第12話 喧嘩を制するものは……何を制するの?②
◆
それから2時間か3時間程気絶していただろうか。健一は人目の付かない路地で倒れてた筈だが今は何故か綺麗な部屋で寝かされていた。
その健一の近くでは双葉鈴が泣き崩れるように健一の布団に抱き付き寝ていた。
部屋の中は備え付けの時計の音と健一と双葉の寝息しか聞こえなかったが、少ししてから健一が起き出したのか呻いていた。
「………うぅ…あ……あぁ?」
健一は起きたが寝ぼけ眼で周りを見たら、さっきまで寝っ転がっていた汚い路地の地面では無く綺麗な部屋で寝かされていた事に驚き、部屋の中を見回すだけで何が起きてるか分からなかった。
「俺は……あの後何が起きたんだ?ここはどこだ?──痛っ!?」
何が起きたのか考えようとしたら、物凄い頭痛が健一を襲ったのでその場で頭を押さえると声を上げてしまった。
その時下を向いた事で双葉が自分の近くにいる事を知った。
「………何で、双葉さんが?……まあそれはいい……多分痛みはまだあるからそんなに時間は経ってないだろう。時間は……夕方の6時か……俺が気絶してから丁度3時間後ってところか?」
今まであったことを今の時間を時計を見て確認していると、双葉も起きたのか起き上がるとその場でむにゃむにゃと言っていた。
その光景は見ていてほっこりとしたが、あまりそういう女性の行為は見ちゃ駄目だろと思い、そっぽを向く事にした。
そんな中、双葉も起きたのか周りを見て健一が起きてる事を知るとそのまま健一に泣き叫びながら抱き付いた。
「──!……健一!!健一ーー!!生きて
た!」
双葉のいきなりの行動に驚いた健一は痛みを耐えながらも双葉に抱き付くのを辞めさせるように伝えた。
「分かった!分かったから抱きつくな!」
(柔っこいんだわ!こんな事言ったら変態だと思われるから心の中で留めるがな!!)
馬鹿な事を考えていた健一に本当に大丈夫なのか双葉が顔を見てきた。
「………本当に大丈夫?──死なない?」
「死なないよ……それより双葉さんが無事で良かった。あの後は大丈夫だった?」
「ん──あの後は無事逃れる事が出来てレイナ──私の護衛役のレイナに保護してもらった」
(──レイナ?誰だそれは?)
名前を聞いた事が無かった健一はその人物が誰か聞いて見ることにした。
「双葉さん、そのレイナさんが保護してくれたのはいいが。それは誰なんだ?」
「………伝えてなかった。今日、健一と会った時健一に暴言を言ったりしていた女性の事」
「──っ!!!?」
双葉から教えられたその名前に健一は一瞬胃が煮えたぎる思いになったが、冷静に、冷静にと自分を落ち着ける事にした。
「………ということは、あのアマ──銀髪の女性はレイナさんと言うんだな?その人は今、どうしてる?」
許す事が出来ず、健一はレイナの事を"アマ"と言っていたが双葉はそこにツッコミを入れなかった。
「ん、レイナは健一にこんな事をした罪として健一を酷い目に合わせた男達を探すまで帰ってきちゃ駄目と命令した。それと健一に近付けさせないようにしている」
「そ、そうか……まぁ俺も会いたくはないから良かったよ」
「ん……でもレイナがごめん……本来は初めて会った人にも礼儀正しい筈なのに健一には変な事をしてしまったと本人も謝っていた」
双葉はそう言うと自分の事のように謝ると健一に頭を下げて来た。その様子を見ていた健一は慌てて辞めさせた。
女の子に謝らせるというのも嫌だが、権力者の娘に頭を下がらせて謝らせた事が知られれば何をされるか分からないと思っている小心者だった。
「ちょっ!!双葉さん!俺はそんなに気にしていないからさ!ほら頭上げて!ヘッドアッププリーズ!」
突然の双葉の謝罪に焦った健一は変な英単語を使っていた。その言葉が通じたのか双葉は頭を上げた。
