎える神の立場かよ。あぁ〜……。なんか腹立ってきた。死人を使いっ走りにしやがって……。
「おい! こっちにこい!」
俺は勢いよく、影が映し出されている壁みたいな場所を蹴った。
すると……。
「な、なんなんじゃ……」
ロリがでてきた。いやこの場合はのじゃロリだな。
て、そんなことどうでもいいんだよ。なんで俺、こんな子供姿の神なんか信じて使いっ走りになってんだ……。
「おいガキ」
「ヒッ……。なんじゃ!? わしは、上位神の子供であるトッティなのじゃ!! わしに指一本触れてみろ!! 天から雷が降りてくるのじゃ!」
トッティと名乗ったのじゃロリは、俺のことを体をビクビクとさせながら見てきた。
上位神??? 天から雷???
「よくも散々大人のことをからかってくれたな……?」
大人とか言ってもまだ17歳で元引きこもりだったけど。親がいないと生きていけなかったけど。アニオタだったけど。大人らしいこと一切してないけど。さすがにこのガキよりかは大人だな。うん。歳の差でな。
「な〜!! 人族風情が神に向かってぶれいじゃぞ!
ちなみにわしは今年で300歳なのじゃ! じゃから、17歳で引きこもりのお主より大人なのじゃ」
トッティと名乗った自称神は俺が掴んだ胸ぐらの手を外そうともがいているが、力の差は歴然。
「な……!」
なんでこいつ俺の考えていることを……。
本当にこの、のじゃロリ神なのか?
「だからさっきからそう言っておろうが!」
「じゃあ神らしく、そうだな……。俺の葬式とか見せろよ」
「そんなことお安い御用じゃ。なんたってわし、神なんじゃから」
―――
「この度はお悔やみ申し上げます」
―――
こ、この娘って幼なじみの……京子ちゃんじゃん!
あらまぁ〜こんなにきれいになって……。
俺と違って成長してるな。
「どうじゃ?」
「まぁ、信じてやってもいいかもしれないな」
「お主、なんで上から目線なのじゃ!?」
トッティは目を見開き、いきなり叫んできた。
「ごめんごめん。癖なんだ」
のじゃロリだからな。うん。のじゃロリだからな。
神様だとしても、死人を使いっ走りにするやつなんてタメ口でもいいだろ。
「さっきからわしのことを、その……のじゃロリ? だと言っておるがどういう意味なんじゃ? とても侮辱されてる気分なんじゃが。特に容姿のことを」
「ん? 褒め言葉さ」
頭の中読まれてるんだった。
危ない危ない。
「何が危ないんじゃ?」
「いや、べつに?」
まったく勘というか、人の脳内の覗き見が大好きなのじゃロリは手強いな。
「ひざまずきなさい」
俺は突然、天からのの言葉に体が重力に負け、目線が下に下がる。
なんだこれは……?
トッティも目の前で膝を地面につけているのでどうやらこの言葉は俺と、トッティに向けた言葉のようだ。
「あわわわわわわ……」
トッティは情けない声を出しながら声がした方を見ている。
なのと、俺もトッティが見上げている方を見る。
そこには、背中から翼をはやし頭の上に丸い輪っかが浮いている天使のような姿の人物がいた。
やばいやばいやばい。
だいたいこういう感じの登場の仕方のやって、闇落ちして最終的に物語のラスボスになったりするじゃん。勘弁してよ。
「トッティ。そして、マサル。あなたたち二人は神界の掟を破った罰として異世界へと言ってもらいます」
「な、なんのことですか!?」
俺は見に覚えのない罰をくらい、こののじゃロリ神とは比べ物にならないほど神々しいオーラを放っている人に向かって口を開いてしまった。
「それは先程、自身の葬式を見た罰です。あなたには罪の意識がなくとも、死人であるはずのあなたが今の現実を見てしまったらそれは重大な掟違反なのです」
俺は、てっきり「無礼だ」とか言われて殺されると思っていたが案外優しくわかりやすい返答に出る言葉がなくなった。
「な、な、な、なんでわしも一緒なんじゃ!?」
「そもそもトッティ。あなた、勝手に地球人を異世界に飛ばしているでしょう?」
「ギクリ」
トッティは体を震わせた。
おい、こいつのせいなのか?
こいつのせいでこのラスボスが現れたのか?
「異世界に飛ばした記録はすべて私が管理しているのです。さすがにこうも多く飛ばしたら鈍感な私でも気づきますよ?」
神が鈍感……。
なんかいい!!
鈍感いい!!
「マサル!」
「はひ!」
急に呼び捨てで叫んできたから声、裏返っちゃったよ。恥ずかしい。恥ずかしい。
「トッティのことを頼みます」
保護者のよううに、神っぽい女性は俺に向かって深々と頭を下げてきた。
「わかりました?」
俺は、言っている意味がわからず疑問形になってしまった。
ていうかなんで一般人に神様の面倒を頼まれるんだよ。
……はっ!
まさか俺って神の中でも注目を集めている、結構優れた人物だったりして……?
「それは違います」
神っぽい女性は鋭いツッコミをいれた。
「あっ。そうですよね。じょ冗談ですよ。ははは……。そんなことあるわけ無いですよね」
この人も俺の頭の中覗き見できるんかい!
もう何も考えないようにしよ。
うん。そうしよ。
俺はなにか良くないことを考え、神の反感をかわないように今更ながらそう決意した。
「さぁ、異人よ異人よ」
天使のような姿の女性がそれっぽい言葉を口ずさむと、俺とトッティの足元に小さなオレンジ色の文字とそれを囲うようにきれいな丸い円が出来上がった。
これってぞくに言う魔法陣ってやつなんじゃない?
やばいやばい!
興奮してきた!!
俺はついさっき決めた決意をすっかり忘れ、興奮を隠すことができなかった。俺は異世界への冒険に胸を躍らせている中。
「嫌なのじゃ〜!! わひは悪くないのじゃ〜!!」
トッティの涙ぐんだ声が聞こえてきた。
「おい、のじゃロリ。そろそろ現実を受け止めて泣くのをやめろよ?」
俺は流石にうるさいトッティのことをなだめようと声をかけたが、それはまったく逆の方向にいってしまった。
「そもそも、お主のせいなのじゃ!! お主が葬式を見たいとか言わなければこんなことになってなかったのじゃ!」
「はぁ?」
俺は思いもしない言葉に放心状態になった。
「なにが「はぁ?」なのじゃ! わしがそう言いたい気分じゃ!! 全部お主のせいじゃ! ばぁ〜か!! 社会のクズ!! 人間のゴミ!!」
たしかにトッティの言っていることは正しい。だけどさすがに自分より格下の、のじゃロリに言われるのは腹が立つ。
「黙れ!! 異世界いっても助けてやんねぇからな!」
俺は隣で同じく中に浮き、目線が同じくなったトッティのことを睨めつけて言った。
「はん! そんなのわしの方から願い下げじゃ!」
「自身に宿した力で異世界を救いたまえ!!」
天使の姿の女性が放ったその言葉を最後に俺の目の前が光で見えなくなった。
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