第9話 デート?違う、デットの間違いだ!①
◆
あれから1ヶ月程経った頃、1つの動画が撮れた。なので健一は動画のアップを櫟に任せる事にした。
動画を撮る際に健一が驚いた事は使った機材は本当にスマホ一台という事だ。
人気の配信者やスポンサーが付いていたり、企業に勤めて配信している人達はしっかりとした動画を撮る為の部屋や機材があると聞くが、健一達はスマホ一台を使いそのスマホの中に動画編集アプリを入れてYou○ubeにアップする事にした。
意外な事に動画を撮る時は健一は全く緊張をしなかった。
今から別に生放送で撮るわけでも無いし、要らない所や健一が写ってしまった所は櫟が編集アプリでしっかりと消して面白い動画に変えてくれている。
因みに、配信する時の健一達の名前は「くぬぎの丘のたけやん」という名前にした。初めからあった櫟の動画の配信者の名前を変えているだけでそれ以外は特に変えていない。
それに話し合った結果、もしもスポンサーや企業から連絡が来た時は櫟に任せる事にしている。
そんな中、動画のアップを櫟に任せている健一は今何をしているのかというと高校で授業──では無く。ある人物と待ち合わせをしていた。
「──動画がどうなるか気にるな……それも気になるけど、それよりもう待ち合わせの時間だ。面倒臭いがやらなくちゃな………」
健一が今から向かっている場所は、私立星宮高校近くの最寄駅の星宮駅だ。そこでなんとこの男は女子とデートの待ち合わせなのだ。
こんな事櫟にバレたら恐らく○されるだろう。
でも、これはただのデートでは無い。これは──偽デートだ。だから健一自身も余り乗り気では無い。
じゃぁなんでこんな事をしているかというと、健一の親友兼幼馴染の悟の事を好きになった後輩の女子生徒がいつも悟と一緒にいる健一なら悟の事を何か知っているのかと思い、デートの練習台に選んだらしい。
相手側も「やりたく無い」とは言っていたが金魚のフンの様な存在の健一なら何もされないと思い練習台に抜擢されてしまったのだ。
健一はやる気は無いが自分の親友の悟が幸せになるならと思い頑張る事にした。なんでも今回悟を好きになった女子は超の付くほどのお金持ちの令嬢らしい。
正直そんな女子とデートなんて出来るのかと思っていたが、会ってみたら口は悪いが話せない事は無かったので大丈夫だろうと思っている。
皆が聞きたい事はわかっている。そう──
「──顔は可愛かったかって?勿論身長は小さいし、ちっぱいだったが顔は美少女だったぞ?俺が見た瞬間告白をする程だからな……えっ?どうなったかって?おいおい──即刻振られたに決まってるだろ?何でも「生理的に受け付けない顔」──だそうだぞ?正直俺はそれを聞いて、泣いたな」
そんな風に以前言われた出来事を思い出し内心泣いていると、待ち合わせの場所に着いたので待ち人を待つ事にした。
待ち合わせの時間から20分程経ってもまだ誰も来なかった。
遅いなら連絡ぐらいくれよと思うが──相手側から「健一に連絡先を教えるぐらいなら○ぬ方がマシ」と言われてしまい、連絡先は交換していない。
だから待つしか無いが──
(これ……俺騙されたんじゃね?昔もあったよなぁ………悟とデートをする為の練習台になってと言われて待ち合わせの場所に30分も早く行ったっけ。あの時はもしかしたら自分の事を偽デート中に好きになってくれるんじゃね?と思ってお洒落して行ったよな、結局待ち人すら来なかったけど──グスン)
悲しい過去の記憶を思い出し、少しナイーブな気持ちになってしまったので「後10分待っても来なかったらお家帰る」と幼児退行しかけていた時、星宮駅のロータリーに黒塗りのお高い車……ベンツが止まった。
庶民的な駅とベンツが一緒の光景など今後見る事が出来ないだろう。健一も流石に
「──嘘ん」
初め銀髪の美人が運転席から出て来たと思ったら、助手席を開けると健一の待ち人の少女が出て来た。
少女は黒いゴシックドレスという服装のまま健一に向けて歩いてきた。
その様子を見て健一は──ドン引きしていた。
(いやいや、勿論洋服はメッチャ似合っている……似合っているがデートでゴシックドレスってどうなん?それに何処の世界にただのデート、それも偽デートであんな高級車で来るねん……何か待ち人と一緒にスーツ姿の銀髪のメッチャ美人さんもいるんだけど──それに美人は美人でも何か人でも殺しそうな目を俺の方に向けてるんですけど……何、俺今日○ぬん?)