「ん……健一がレイナの事を"アマ"って言ってたから怒ってると思った。でもそこまで健一が言うなら辞める」
「そうそう、頭なんて下げなくて良いからさ!それにレイナさんを"アマ"って言ったのは言葉の綾だからさ!」
(クソッーー!!自分が変な事を言ったから変な風に双葉さんは捉えちゃったよ)
健一は変な話題にまたならない様に自分が寝ていた間は何があったのか、ここはどこなのか双葉に聞いてみた。
そしたら、ここは星宮駅の近くにある病院で今はその病院内の病室にあるという。
あのレイナが健一をここまで運んでくれたという事を聞いた時は驚いた。
今の健一の状態は命に別状は無いが肋骨が何本か折れている為、短くても1ヶ月は入院しなくてはいけないという事らしい。
勿論入院費とかは全部双葉達が負担してくれるそうだし学校と健一の親達にもレイナから直接電話で何が起きたのか話してくれたから、安心して入院出来ると言う。
ただ、驚く事に1番騒いでいたのが何処から聞きつけてきたのか分からないが健一の幼馴染の悟達だったらしい。特に騒いでいたのが女性陣の来栖愛莉と葉先風香と悟の妹の七瀬未央だ。
その状況を見て悟は双葉達に怒る気もなくなりドン引きしていたと言う。
「………と言う事があった。皆心配していた」
「そうか………」
(まあ、何が起きたかは分かったから良いが、
双葉が話終わったので自分達の幼馴染が変な事をしていた事を聞かされた事を考えていたら、内心恥ずかしかった。
「まあ、分かった。色々と教えてくれてありがとう!もう遅いし親御さんも心配すると思うから双葉さんは帰りな」
「ん、分かった。でも明日からもお見舞い……来ていい?」
双葉そう言うと可愛らしく首を傾げると健一に聞いてきた。
(………この状況で「うん、駄目だよ!」なんて言える奴いないだろ………)
「──別にいいぞ?でもそれよりも悟の所に行った方がいいんじゃないか?今回のデートは失敗だったかもしれないが、今日見ていた双葉さんだったら悟と普通にデート──出来ると思うぞ?」
「………‥」
健一がそう聞くと双葉は黙り込んでしまった、その様子を見てどうしたのかと思っていたら、双葉が話し出した。
「………まだ、悟先輩とはデートはしない……それに健一と話すと色々と悟先輩の事を知れるからまずは沢山知ってから」
「そうか……まあ、双葉さんがそれでいいなら俺からは何も言わないがな」
話が纏まったと思い解散かなと思ったら双葉から意外な質問を受けた。
「………ちょっと帰る前に聞きたいことがある……聞いてもいい?」
「んあ?別にいいが……俺が答えられる範囲ならな」
「ん、じゃあ──今日来た3人の女性のうち誰か1人は健一の──彼女なの?」
双葉は真面目な表情を作るとそんな事を質問してきた。
だが、健一にはとてもありえないことで思わず笑ってしまった。
「あはははッ!ひっひっはっ!!腹が──痛い!!」
「むぅ……何故笑う?私は真面目に聞いてる」
「わ、悪い……双葉さんがあまりにもおかしい事を言うからな……思わず笑っちゃったわ」
「………そんなにおかしい事は言ってない」
少し拗ねてしまった双葉に「ごめん、ごめん」と謝ると何で笑ってしまったのか伝えた。
「だってさ、3人共大事な幼馴染かもしれないけど全員が悟の事を好きなんだぜ?だからさ、俺の彼女とかおかしいだろ?」
「………そう、なの?」
「そうさ……悟は凄えんだぜ?沢山の女性が悟を狙っているらしいからなぁ……だからさ双葉さんも頑張れよ?」
「………うん、頑張って……みる」
頑張れと言ったのに歯切れが悪い双葉に少し気になったが、聞くのも無粋と思い双葉の反応は見なかった事にしといた。
そんな時、双葉からあることを聞かれた。
「じゃぁ……健一は誰か好きな人はいる?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます