水族館デー……
第35話 星宮水族館①
◆
朝9時丁度、健一は既に昨日鈴から連絡があった通り星宮駅の時計塔の前に1時間も早目に来ていた。
少し早過ぎでは?と思うかもしれないがこの時間が妥当ではないかと健一は思っていた。その理由はしっかりとある。鈴と一緒に護衛役で来るはずのレイナに口煩く言われない為だ。なので早目に来る様にしている。
まぁ、常識的に30分は早目に来るのが当然なのかもしれないが。
「──あと1時間もあるのは長いかもしれないけど、30分後ぐらいに来るでしょ……また鈴達が高級車で来るのはマジで勘弁してほしいわ」
鈴達がいつ来るのか考えていた健一だったが、以前高級車で鈴達が駅のロータリーまで来た事を思い出してゲンナリしていた。
あの後は流石に目立つからと鈴達に伝えて車で来るなら最低でも普通の自家用車で来るようにと言っといたので今回は大丈夫だと信じている。
そう考えてもまださっきから10分弱しか経っていないのでただ待つのは暇なのか待ちながら自分達が出している動画の「くぬぎ丘のたけやん」でも見る事にした。これは決してエゴサーチとかではないので悪しからず。
(いや、本当にエゴサーチじゃ無いからな?櫟っちにコメントの返信とか全て任せてるからどんな内容のコメントが来てるか俺なりに確認するだけだからな?)
誰に言い訳をしているかは不明だが、健一は内心でそう思いながらもエゴサーチ──もとい確認作業をしていた。確認作業をして初めに思ったことが──驚いたという感情だった。その理由は結構色々な人から要望が来ていたからだ。
嬉しいながらも今は抑えて、後で櫟と話し合おうと考えながら時間を見た。すると、もう9時30分を回ろうとしていたので身嗜みを整えていつ来ても良い様に身構えた。
「──ん?あれ鈴かな?でも何でレイナさんは近くにいないんだ?」
身構えた健一だったが、周りを確認すると健一がいる時計塔の前まで1人で歩いて来ている鈴の姿があった。
鈴の格好は水色の可愛らしいワンピース姿の上に白色のカーディガンを羽織って下は黄色のパンツルックスを履いて白色の可愛らしいポシェットを首から掛けていた。
「レイナはどうしたのだろうか?」と思っていたら鈴に声をかけられた。
「健一おはよ。私より早目に来ていてえらい、えらい」
鈴は無表情ながら少し表情を崩すと健一にそんな挨拶をしてきた。
「あぁ、おはよう鈴。──とそれは良いんだが今日はレイナさんは一緒じゃ無いのか?いつも護衛してくれてるって言ってたから鈴だけ来たのが不思議でさ」
鈴と挨拶をした後、今1番気になることを聞いてみる事にした。鈴とは何度か偽デートを行った事があるから本来なら遊びでも女性の服装などを先に褒めると分かっていながらもレイナの事が気になり聞いてしまった。
でも、鈴はそんな事を気にしていないのか表情を変える事なくレイナについて教えてくれた。
「レイナもしっかりと遠くで護衛をしてるから大丈夫。それにレイナは今"特殊"な病にかかってる、だから健一に移すと悪いから近くに来ないと言っていた」
「そうだったのか……でも大丈夫なのか?何か大きな病気なら他の人に頼んで代わってもらった方が良い様な、無理して出て来なくても………」
健一は鈴が言った内容を理解したが「病気なら来ない方が良いのでは?」と思い気遣いで鈴に聞いてみたが──
「──健一、私は言った。レイナの病は"特殊"だと。だからそんなに気にしたくて大丈夫、レイナはある"特定"の人物と合わなければ至って正常だから今は、問題なし」
──と、言ってきた。
なので健一は──
「そ、そうか……鈴がそう言うなら何も言わないよ」
そう、答えるしか無かった。
鈴がレイナの病気の事を「特殊」と「特定」の言葉を強調している事に少し違和感を覚える健一だったが、鈴が問題は無いというなら大丈夫だろうと思う事にした。
(──あぁ、鈴の服装褒めてなかったっけ……レイナさんが何処かで見てるなら尚のこと、早目に鈴の事褒めないとなぁ、後で小言を言われかねんからな)
レイナが見ているからというものもあったが、鈴の今日の服装は本当に似合っていると健一は思ったので褒める事にした。
「そか、なら安心だな。それとなレイナさんの事が気になって言えなかったが今日の鈴の服装、その……似合ってるぞ?」
「──っ!!ありがと、健一の服装も似合っている」
健一に服装を褒められたのが嬉しかったのか鈴は頬を赤らめるとプイッとそっぽを向いてしまったが、しっかりと健一の服装も鈴は褒めていた。
「そか、ありがとな!」
健一が鈴にお礼を言うと、これから行く事になっている星宮水族館の話を少しする事にした。健一も最初はそんなに行く気では無かったが、来てしまったので楽しむ事にしたのだ。
「よし、鈴達の事情は大々分かったからそれは良いとして、俺達は俺達で昨日鈴が言っていた水族館に行くか!」
「ん、楽しみ。ペンギンショーはなんとしてでも見る!」
「おっ、鈴はペンギンが好きなのか!実は俺もなんだよ!」
「それ、本当!?」
健一もペンギンが好きだと言う事を知れた事が嬉しかったのか、いつもの無口は無くなり健一と普通に話せていた。
健一と鈴は好きな物が同じだった事もあり、その後は話が途切れる事がなく星宮駅から徒歩10分で着く星宮水族館まで話しながら歩いていく事にした。
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