第8話 動画配信の収益化は18歳から③



 健一は台詞通り喋ったが、櫟から何も返答が返って来なかったので、やはり似ていないのではと思い櫟を見てみたら……めっちゃ喜んでいた。


「凄い、凄いよ!三丈君!!君の声は本当にフリ○ーザそっくりだよ!いや、もう君がフリ○ーザだ!!」

「いや、俺がフリ○ーザは駄目でしょ……本物の声優さんもいるんだから、俺はその人を真似たという事ですからね」


 正論を言う健一だったがそんなのどうでも良いと言わんばかりに喜ぶ櫟が見れて「まぁ、喜んで貰えたなら良かったな」と思う事にした。


 その後も色々な台詞を言ったり声のバリエーションを変えたりして他のキャラクターの声も出せるか試してみた。


 試してみたがやはり1番似ているのがフリ○ーザだと言われた。


 健一が自分の声が本当にフリ○ーザなのか義心半疑だった為、一度スマホの録画機能で撮って聞いてみたら……本当にフリ○ーザの声に似ていた為健一は驚いた。


 そんなこんなで櫟と声真似をして遊んでいた健一だったが、夜も暗くなって来てることに気付いたので今日はもう帰ることを伝えた。その際に「また来ますね」と言おうとしたら──「大事な話があるからまだ帰らないで」くれと言われた。


 言われた為、リビングで待っていたらスマホを持った櫟が健一の元に来た。


 ただ、その表情は何かを決心した様な顔つきをしていた為「今から何か聞かされるのか?」と思い、何を聞かされても驚かないと構えていた。


「三丈君、君と会ったのは今日が初めてで出会い方もあまり良くなかった。でもこんな短時間で楽しく話せた人は初めてなんだ」

「俺もそうですよ。というか俺は人と話すのが苦手で学校では所謂ぼっちなんていう職業をやらせて頂いています……まあ、冗談は置いといて人とこんなに長く喋れたのは櫟っちが初めてです」


 健一は嘘を付くのもおかしいと思い、それに櫟だったら笑わないと確信していたので自分が高校ではぼっちの事を話した。


 そしたらやはり櫟は笑わなかった。


「そうか、そうか!健一君もぼっちなのか!実はね僕も小・中・高と全てぼっちなんだよ!いや〜人と話すというのは僕にはどうも合っていなくてね……だってあれって他の人と話を合わせなくちゃいけないんでしょ?それだったら自分のやりたい事をやったりしていた方が有意義だと思わない?」


 笑わないどころか健一よりぼっち歴は長いらしい。


 というか、自分は昔から悟や他の幼馴染がいたからぼっちじゃ無いのかもしれないでも櫟から言われた手前「俺はぼっちじゃなかった、悪いな!」なんて言えるわけがなく。

 

 幼馴染の話題は櫟の前ではNGワード禁句にしといた。


 でも健一には櫟の言っている事が共感出来た。


だってそうだろ?何で他人に合わせなくちゃいけない。合わせなかったら爪弾きにされるだけで別に死ぬ訳では無い。


 それに皆も絶対通って来た道だと思うが、班決めなんて際もぼっちには苦い思い出だと思う。


 健一も通って来た道だが偶々悟と違うクラスになった小学6年生。修学旅行の為の班決めをするという事で他の皆はワイワイ騒いでそれぞれ班を決めていた。そんな中、健一だけは1人孤高に自分の机から一歩も動く事なく鎮座していた。


 だがそれに気付いた担任の先生が健一に言って来たのである、その言葉は今も覚えている──「皆、三丈君が1人でいるから誰か班に入れてあげて」──今なら思えるその言葉……パワハラじゃね?


