高校登校
第14話 噂
◆
今の季節は春。大分寒さも柔らぎ暖かい日差しが出て、過ごしやすい季節になった。
朝7時のまだ肌寒い中でも私立星宮高校の生徒達は学校までの道のりを行儀良く友人同士で話し合いながら歩いていた。
「昨日のTV番組は見ましたか?とても楽しかったですわね」
「見ましたわ!あのタレントさんがとても面白くて……私恥ずかしながら笑ってしまいましたわ」
「まあ、まあ!莉子さんもですか!私もですの!」
こんな風に昨日のTVの話題などに花をさかせて女子生徒達が話していた。
私立星宮高校は女子生徒の数が圧倒的に多い為、そんな女子達の百合百合しい姿を朝から見れる。そんな女子生徒達を見れた選ばれし男達は眼福とでも言いたそうにその光景を遠くから見ていた。
「──俺今なら死んでも良いや……」
「馬鹿野郎!!早まるな!俺達は選ばれたんだぞ?数多くの男達が夢見る楽園へと……なのにお前はこんな所で──終わるのか?」
「………いいや、俺は終わらない……絶対にこの高校で素敵な彼女を作って他の高校に行った男子達に自慢するんだ!!」
「その調子だ!俺達の未来は明るいぞ!!」
男子生徒達は話し合うと肩を抱き合い笑い合っていた。ただふざけ合っているように見えるが男子生徒達が今話している事、それは本当の事なのだ。
ここ、私立星宮高校は元々が日本国内にある際も人気なお嬢様学校ということもあり、女子生徒達の大半は由緒正しい家の産まれだったり、有名人でお金持ちの子女達が通っている。性格は礼儀正しく。何の汚れも無い無垢な美女・美少女・美人が集まっているのだ。
そんな中、自分達と住む場所が違うお嬢様達と仲良く出来ないと思うかもしれないが、ある話が男子生徒達の希望となっている。
──それは……自分達と同じ様に入って来た一般枠の男子生徒とお嬢様が付き合ったという話だ。その話が本当のことかも分からない事だが、それが本当なら自分達だって夢を見てもいい筈だと思い、これからの楽しい未来を見据えて品行正しく生活している。
それでもこの高校には女子とも真面に話せないどころか、既に彼女を作るという事すら出来なくなっている敗北者が存在する。
──その人物こそ……三丈健一(16歳)。彼女いない歴=の男子生徒だ。
健一は中学生と今現在を合わせて約1000回もの告白をしてきて、全てに惨敗している。高校生になってからも約600回程女子達に見境無く告白をしたが……それもまた全てに敗北をしている。
そんな女子にだらしない健一の事を皆は嫌悪し、健一にこんな名前を送った──「歩く猥褻物」と。
由緒正しい学校なのに「そんな言葉を使って良いのか?」と思うかもしれないが、ほとんどの女子生徒が侮蔑を込めて健一の事をそう呼ぶので悪い意味で女子は慣れてしまったのだ。
そんな中、男子生徒達は健一の事を男の中の男と心の中で思っていた。
その理由が自分達じゃ出来ない女子生徒への告白を何回もしているからだ。それも何度も何度も断れながらもだ。だから男子生徒達からは密かに「勇者健一」と呼ばれている。──ぼっちで友達が少ない健一はその事を知らないが。
そんな時、女子達が楽しくおしゃべりをいていたら騒ぎが起きた。
「──っ!?あのお方は、もしや!」
「莉子さん!見てはいけません!あの男性こそ──「歩く猥褻物」です!!」
「──っ!!!?」
その言葉に他の生徒達も気付いたのか、あちらこちらからヒソヒソと声が聞こえる。
さっきまで楽しく会話していた筈なのにある男子生徒が見えただけでこの騒ぎ様だ。その人物こそ今話で出た──「歩く猥褻物」こと三丈健一だ。
「──はぁーーぁ、眠………」
当の本人はそんな周りの声など聞こえないのか、下を向きながら眠そうに欠伸をしている。
そんな眠そうな健一は結局昨日の動画生配信は櫟と電話で話し合い、深夜2時まで行う事に決めた。
だからか今はとても眠くそんな周りの事など気にしている余力すらないのだ。
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