第44話 来栖家の朝②
くるみに「いつ赤ちゃんができるの?」と無邪気な顔で聞かれた愛莉は………
「ぶふっ!!?」
斜め上過ぎる質問に耐えられなかったのかその場で咽せてしまった。
「ん?お姉ちゃん?」
そんな姉を見て不思議そうに見ている妹。
普通だったら、姉妹の会話なので和むかもしれないが、今回ばかりは違かった。なんせ聞かれた内容が「健一との赤ちゃんはいつ出来るか」と言う内容なのだから。
流石の愛莉でも耐えられない。
「?お姉ちゃん大丈夫?凄い咽せてるけど……私、何か変な事言っちゃった?」
何も分からないくるみは未だに咽せている愛莉にそう問い掛ける。
聞かれた愛莉は何とかこの変な雰囲気を無くさねばと思ったのか、少し呼吸を整えると心配そうに見てくるくるみに精一杯の笑顔を向ける。
「だ、大丈夫よ!私は大丈夫!それに赤ちゃんはまだ、早いかなぁ?」
「………そうなの?」
そんな愛莉の言葉に興味を示したのかくるみが聞いてくる。
「え、えぇ、そうよ?くるみはまだ幼いから知らないかもしれないけど。赤ちゃんはね、18歳以上になった男女が「私達に赤ちゃんをお恵み下さい!」と天に伝える様に思うと何処からかコウノトリと呼ばれる赤ちゃんを運んでくる鳥が赤ちゃんを連れてくるのよ?」
完全に嘘の事実だが、まだ幼い妹には本当の事を知っていても教えられる訳がなく。適当な事をくるみに伝える事にした。
どうせ今は嘘か本当かなど分からないのだからこれで押し通そうと思っていた。
そんな事を言われたくるみは………
「………コウノトリ?」
少し疑問符を浮かべる様に首輪曲げると呟く。
そんなくるみの態度が気になった愛莉だったが、これで押し通すと思っているので頷く。
「そうよ?コウノトリ。聞いた事なかったか〜まぁ、くるみにはまだ早いからねぇ」
その気持ち分かると言う様に愛莉は頷いているが、そんな愛理にくるみはある事を話す。
「うーん?コウノトリは聞いた事がないよ。私が聞いたのは、男女が愛し合いながら交わると赤ちゃんができるんだと聞いたけど……違うのかな?」
「ぶふっ!!?」
その話をくるみの口から聞いた愛莉は二度目の咽せるを体験した。
(な、何でくるみがそんな事を、大人のアレコレを知っているのよ!?誰よ!教えたの!!……まさかっ!)
何かを感づいた愛莉は出来るだけ笑顔を作る様に努めながらくるみにある事を聞く。
「その、くるみ?今、言っていた男女の〜って奴は誰から聞いたのかなぁ?」
「ううーんとね。お父さんから聞いたよ?前酔っていたお父さんが「君達は僕達が愛し合って交わって出来た愛の結晶なんだよ!」……って言っていたよ?」
そんな話を聞いた愛莉は一瞬修羅の様な表情を作ったが、それは一瞬の事でくるみに笑顔を向けると本当の事(嘘)を教える事にした。
「あぁ〜!多分それはお父さんの嘘ね。お父さんはたまに酔っていると嘘や大袈裟に物事を言う事があるのよ?」
「えっ?そうなの?」
自分の父親の知られざる事実を知ったくるみは驚いていた。ただ、そんな中、愛莉は肯定する様に頷く。
「えぇ、そうよ?だから本当の赤ちゃんを作る方法はお姉ちゃんがさっき言った通り、コウノトリさんが連れてくる事なんだよ?」
「へ〜そうなんだぁ〜」
ようやく理解してくれたのか、愛莉の適切な誘導……サポートによりくるみと言う一人の少女の穢れを払えた事を愛莉は安堵していた。
(あぁーーもう!何となくはくるみに変な事を吹き込んだ犯人は分かっていたけど!パパはなんて事をくるみに話しているのよ!!)
くるみに変な事を吹き込んだ父親に愛莉は憤慨していた。
まぁ、一応難は逃れたので愛莉は安堵しながらも高校に行かなくてはいけないので話を切り上げて朝ご飯を食べて出て行こうとしたら………
「お姉ちゃん?健一さんは今度お家に来るの?家族になるなら挨拶したいよ?」
と言われ、くるみに引き止められた。
健一が自分の家に来てくれるかは分からなかったし、家族になる事などもっと分からないので苦笑いを愛莉は浮かべていた。
「ううーん。一応、今度家に来れるか聞いてみるわ。健一も大きくなったくるみと会いたいだろうし」
「分かった!健一さんが来るの楽しみにしてるね!!」
くるみはそう言うと笑顔を向けて来た。本当に楽しみにしているのが伝わってくる様で愛莉も和んだ顔を向けていた。
これで、ようやく後は朝ご飯を食べるだけと愛莉が思った矢先。
「あらぁ〜二人共こんな早く起きていたのねぇ?お母さん。起きるの負けちゃったわぁ〜」
と、少しポワポワした感じの女性が愛莉達がいるリビングに入って来た。
この人物は自分で言っていた通り、愛莉とくるみの実の母だ。
外見は愛莉とくるみと一緒の金髪の髪色で、とても美人だ。何よりも愛莉よりも大きい胸が特徴的だろう。この人物の名前は来栖ミナと言い、子供を二人持つ優しいお母さんだ。
何とこんなにポワポワとした女性だが、アパレル会社の社長である愛莉達の父親の来栖俊道の妻であり、その秘書官を務めるほどの優秀な人物なのだ。
家ではこんなにポワポワとした人物だが、会社ではキリッとしたキャリアウーマンの様な雰囲気を出していて家と外でオンとオフを使い分けているという。
そんなミナに愛莉達は。
「「お母さん、おはよう!!」」
と、二人声を合わせて朝の挨拶をする。
愛娘達に朝の挨拶をされたミナは素行を崩すと。
「えぇ、おはよう。愛莉ちゃんにくるみちゃん!!」
と、二人の名前を呼び、抱きしめるのだった。
「ウプッ!?」「あぅ!?」
いきなり抱きしめられた二人だったが。初めは驚いていたがその大きい胸と優しげな抱擁の仕方に二人は安心した様な表情を作っていた。
「はははっ!今日も皆元気だね!お父さんも皆が元気で憂いしよ!」
そんな親と子の仲睦まじい光景を見ながらミナの後から来た男性も歩いて来るとそんな事を三人に伝える。
この男性はさっきも名前が出た通り、愛莉とくるみの父親であり、名を来栖俊道と言う。アパレル会社の社長を務める男性なのだ。
外見は茶髪の上に長身で顔はイケメンと言うどんな女性でも黄色い声を上げる様な有料物件だ。
ただ、そんな俊道が現れた瞬間。くるみは「おはよう!お父さん!!」と挨拶をしていたが、愛莉は挨拶をする事なく近くにいる母親にある事を耳打ちしていた。
くるみには挨拶をされたので返事を返していた俊道だがもう一人の愛娘である愛莉から何も言われなかったので、気になった俊道はどうしたのか聞こうと顔を見ようとしたら………
「ヒイッ!!?」
と、声を上げてその場で尻餅を付いてしまった。イケメンなのにそんな情けない姿を見せていた。
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