第33話 30万人達成②




 ──何でそんな事を視聴者に言われると言うとちゃんと理由もある。


 健一はフリ○ザの声真似をして動画を出しているが、フリ○ザの声真似をすること自体は慣れた。慣れたが、どうしても外でそれをやると思うと恥ずかしくて出来なかったので今までの動画は室内だけの動画になっているのだ。


 だからか、10万人の時も20万人の時も、ましてやTwi○terのリプにも「外に出ろ、ニート」とか「外での動画が見たいです」や「地球の生物と帝王が戦っている場面見たいです、おなしゃす!」というリスナー達のコメントが溢れかえっているのだ。


 健一自身もいつかは外での動画にチャレンジしたかったが踏み切れず悩んでいた。そんな中、次の30万人達成の動画でついに「やろうかなぁー」と思っていたのだ。これ以上ぐだぐだ嫌だと思っていても視聴者が離れていってしまうだけなので健一はついに決意を決めた。


「………分かりました、次の30万人の雑談生放送はそれでいきましょう。そこで決まった内容で動画を撮ります」

「そうか……でも、無理はしないでね?健一君がやろうとしている事も何となくは分かるけどさ………」


 櫟自身も知っているので健一の身体の事を第一に考えてくれていた。


「大丈夫ですよ、何とかします」

「そうか、なら良いけど、じゃあ明日の動画撮影の話をしようか」

「そうですね、じゃあ「ピロン」──ん?」


 明日から土日に入る為、何の部活にも入っていない健一はフリーなので櫟が明日何の動画を撮ろうか話そうとした時、健一のスマホに「ピロン」と一通のラ○ンが来た。


「三丈君、誰かから連絡かい?」

「恐らくそうだと思います」

「なら、一度見てみなよ?急な用事だったらいけないからね」

「分かりました」


 櫟から連絡を確認した方が良いと許可を受けたので、話の途中だったがその連絡を確認してみた。──そこには。


「明日遊ぶ、断りノー」と鈴から連絡が来ていた。その時、健一はある事を思い出した。


(──ヤベ、また鈴と遊ぶの忘れそうになってたわ、今回忘れてた事がバレたら多分シャレにならないよな……レイナさんあたりにボコられそう)


 そう思った健一の行動は早かった。まず櫟に明日は動画撮影が出来ない事を伝える事にした、鈴と遊ぶ事は伏せる感じで。


「櫟っち申し訳ありません、今学校の知り合いから来週にあるテスト勉強を集まってやろうと言われたので明日の動画撮影少し厳しいのですが………」


 健一は出来るだけ申し訳なさそうにして、ありもしない事を本当の事の様に櫟に伝えた。ただ、櫟は健一の言葉に疑問を何も持たなかったのか人が良さそうないつもの表情を向けてきた。


「あぁ、別に大丈夫だよ?三丈君が空いていたら一緒に動画を撮ろうと思っていただけだからね、君はしっかりと学生らしく勉強をしてきなさい」

「すみません、ありがとうございます!恐らく日曜日は俺も動けると思うのでその都度連絡入れますね」

「うん、分かったよ」


 健一と櫟はそう話し合って今日の話し合いを終わりにした。健一は櫟に帰りの挨拶を言うと歩いて5分もしない自分の部屋に戻り鈴に明日遊べる事の旨を返事をする事にした。


「えっと──「分かった、俺も明日は遊べるぞ、それで何をして遊ぶんだ?」……こんなもんか?」


 これでいいかと思い、そのまま送信した。そしたら直ぐに既読が付き、それからそんなに時間は掛からない内に「明日は近くにある星宮水族館に行くから、星宮駅の時計塔の前に10時に集合」と連絡が来た。


「はぁー水族館かぁ、この頃あんまり行ってねぇな。そういや最後に行ったのって子供の時以来か?まぁいいか「分かったよ、遅れずに明日は行く」……と、これで良いだろ」


 これまた健一が連絡を入れると直ぐ様既読が付き「ん、分かった」と返事が返ってきた。その後にペンギンのスタンプが送られてきた。それだけなら良いのだがそのペンギンが言っている言葉が不吉だった。


 そこには──「来なかったら処す」と書いてあるからだ。


「………なんてスタンプ送ってんだよ、怖えだろ、冗談だとは思うが」


 健一はそのスタンプに恐怖を抱きながらも今日は明日遅れるとまずいと思い早めに風呂に入り就寝する事にした。

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