 そんな感じにこの世の中はぼっちには辛いのだ、そんなぼっちの過去を持つ2人が集まって話しているのもまた何か感じるものがあるが。


「それは俺も共感出来ますね……というか学校には誰も自分達の理解者などいないですもんね……担任の先生なんて1番の敵ですよ」

「分かるなぁ〜僕も担任の先生には苦痛な目に合わされたよ、でもそれはね社会に出ても一緒だった。やれ挨拶をしろだとか声が小さいだとか、挙句の果てには100人も人がいる中でプレゼンをしろだと!?殺す気か!……て思ったね」

「………‥」


(お、おう……聞けば聴くほど櫟っちの過去がやばいな……闇が深すぎる。俺なんて比べられないぐらい色々と大変なんだな、正直今の話を聞いて社会に出たく無くなったわ………)


 健一は社会が怖くなっていた。


「それでね、前の上司が普通の人なら出来るとか言うから──「世の中には全部が全部出来る訳が無いんだよっ!!」て言って前の会社はやめて来たよ」

「そうなんですか……では今は何をやってるんですか?先程、脱サラしたと言っていたので何かをやっている事は分かるのですが」


 健一がそう聴くとさっきから手に持っていたスマホを渡して来た。


「えっと?スマホがどうしたんですか?」


 健一はスマホを渡された理由が分からなく聞いてみたら、意外な言葉が返って来た。


「それが僕の仕事道具なんだよ、ロックのパスワードは切ってるから中を見てみてよ」

「わ……分かりました」


 そう言われたので、言われた通りスマホの電源を付けたらのある動画の画面で止まっていた。


(You○ubeの動画?これを見れば良いのか?)


 どうすれば良いのか櫟に目線をやったら。


「その動画を見てみて」


 と、言われたので動画を見てみることにした。


「分かりました」


 櫟に言われた通りにその動画を見た。動画の内容は1人の男性が顔を隠して川魚を釣ると言うありきたりな動画だった。


 よく見たらその動画の登録者数は200人と少なく、視聴者数も59人の動画で配信者の名前はという名前だった。


 ただ、配信者の名前が気になりもしかしてと思いながら15分間の動画を見終わった。その後に櫟の方に顔を向けたら頷いた。


「気付いたようだね。その動画の投稿主は僕だよ、まだ名前すら知られていないペーペーのYou○uberだけどね」


 櫟はそう言いながら苦笑いを浮かべていた、でもその状況で健一は何か運命を感じていた。"You○ubeの世界を諦めた自分"と"今丁度配信者となっている櫟"──その事に何か運命を感じていた。


