第24話 決別………からの勘違い③




「──て、事があってな。俺が幼馴染を辞めるって言ったから変な雰囲気になったわけよ?別にコイツらはなーんも関係ねぇ、全部俺が悪い」

「そんな事!──ッ!!」


 健一の言葉に愛莉達は「そんな事は無い」と言おうとしたが、健一に睨まれてしまいその先は言えなくなってしまった。


「そうか……だから保健室に入った時少し雰囲気が悪かったのか。でも、健一にも幼馴染を辞めるという考えになった理由がちゃんとあるんだろ?」

「………‥」


 悟にそう言われた健一は内心毒づいていた。


(──はぁ、怒ってくるどころか理由を聞いてくるのかよ……まぁ、悟らしいわな……どう転んでもお人好し──か。でも俺の本当の本心なんてしらねぇだろうなぁ……ここは適当に誤魔化すか、後は本人達に任せるわ)


 健一自身、自分が勘違いをしているとも考えずに悟達にある事を伝える事にした。


「………あるのかもしれねぇし、無いのかもしれねぇ。好きに考えな……俺はもう行く、後は任せたぞ──悟」


 健一はその言葉だけを残すと悟の肩を軽く叩き、保健室を後にした。


「健一……お前」


 悟は健一の名前を呟いた後に何かを伝えようとしていたがその言葉に健一は立ち止まる事は無くそのまま歩いて行ってしまった。


 愛莉達もその様子を何か言いたげな表情でただ、見ていた。



 ◇閑話休題幼馴染視点




「………‥」

「………‥」

「………‥」

「………‥」


 残された悟達は健一が保健室から離れた後も誰も一言も喋れずにいた。


 だが、その静寂の時間を壊すように愛莉が口を開く。


「──皆にちょっと聞きたいんだけど……いい?」


 愛莉の言葉に反応したのか難しい表情をしていた悟達が顔を向けてきた。皆の視線が集まった事を確認すると愛莉が口を開いた。


「まず、健一の事だけど……アイツ──何か勘違いしてない?」


 そんな愛莉の言葉にいの一番に悟が反応した。


「………シリアスな雰囲気なところ申し訳ないが、恐らく愛莉が思っている事で合ってると思う。風香と未央も同じ考えだろ?」

「えぇ、そうね」

「うん……勘違いだと思う」


 悟に聞かれた風香と未央も同意する様に頷いた。


 2人の返答を聞いた悟は愛莉に次の話をという様に目線で促した。


「──健一はなんかカッコつけてるのかとかなんて変な事を言っていた上に自分は分かっていますアピールして、悟に後を任せて私達から離れようとしていたけど──アレ、完全に何か勘違いしてるでしょ………」


