第23話 決別………からの勘違い②




 1人は来栖愛莉くるすあいり。お嬢様学校だと言うのに金髪の髪の毛の上ツインテールだ。その髪は地毛らしい、スタイルがとても良く少しギャル風の女子生徒だ、両親はアパレル会社の社長で健一とも顔見知りだという。


 それにハーフで来栖は美少女というものもあるが、何よりも目を引くのがその制服を盛り上げるはち切れんばかりのお胸様だ。健一の目のスカウターでの測定は──「F」との事だ。何のことかは言わないが──


 もう1人の健一の事をカスと呼んでいる女子はこちらも幼馴染で、悟の義理の妹でもあり、お兄ちゃん大好きなブラコンだ。(健一がブラコンだと思っているだけ)──名前を七瀬未央ななせみおという。


 兄と同じ茶髪を肩までのミディアムヘアーにしている、本来なら優しい性格なのだが、健一を見る目は冷たいように見えた。悟と未央の両親は健一とも顔見知りで両親は大手の食品会社や家電製品を売っている会社の社長らしく普通に大金持ちだ。


 因みに未央も何かがそこそこあり健一のスカウターでの測定は──「D」だ。こちらも何のことかは言わないが。


 そんな2人が待っていた事にやっぱり嵌められたと思い、保健室のドアを開けたままフリーズしてしまった。でも、健一はまだ逃げられると思い背後のドアから逃げようとしたら──誰かに背中を蹴られた。


「ぐへっ!?」


 その健一を蹴った人物は勿論──


「往生際が悪いわね、健一君」


 先程、教室に戻ると言っていた葉先だ。


 退路を絶たれた事を知ると無駄な抵抗をする事なく心の中で、泣いた。


 はい、積んだー!積みましたー!!……うぅっ……俺が何をしたって言うんだよ………


 悪魔達幼馴染に囲まれた健一はもうこの状況は無理だと内心で絶叫していた。   


 そんな中、健一は倒れたままの体勢だったので立ち上がろうとしたら……直ぐ近くにいた未央に右肩を掴まれると取り押さえられてしまった。


「グベッ!!?」


 それはさながら痴漢を行った犯罪者を捕まえる時の状況とそっくりだった。まぁ、痴漢健一なのだからしょうがない。


 健一を取り押さえた未央はこれでも幼い頃から空手をやっていて黒帯を持ち、護身術も習っている。なので健一の様な変態など取り押さえることなど容易だ。


 俺もヤキが回ったものだ。だけで、さっきさよならしたはずの床とこんにちは床をしてしまうなんてな。


「──動かないで下さい。骨……折りますよ?」

「はぃー」


 情けない事に取り押さえてきた未央に蚊が鳴くような返事しか出来なかった。


 ──にしても、未央ちゃん怖っ!!えっ?俺、立とうとしていただけじゃん……それすら駄目なん?──どうしろと?


 健一は動いたらやられると思い、拾ってきた捨て犬のように静かに床に抑えられながら震えていた。


 未央とかなり密着している為、胸の感触とかがダイレクトに健一に伝わってくるが今はそんな事を喜んでいるほど余裕は無かった。


 ──そんな時、未央の近くに愛莉が来ると何か言い合いを始めた。


「未央ちゃんさ〜、健一を抑えるのは良いけど……ちょっと近寄りすぎじゃない?」

「………取り押さえているのでしょうがありません。少しでも力を緩めればこの変態は何をするか分からないので」

「──ふーん?まあ、そういうことにしたげる」


 健一の真上で愛莉と未央が少し険悪な感じを出していたが、愛莉が折れたのかそれ以上は口喧嘩?はしなかった。その様子を見ていた葉先は小さく溜息を吐くと保健室にいる皆に聞こえるように話し出した。


「──ほら、貴方達もそんな事で喧嘩しないの、それよりもこの罪人兼変態を尋問……話を聞かなくちゃね」


(おい……今尋問って言っただろ──どうせここで反論しても何か言われるだけだから言わないが)


 健一は内心そんな事を思っていた。葉先が2人にそう言うと、それもそうかと頷き健一に顔を向ける。


「それもそっか。健一、話は聞いてるわよ?アンタ女子についに手を出したんですってね〜?」

「………汚らわしい……ついにそこまで落ちたのですね。本当だったらこんな人触りたくないです、私も妊娠させられたらどうしましょう………」


 健一は愛莉と未央にそんな事を言われたが、それは全部デマで全て誤解である事を皆に伝える事にした。


「お前ら、まず聴け!俺は何もしていないし、妊娠なんていうデマもあの女子達が言っていたただの噂だ!俺がそんな事をやる訳ねぇだろ!」


 健一はここにいる幼馴染達全員に聞こえるぐらいの声量で叫び自分が潔白の事を話した。その健一の言葉に反応したのが以外にも葉先だった。


「──それは本当なの、健一君?」

「だからそうだって言ってるだろ、何で俺が女子を妊娠させたなんてなってるか知らんが、どうせいつものガセネタだろ。まずその妊娠した生徒を連れてきてから言えや!」


 健一は吐き捨てるように葉先達に伝えた。


「でも、健一君は女子生徒に必要に「彼女になってくれ、なってくれっ!」て──迫っていたじゃない?それで誰も見向きもしてくれないからついカッとなってやってしまったんじゃないの?」


 その葉先の言葉に健一は鬱陶しそうに顔を晒すと今はもう違うことを伝えた。


「──ケッ、そんなもん既に諦めてるわ、今は彼女なんて作りたいなんて思わないしな。それよかこれからの人生の方が大事だからな、俺ももう叶わない夢なんて追わねえよ………」