そう思いながら体を震わせてると。ようやく健一の目の前に待ち人、双葉鈴が来た。
健一は何を始め話せば良いか分からなかった為相手の出方を見ていた。すると双葉の隣に無言で立っていたスーツ姿の女性が突然近付いて来たと思ったら──何処から取り出したのか消毒スプレーを出すと健一の顔に──かけて来た。
「めがっーー!?」
※人の顔には消毒液をかけてはいけません。
あまりにも自然に顔に消毒スプレーをかけて来た為、健一は反応が遅れて目に直撃してしまった。直撃した消毒と言ったらとんでも無く痛かった。
健一はあまりの痛さにそこら辺を人目を気にしていられる状態じゃ無くなり無様に転げ回った。
健一に消毒スプレーをかけた当の本人はと言うと──
「──ふむ……おかしいですね。人間でしたか」
と、呟いた。
それを聞いた健一は──
(いや、アンタの頭がおかしいだろ!?どう見ても俺は人だろうが!何?俺は顔が変形しすぎていて人じゃ無いって?──な訳あるか!これでも知らない人に逆ナンだってされた事あるんだぞ………)
自分自身にノリツッコミをしながらも転げ回っていたらようやく少し目の痛みが治ったので立ち上がり双葉の方を見てみたら、無表情のながら可愛らしいお顔を汚物でも見るような顔に変えて健一を見ていた。
「………‥」
侮蔑が籠もった目で見られているから健一は何も言えなかった。
──中にはこういう目を向けられて"ご褒美"とか言っている連中がいるらしいが、アレは
そんな事を思っていると健一に消毒スプレーをかけた女性が話しかけてきた。
「──0点ですね……鈴様と会っても一言も喋らないどころか、いきなりその場で目を押さえて転げ回ったと思ったら立ち上がる。それに加えて事欠いて鈴様の服装を褒める事もせずに涎を垂らしながら視姦とは……恐れいりました。──今すぐに警察を呼びますね」
「………‥」
尚も目の前の美人の女性は健一に辛辣な言葉を言って来た。
言われた健一は無言になってしまった。
(まず言わせてくれ。その場で転び回ったのはこの女が俺の目に消毒をかけたからであって。最後の涎にいたっては垂らしてすらいない、要するにこの女は頭のおかしい人間だという事だ……無視しよう。うん)
そう思った、健一は銀髪の女を無視して双いない物と扱うと決めると葉に話しかけた。
「ごめん!ちょっと目にゴミが入っちゃってさ!待たせちゃったね。──双葉さんの今日の洋服気合い入ってて可愛いね!」
「ん……ありがと」
待ち人は健一の言葉に素直に返事を返してくれた。さっきの侮蔑の目が嘘の様だった。このまま行くかと思ったが、そんな上手くいく訳にもいかなく──
「──何、無視しているのですか?こちらにも綺麗な女性がいるでしょ?貴方、──目、付いてます?」
「………‥」
銀髪の女はそういうと自分の目を指差しながら小馬鹿にする様に伝えてくる。
でも健一はそんな事じゃあもう反応なんてしない。
銀髪の女を無視すると双葉と健一が考えたデートプラン通りに今はお昼なので食事を取るためにその場から離れることした。
「双葉さん、もう昼時だから今からお昼ご飯を食べに行こうか?一応俺が決めたからそこに一緒に行こう!」
「任せる」
「よし、なら行こうか!」
「………‥」
そういうと健一達は銀髪の女を置いてその場を離れる事にした。
離れる際に銀髪の女が下を向き何もして来ないことが何か気持ち悪かったが、今は気にせずにご飯を食べに行く事にした。
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