第28話 ヘタレギャル始動②



(──この中の誰が健一の彼女になるかは分からないが、俺は見守ろう……もしかしたらそれ以外の誰かと健一が一緒になるかもしれないが、それでも俺は祝福するだろうな、健一が幸せならなんでもいいさ)


 そんな事をこの爽やかイケメン事、悟は健一第一に考えていた。


 そんな悟の心情を知らない愛莉達は悟に怪訝な目を向けていた。


「………聞いて来た割には案外すんなりと納得するわね?」


 物分かりが良すぎる悟に愛莉は少し訝しげな表情を向ける。それは他の二人も一緒だった。


でも、悟はそんな愛莉達の表情などどこ吹く風か全く気にしていなかった。


「ん?普通だろ?健一が幸せになるなら俺はいくらでも協力するつもりだからな。それに幼馴染達のお願いだ、無碍にはしないさ」

「──だけど……納得というか、理解するのが早すぎじゃない?私達は悟君に何も伝えずに協力をしてもらおうと思っていたのよ?」


 風香も少しおかしいと思ったのか悟に聞いてきた。


「何も言わなかった事には特に気にしていないし別に良いさ、それに言っただろ?俺は健一の為なら何でも協力すると……な?」


 顔色変えずに言う悟に愛莉達は顔を見合わせていた。


 悟が健一をとてつもなく信頼し、信用し、尊敬している事を愛莉達は知っているが……それでも愛莉達には悟が──「健一の事を好き過ぎでは?」と思ってしまう。


 勿論それは友人として好いている事ぐらいは分かるが「もしかしたら自分達の敵になるのでは?」と危惧していた。


 そんな時、未央が立ち上がり二人が言えない事を悟にぶっちゃけた。


「………悟兄さん、ありえないと思いますが言わせて頂きます。健一さんの事を狙っていたりしませんよね?」

「………‥」


 未央が言った内容に悟は理解が追いつかなかったのか無言になってしまった。


 愛莉と風香も今、未央が言った事は聞いてみたかったが、流石に聞くのもどうかと思っていた時、未央が容赦なく悟に伝えた。


 悟は少しフリーズしていたが、未央が言った事をようやく理解出来たのか苦笑いしていた。


「──もしかしてだけど未央が言いたい事ってさ、俺が健一をの方の好きでは無くの方の好きだと──言いたいのかい?」

「そうです。違うんですか?」


 そんな七瀬兄妹の会話を愛莉と風香は内心ドキドキしながらどうなるのか聞いていた。


 そんな中、とうの悟は──


「うーん……残念だけど違うかな?勿論健一の事は好きだけど、それは友人としてだからね、流石に男性は恋愛対象にならないよ」

「………そうですか。それなら良いです」


 悟の言葉に未央は安心していた。

 

 側で聞いていた2人も安心していた、これで健一の事を「好きだー!!」と言ったらどうしようと焦っていたが。


 ただ、解決はしたが何処か変な雰囲気になってしまったので話を戻す為に愛莉が高い声を出すと、皆の視線を集める事にした。


「はい、皆こっちに注目!──一応話はこれで纏まったから次はこれからの事を話すわよ?」


 愛莉がそう言うと皆でこれからの事を話し合った。



 ◇閑話休題それはさておき



 話し合いは思っていたより早く纏まった、まず決めた事が悟の役割だ。悟はさっき愛莉が言っていた通り健一と偽デートをする為の「仮初の好きな人」になってもらう。


 やってもらう事は簡単、愛莉達が悟の事を好きだと健一に思わせるだけ、健一には敢えて本当の事は伝えないで悟には振る舞ってもらうつもりだ。


 偽デートの順番は、愛莉・風香・未央の順番で行う。その間に健一の事を好きになってしまった人が現れた場合は「」に参加するのか有無を確認する。参加するなら要相談。


 自分達からは告白は厳禁、理由は簡単、「自分達から告白したら負けた気がするから」という。その事に悟は何か言いたげな顔をしていたが、話がややこしくなってもしょうがないと思ったのか何も言わずに静観した。


 最重要項目が健一に自分達の恋心を知られない事だ。健一を好きなのに何でそんな矛盾した事をするのか?と思うかもしれないが、さっきも言った通り健一に恋愛はいいものだと自分から知ってもらう為だ、健一の話ぶりからはもう恋愛も彼女を作るのも諦めたような事を言っていたからだ。

 

 話が全て纏まり解散かなと思った時、風香が皆に「待って」と声をかけた。


「──私達は1人の男性を好きになったわ、だからこれからはライバルになると思う、でも醜い争いなんてしたくない、だから再度問うわ──2年前の誓いを」


 最後に2年前に誓った想いが今も変わっていないか再確認する為だと風香が言ってきた。その話に愛莉と未央は真剣な顔付きになり風香を見た。


「そんなの言われなくても分かってるわよ、でも、そうね──」

「私も忘れた事はありません、だから──」

「いい度胸じゃない、いいわ──」


 3人は話を切ると互いに見つめ合い2年前に誓った約束を口にした。


『私達は互いに同じ人を好きになった、でも、彼が私達の誰かを選んだとしても恨みっこ無し、彼の幸せを願うなら祝福をしなくてはいけない──だから今、再度問う。それでも彼を好きだと言うなら、三丈健一争奪戦をここに始める!!』


 最初からその言葉を言うと示し合わせていたかのように3人は同じ言葉を声を合わせて言った。3人はそんな事を言うとお互いを見つめるとそれだけで想いが通じ合ったのか頷きあっていた。


そんな中、3人はもうこれ以上は言葉はいらないとそれぞれ保健室から出て行った。後には悟だけが残された。



「──恋愛か………これから健一、忙しくなりそうだな。あいつらが暴走したりしたら俺と悠太でサポートするか、健一に幸せになって欲しいのは俺も、同じだからな」


 悟は1人呟くと自分も保健室から退出するのだった。


──でも愛莉達は気付いていない。


 もう既に最大の敵が健一の近くに何人もいる事を、それは健一も知らない事だ。これから始まるを健一は体験する。


 そして本当の"恋"を知る事が出来るのか。

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