「「「──えっ?」」」


 健一が言った言葉が信じられなかったのか、葉先達3人は声を揃えて疑問符を頭の上に上げてしまった。


 だがそれもそうだ、葉先達のイメージでは健一はいつも女性のお尻を追っていたイメージがあるからだ、そんな健一が彼女を作らないと言ったのだ。


「そんな驚くことか?俺だって現実を見る。今までの俺がおかしいだけだったんだよ、もうお前らにも迷惑はかけねぇ、だから俺にこれから構うな──そんな事をしている暇があるのなら悟の所に行ってやれや。それと、よっと!」


 そう言うと健一の言葉で油断していて緩まっていた未央の拘束を解いて立ち上がった。


「きゃぁっ!」


 いきなりの事で対応出来なかった未央はそのまま尻餅をついてしまった。その事に健一は申し訳ないと思っていたが、確認も取らずに拘束をしてきたのは未央の方だから何も言わなかった。


 未央は未央でそんな健一を睨んでいたが、そんな睨んでくる未央などいつもの事だから軽く受け流していた。健一と未央のやり取りは気になりはしたが、葉先はある事を確かめる事にした。


「………悟君の所に行けと言う内容は分からないけど、じゃあ健一君は今日のお昼休みに何で逃げたの?それに昨日も深夜まだ起きてたと言ってたじゃない、その時に疚しい事でもしたんじゃないの?」


 葉先に質問されると罰が悪そうに表情を歪めると自分の頭を掻き、面倒臭そうに説明しだした。


「──あぁ、昼に逃げたのは話が面倒臭いと思ったからであって、昨日、深夜まで起きてたのは友達とゲームをしていたからだ。決して如何わしいゲームなんかじゃねぇぞ?」

「──なっ!?お昼に逃げたのは私との話が面倒臭いから逃げたのね!」

「それは俺も悪い事をしたと思っている、すまなかった」


 健一は葉先に頭を下げて謝った、その事に葉先は毒気を抜かれてしまったのかそれ以上何も言えなくなってしまった。


「──でもさ、健一に私達や花丸以外に友達なんていたの?」


 そんな葉先に変わり愛莉が健一の痛い所を突いてきた。その言葉に健一も少ししかめっ面になってしまった。


「………俺だって他の友達ぐらいいるわ、それに俺が深夜何をしようがお前らには関係ねぇだろ」

「それはそうかもだけど……この頃健一私達と距離離し過ぎじゃない?」


 愛莉の言葉に葉先と以外にも未央までも頷いていた。


 だがそんな愛莉の言葉に直ぐにでも、「お前らの為に悟と少しでも一緒に居られるようにする為にの俺が離れてやってんだろ!」と言いたかったが、本人達の問題に口を出すのもおかしいと思い、適当な事を言う事にした。


「………ずっと昔のまんまじゃ、このままじゃあいられないんだよ。俺もお前達も……大人にならなくちゃいけねぇ、だからさ、もう幼馴染の関係なんて良いだろ?この際解消しちまおうぜ?──別に垢の他人になる訳じゃねぇしな」


 健一がわざと突き放す様に皮肉げに愛莉達に伝えると、直ぐに愛莉が反論してきた。


「健一!何でそんな酷いこと言うの?私達は、この中に悟も入れて皆で幼馴染だったじゃない!なのにそれを……幼馴染を辞めるなんて言わないでよ!!」


 少し涙目になると愛莉が健一に訴える様に伝えて来た。だが、幼馴染を辞めたくないと1番思っているのは健一だ。


 ──ずっと仲良い未来だってある筈だ。でも、それでもいつかは幼馴染じゃいられない事だってあるんだよ。

 

 ましてや「悟とこの中の誰かが付き合ったりしたら」直ぐにでも幼馴染という関係は崩壊してしまうかもしれない……なら異物である健一が先に崩壊させた方が良いだろうと思ったからだ。


「あのなぁ、俺だってこんな事を言いたくは無かったわ。だが、俺だからこそ言わせてもらう。──幼馴染の中で誰かと誰かが付き合ったらどうなる?そうなったら昔通り仲良く出来るか?」

「「「──っ!?」」」


 健一の言葉に苦渋の表情になり誰も何も答える事が出来なかった。そんな愛莉達を見て健一は苦笑いを浮かべていた。


「ほらな。お前らもそんな顔になるだろ?もしもの話だが、それが現実になることもありえるんんだ。だから俺はお前らももう大人になれと言ってるんだよ、男女の友情はありえない〜とか言ってる奴はいるが、別にそんなの人それぞれだろ?だからさ、尚更幼馴染なんていうしがらみなんていらねぇと思うのよ」

「………でも、それでも」


 それでも何かを言おうとしている愛莉に出来るだけ優しい口調で健一は話した。


「別にお前らも幼馴染を辞めろなんて言ってる訳じゃない、俺が辞めるだけだから問題ないだろ?」


 健一の言葉に誰も何も言い返せなかった、無言の時間が続く中、健一ももう話す事はないと立ち去ろうとしたら、保健室のドアが開き、悟が入ってきた。


「──皆、ここにいたのか!……何か、あったのか?」


 悟は健一達を見つけた事で安心して声を掛けたが、直ぐに部屋の雰囲気がおかしい事を察知したのか、健一達に何かあったのか聞いてきた。


 悟は空気を読める男だ。


 そんな中、誰も悟の質問に答えられないでいるとさっきまで愛莉達に話していた健一が悟に向き合い、何が起きたのか話す事にした。

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