「えっと、櫟っちが配信者って事は分かりましたがこれを俺に見せてどうするんですか?俺が他の人にTwi○terとかで広めれば良いんですか?」  

「違うよ」


 首を振って違うと言ってきた。


 じゃあ、何なのかもしかしたら、もしかしてと思ったが伝えられない健一に向けて櫟は伝えてきた。


「僕と、僕と一緒にYou○ubeの配信者をやらないか?」

「──っ!!」


 健一はもしかしたらとは思っていたが、本当に自分の考えていた通り事が進むとは思っていなかったりとても嬉しいが次の櫟の言葉を待つ事にした。


「僕1人じゃ今の視聴者数が限界かもしれない……けど、三丈君とならやれる自信があるんだ、それにさっきから練習してたでしょ?フリ○ーザの声真似を?」

「は、はい──って、もしかして俺がフリ○ーザの声真似をして配信するんですか!?」


 健一が聞くと、ニンマリと口の端を上げながら両手で丸を作ると言ってきた。


「正解!君が配信をして、僕がその動画の編集をする……そしたら面白い動画が作れると思わないかい?」


 櫟は人懐っこい顔に悪い笑みを浮かべると健一にそう言った。


 これがのちに人気が爆走するYouT○berの誕生だった。その事は健一も櫟も今は知る由も無かった。


「編集のやり方ならここ1ヶ月ぐらい自分1人でやっていて、慣れているから任せてくれ」

「は、はぁ……でも俺に配信なんて出来ますかね?言った通り俺は現在もぼっち継続中ですよ、人前なんかで話せるかが……不安で」


 健一には人前で話せるかが自信が無かった。


 知り合いが見るだけだったらまだしも、全国の人々が見るのだ、言ってしまえば馬鹿な事をやったら全国配信されてしまうという事だ。


 ネット用語でも見かけるがヘマをしたらなんかになりかねないのでたまった物ではないと思っていた。


その事を思い浮かべると身震いをしてしまう。


「まあ、緊張するのも分かるけどこれから練習して行けば何とかなると思うよ?それに顔出しはやらないからね、三丈君だって家族や知り合いにバレるのは嫌でしょ?」

「それはそうですが……でもやっぱり俺じゃ無理ですよ、俺も本当は櫟っちと会う前に何かアルバイトをしなくてはと思い、その時にやろうと思ったのがYou○ubeなんです。でも収益化をやろうと思うと年齢が立ちはだかるので出来ませんでした、今がチャンスだと思うんですが、いざやるとなると自信が無くて………」


 健一のその話を真剣に櫟は聞いてくれた。


「そうだったのか、三丈君もYou○ubeをやろうとしてたのか、でもね今三丈君は自信が無いと言ったけど、そんなの無くて良いと思うよ?」

「………それはどういう意味ですか?」

「今、僕が言った通りさ。人気配信者とかだったらしっかりとやらなくちゃとかの考えに至るかも知れないけど、僕達が今からやろうとしている事は言わば趣味活だからね、僕の動画見たでしょ?あれを見てしっかりとした動画、面白い動画だと思う?」


 健一はそう聞かれたが聞かれてみれば櫟には悪いが、正直誰でも出来そうな動画だと思った。


「正直に言ってしまうと、誰でも出来る動画だなと思いました」

「そうそう、それで良いんだよ。初めなんて皆そうさ、趣味で動画を上げていたら人気が出てしまいました〜なんてザラにいる世界だ、だから僕達も最初はそんな感じで行こうと思う」

「………なら、それぐらいなら俺でも出来るかもしれません」


 健一がそういうとニッコリと笑顔を向けてくれた。


「今から直ぐに動画を撮るとかじゃ無いから安心してくれ。いずれは撮るけどその為の練習を今はやろう、その為にも三丈君には是非ともキャラ作りをしてもらいたい」

「キャラ作りですか?」

「そう、キャラ作りさ。僕達は顔出しはNGでやるつもりだから、動画の内容と配信者のキャラで人気を獲得しようと思う、それにYou○ubeを上げている人の中ではTik○okとかから人気が出たりした人や、今は芸能人とか様々な人が動画を上げているから、普通の人の配信じゃぁ簡単に目移りしてしまう、ならを作り配信すれば良い」

「それが、フリ○ーザのキャラという事ですか?」


 櫟が言いたい事は大体聞いてて分かっていた為、言われる前に伝えてみた。


「その通りさ。フリ○ーザのキャラだったら冷静な感じで丁寧な口調を意識すると良いかもね、視聴者の人や生き物とかを下等生物とかドラゴン○ールネタを少し入れれば多分受けると思うんだ」

「その、それはドラゴン○ール的に大丈夫なんですか?真似しちゃうみたいな感じになっているのですが………」

「うん、それはしっかりと決めとくよ?何をしたら大丈夫とか、何ならパクリというか、オマージュをして良いかをね、ドラゴン○ール自体をバカにするネタや取り入れすぎると苦情が来てしまう可能性があるからそこはしっかりと決めとこう」

「分かりました」


 健一と櫟はその後も何が良いやら、どうしたら人気が出るなど話し合っていた。


 気付いたらかなり遅い時間になっていたので、今日は解散になり、また明日櫟の家に集まる事になった。次の日も櫟の家に学校が終わると集まっていた。


 丁度健一は高校では部活も入っていなかったので助かった。


 ただ、この頃今までやっていた女子生徒への絡みが余りなくなった事に悟や他の幼馴染に訝しんだ目で見られたが、バレる訳にはいかないので誰にも話す事はなく月日が流れていった。

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