第11話 喧嘩を制するものは……何を制するの?①




 そう威勢よく突っ込んだ健一だったが、奮闘したのは最初だけで10分もすれば顔中アザだらけになりながら2人の男達の足元に倒れて虫の息となっていた。


「──ひっー、ひっゅー──かはっ!」


 健一は荒い息を吐いているから生きている事は分かるが、もうその場から動けないようだ。


 でもこれでいい。健一の体内時間ではとうに10分など過ぎていると思うから今はもう双葉は安全な所にいるか、あの銀髪の女に保護されているだろうと思い少し笑っていた。


 その様子を見て男達は気持ち悪い物でも見るように健一の事を見ていた。


「コイツ、こんなに俺達にボコボコにされてるのに笑ってやがるぞ……殴り過ぎて頭のネジでも外れたか?」

「最初からそういう奴だったんじゃないですか?だって顔が釣り合ってもいないのにあんな美少女と一緒にいるぐらいですからね」

「それは言えてるわ!」

「「がははははっ!!」」


 笑っている男達に健一は心の中で毒づいていた。


(──チッ、ほっとけ……そんなの俺が1番分かってるわ!今まで何回女子に振られてきてると思ってるんだ。そんな俺が双葉さんなんていう美少女に釣り合う訳がねぇだろ……それにこれは悟の為の偽デート何だよ。俺はただのピエロさ──あぁ、考えたら考える程虚しくなってきたわ)


 男達は健一の事を知らないからそんな事を言っているが健一自身はその言葉一つ一つが苛ついてしょうがなかった。


「──よし、もういないかも知れないがあの美少女でも探しに行くか……運良ければまた会えるかも知れないからな、そん時は──」


 そう呟くと男達は嫌らしい顔をしていた。そんな男達を下から見ていた健一は嫌な想像をしてしまった。なので、本当に最後の力を振り絞り男達がここから離れられないようにと思い──目の前にいた男の足にしがみ付いた。


「なっ!?コイツまだこんな力が残ってやがったか!──離れろ!気持ち悪りぃ!」

「──っ!?……うぅ!!」


 男は足を上下に動かして健一を地面に打ち付けながら振り落とそうとしたが、健一はその場から少しも動かなかった。


(させる……か!!ここでもし双葉さんが見つかれば俺が頑張って作ったこの時間が無駄になる……もう逃げていたとしても安心は出来ない……だから、だから!あと少しだけでも!)


「このカスが!焦ったいんだよ!!」

「うがっ!?──かはっ………」


 男は面倒臭くなったのか、健一を足に付けたまま電柱の近くまで歩くと健一をおもいっきり電柱に叩き付けた。


 流石に健一もその痛みには耐えられなかったのか男の足から手を離すと気絶をしたようにその場に倒れると動かなくなってしまった。


「手間取らせやがって、やっと諦めたか」

「ははっ!コイツ死んだんじゃないですか?」

「かもな、まあいいだろ……ただサツに見つかる前にここから離れるぞ!」

「了!」


 そう言うと男達はそそくさとその場から健一1人残し何処かへ行ってしまった。


「──ゲホッ、けほっ!いっ、たか。それに誰が死ぬか──案外俺は頑丈だからな──でも痛いものは痛い。あぁ、久々にこんなに血なんて流したわ。いつぶりだろう──駄目だ、思い出せねぇわ……なんか懐かしい記憶があるんだがなぁ………」


 健一はわざと気絶したフリをして男達から逃げる事に成功したが、もう身体のあちこちが痛くてその場から動けない事を知っている健一は立ち上がれないまま苦笑いを浮かべていた。


「でも情けねぇ……本当、情けねぇなぁ。威勢は張ったがこのザマだ。これが悟だったら──絶対にカッコよく双葉さんを救ったろうに……俺じゃ無理だ……それに女性と関わるといつも運が悪い事が起きやがる。人のせいにしちゃいけねぇがここまでくるとな……やっぱ俺には彼女は向いてねぇや──潮時だな………」


 健一は今日起きた事、今まで起きた女性との事を考え、自嘲気味に笑うと独り言を呟いた。


 そんな考えも終わりにしてこの後、どうしようかと思っていたが、どうせまだ起き上がれないし、誰も助けに来ないからこのまま敗北の味でも噛みしめようとその場で眼を閉じることにした。


 健一が眼を閉じる時──「健──丈夫!──お………」と誰かの声が聞こえたような気がしたが、幻聴だろうとそっと眼を閉じることにした。

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