 愛莉の言葉を聞いた他の皆は──「うん、その気持ち分かる」と頷いていた。


「私もいいかしら?」


 風香も何か気になっていた事があるのか挙手をした。そんな風香に悟達は顔を向けると話を聞く態勢に入った。


「皆も健一君が何かをと気付いていると思うけど、その勘違いの内容が分かったような気がするわ」

「私も、何となく分かるけど、風香の話を聞かせて頂戴」


 愛莉も気付いているらしいが風香の話を聞いてみる事にしたようだ。


「──えぇ、さっき健一君は「俺に構うな、悟の所に行け」と言ってたけど、あれは「」──って事じゃ無いの?ただ、間違っていたらごめんなさい」


 最後に自分の考えが間違っている事を危惧してか謝っていた。ただ風香が話し終わると愛莉と未央が「その話分かる」とでも言いたそうに詰め寄ってきた。


「私もそう思ったわ!聞いた時あまりの健一の鈍感ぶりに怒りを通り越して──呆れたけど………」

「私もそう思いました、その……健一さんの前だと態度が悪くなるのは私自身分かってるけど……あの話を聞いた後、そんな事無しで健一さんの事を──殴ろうかと思いました」

「み、未央ちゃん。ドウドウ!」


 近くにいた愛莉が今にも飛び出して健一を殴りに行こうとしていたので未央を落ち着かせる事にした。


 そんな未央に悟と風香はドン引きしていた。だが、風香が「パンパン」と手を叩き場を元に戻す事にした。その後は気を取り直して風香が悟にある疑念を聞いてみる事にした。


「悟君はそこの所健一君から何か聞いてない?彼が鈍感という話は今に始まった事じゃないけど、流石に好きな人を勘違いするなんて──ねぇ?」


 今まで黙っていた悟は風香からの質問に口を開いた。


「俺もそういう話は健一とあまり話さないから分からないけど……もしかしたら俺達がいつも昼休みに集まっているから健一は風香達がと勘違いしたんじゃないか?」

「………確かに、それは誤算だったわね。アレはただ健一君の攻略の為に悟君に協力してもらって話を聞いて貰っていただけなのに………」


 風香は本当に後悔しているのか表情を暗くしてしまった。それは他の2人も一緒だった。  


 その光景に悟もあんな事でそんな勘違いが起きる事を考えていなかった事に反省していた。


「まぁ、後からでもそれは挽回出来るだろ。それより一応確認だが……風香達は健一の事を今も好きなんだよな?」


 悟が風香達にそう聞くと、今さっき表情を暗くしていたのが見間違いだと思わせるように恋する乙女の様な、熱に浮かされた様な表情をするとそれぞれ悟に伝えてきた。


「何を当たり前の事を……健一君を好きな事なんて当たり前でしょ?冗談は顔だけにしなさい」

「そうよ。悟も……まあ?いい男かもしれないけど、健一には勝てないわね。出直して来なさい」

「──兄さん、頭大丈夫ですか?私が健一さんの事を好きな事なんて知ってる癖に……もう家に帰ってこないで下さい」


 ──そんな風に悟の質問に3人は辛辣な言葉を投げるのだった。


 風香も愛莉も悟を残念な物を見るような目を向けていた。ただ、1番酷かったのが未央だ。義理とはいえ、兄に向かって「もう家に帰ってこないで」と言ったのだから。


 だが、そこは爽やかイケメン事悟だ。そんな3人の言葉など軽く受け流す。


「ごめん、ごめん!確認を込めて聞いてみただけだよ。それに一応って言っただろ?──未央に関してはもっと兄を労ってくれ!!」


 悟の言葉に風香と愛莉は納得したのか「そう」と返事を返していた。未央は「ふん!」と顔をソッポに向けていたが……そんな未央の態度にため息を吐きながらも悟は気になった事を皆に伝える事にした。


「それに、健一も健一で何か考え方が変わったんじゃないか?健一から聞いた話で1番驚いたのが幼馴染を辞める事じゃなくて──と健一自ら言ったことだからな」

「それは、私も同じ意見よ。何か心境の変化でも合ったのかしら?」

「まぁ、健一も健一で色々あるんじゃない?何か隠している様な気もするし……その内話してくれるでしょ」


 悟と風香が話している側で、愛莉も何か健一が隠していると思っているのかその事を呟いていた。


 そんな中、一人暗い表情の未央はある懸念を口にする。


「──でも、でも。健一さんが彼女を作らなくなったなら私達に彼女になれるチャンスは増えますが、その逆で他の女性が健一さんを好きになる事も……あるのでは無いですか?今までの女性への不謹慎な振る舞いを辞めるわけですから」

「「「………‥」」」


 未央からの突然の質問にさっきまで色々話し合っていた悟達は──無言になってしまった。悟達が無言になるのもしょうがない。


 それは、今未央の口から出た通りだ。嘘だと思うかもしれないが悟達は今の健一ならいくらでも彼女を作れるのでは?と思ってしまった。


 健一は顔も外見も普通かもしれないが、相手への何気ない思いやりや気遣いを息を吸う様に行うのだ。健一自身に自覚は無いかもしれないがそれで鈴も健一の事を好きになってしまったのだ。


 なので今、健一の事を嫌っている女子達でも健一に少し優しくされれば「コロっと恋に落ちてしまうのでは?」と危惧している。


 それにここにいるお嬢様達は男性と話したことなどほとんど経験がない為、かなり初だ。そんな女子達が健一の餌食になるのを逆の意味で風香達は許せなかった。

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