第34話 無口少女の策略




 その頃の鈴は──


「むふー。明日は健一とデート。ふふっ……どうせにぶちんな健一はただの遊びだと思っている筈、だから明日は健一をその気にさせて必ず悩殺?させる」


 健一をデートに誘えた事が余程嬉しかったのかキングサイズだと思われる豪華な水色のベットの上をコロコロと転がり続けている。


因みに鈴はお風呂を入った後なのか、水色のワンピースの様な寝巻きを着ていた。


 そもそもの話だが、女性と2人で遊ぶという事はほとんどの人が2人で遊ぶ=デートと発想する筈なのだ。そこを気付かない健一は流石鈍感野郎、あるいは朴念仁と言ったところだろう。


男女の友情が成立すると考えている方はそのままでいいと思うが。


──だが、鈴は違う。


 男女で友情が芽生えるのは良い。でも、そこから恋の発展に繋がるのが当たり前のこと。それを気付かないのか、それとも分からない健一には──一から私自ら教える必要がある。


 とのことだ。


 そんな中、興奮が冷めないのか鈴がベットの上で転がっていると主人の痴態を見たくないからか側にいたメイド服に身を包むレイナが鈴に声をかけた。


「──お嬢様、明日三丈様と会えるからと言って嬉しいのは分かりますが、明日も早いと思いますのでもう就寝しては如何ですか?」

「む……レイナだって明日健一と会えるのが嬉しいのかさっきからそわそわしてる、そんなレイナに言われたくない」

「──なっ!?そんな事は!?」


 鈴に注意をするはずが図星を突かれてしまったレイナはタジタジになってしまった。


そんなレイナを見て鈴は明日の邪魔をされたくないのと抜け駆けをさせない為に──釘を打つ事にした。


「レイナ。明日は私と健一のデート、レイナが健一と仲が良いのは知っているけど明日は私の邪魔はしちゃ駄目……だからね?」

「し、しませんよ!それに私は別に三丈様と仲良くなんて、ゴニョゴニョ──」

「………‥」


 レイナのその分かりやすい反応に鈴は無言ながらジト目を向けていた。──最初は鈴もレイナが健一と仲が良い──健一の事を好きなのは知らなかったが、会う度会う度健一に自分から絡みに行くレイナを見ていたら、ある違和感を覚えていた。

 

 それでもまだレイナが健一の事を……好きだとは気付かなかったが、鈴はある現場を見てしまったのだ。ある夜、トイレに行く途中にレイナの部屋の近くを通った鈴はレイナの部屋のドアが開いているのが気になり近付いた。


 その時に何か気になったのか鈴が部屋の中を覗くと、なんとあのいつも冷静沈黙な表情のレイナが顔を緩ませてある人形に顔をスリスリしていたのだ。それも、その人形が何故か──健一の顔ソックリだったのだ。


 そんな光景を見てから、鈴はレイナを敵対視していた。レイナが健一の事をどう思っているのかは分からないが、健一の事を好ましいと思っていなければあんな奇行にレイナが走る訳が無いと思ってるので、ある意味信頼していた。


 ただ、鈴がそのレイナの"痴態"を知っていると知らないレイナは──


「も、もう!お嬢様!私の事は良いのです!それに明日は邪魔をしませんのでお早めに就寝してくださいませ!」

 

 鈴の無言の圧力に耐えられなかったのか、はたまた恥ずかしさに耐えられなかったのかは分からないが、鈴の返事を聞かず、主人に対してあるまじき対応をしてレイナは鈴の部屋を後にして出て行ってしまった。


 でも鈴はその態度に何も言わなかった。


 昔からの付き合いというのもあるが今回、自分が揶揄い過ぎたという自覚は鈴にもある為何も言わない事にした。


「ん、私ももう寝る。明日遅れたら嫌だから」


 鈴も遅れるのは嫌なのか、レイナの言いつけ通り早目に就寝する事にした。

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