第7話 動画配信の収益化は18歳から②
(良いだろう……貴様がその態度なら──
そう頭の中で思った健一は、目の前の男性に喰ってかかった。
「あぁ、テメェよくもそんな事を俺に言えるなぁ〜……警察ダァ?呼んでみろや!?テメェが捕まるがな!それにお前が煩いから、近所迷惑だから苦情を言いに来たんだよ!このボケナスが!」
「ヒィーーー!?」
健一がヤンキー顔負けな表情で怒鳴り声を出し、伝えたら男性は本当にビビってしまったのかその場で蹲ると何か温かい透明なアンモニア臭がする物、要するにおしっこを漏らしてしまったのだ。
その状況に一層健一の怒りのパラメーターは上がり続けて。
「………テメェの返答はしょんべんてか?舐めやがって……もう許さねぇ──俺が直接警察を呼んでやるよ!?」
健一が勢いを任せてスマホを取り出し警察に連絡を入れようとしたら、おしっこまみれの男性が健一の腰に飛びかかって来た。
「ごめんなさい!僕が迷惑をかけているのに君が悪いみたいな事を言ってしまって、でも警察だけは、警察だけはやめてくれ!?」
「ああ!?お前が先に連絡しようとしたんだろうが!?なのに連絡をしないでダァー?舐めるのも大概にしろや!?それに汚ねぇから近づくんじゃねえ!」
「ヒィ!?ごめんなさい!ごめんなさい!何でもしますので警察だけは勘弁して下さい!!」
男性はそういうとその場で土下座をして健一に何度も何度も頭をコンクリートにぶつけながら謝って来た。
その騒ぎを聞きつけたのか、周りの住民も「なんだ、なんだ」と言いながら集まって来てしまった。
──その様子を見た健一は、少し冷静さを取り戻した。
(ここで本当に騒ぎを起こして誰かに通報でもされて洒落にならねえ。警察を呼ばれるのが1番面倒臭い事だからな……その話が学校に通ったらなんて言われるか分かったもんじゃねぇ、ここは一旦この男の家に隠れるか?)
そう思った健一はさっきまでの怒声を辞めて、普段通り男性に声をかけた。
「──アンタ少し落ち着け。それにもう土下座は良いから立ち上がってくれ、まだ続けるようなら本当に警察を呼ばれるぞ?」
「──っ!?……分かりました」
「よし、じゃあ、直ぐにアンタの家の中に入ろう、このまま近くでウロチョロしてると何か言われる恐れがあるからな」
「………僕の家ですか」
目の前の男性は健一が怖いからか、他の理由があるからかそのどちらかもしれないが、健一を部屋に入れたくない感じを出していたが、今は緊急の為そんな事言っている場合じゃないと思ってくれたのか、部屋に入れてくれた。
「──入ってください」
「すまない」
健一は部屋の中に入ると一旦落ち着けたからか、深呼吸をした。
男性なんてその場で倒れていた。
◆
それから10分程しただろうか、2人は無言のままリビングらしき場所に移ると用意された座布団に座りながら向き合っていた。
何も言わないまま時間は過ぎていったが、この時間も勿体無いと思った健一が話し出した。
「──まず、先程は貴方が年上なのに生意気に、あんなに暴言を言ってしまい申し訳ありませんでした。ちょっと俺も嫌な事があって貴方に当たってしまったのもあります──本当にすみませんでした」
健一はそういうとしっかりと頭を下げて目の前の男性に謝った。
そんな健一を見ていた男性は年下の子に先に謝らせてしまったと言う事もあるが、申し訳なさそうな顔になりこちらも謝って来た。
「僕の方こそすまなかった。君に迷惑をかけているのも知らずに毎日煩くしていたようだ、そこまで考えが付かなかったみたいだよ、本当にごめんなさい!」
男性も自分が今までやっていた事を分かっていたのか、健一にその事含めて謝って来た。
「良いですよ、どちらも謝ったんだから、今後はこういう事がないようにすれば良いだけです、それに同じアパートに住んでいる住人なんで仲良くしましょうよ!」
健一にそう言われたからか、少し笑顔を見せると目の前の男性もう分かってくれたようだ。
「そう……だね。君がそれで良いなら僕からは何も言わないよ。──そうだ、まだ自己紹介してなかったね、僕の名前は櫟浩太。恥ずかしながら1ヶ月前に脱サラした22歳です」
「どうもご丁寧に、俺の名前は三丈健一です。高校1年生です」
2人はそう自己紹介すると色々話し出した。
「ヘェ〜、三丈君、高校生だったんだね!怒っていた時凄く貫禄があったから、もっと年上だと思っていたよ?それと僕の事はさん付けとか敬称はいらないからね?」
「あまり貫禄があるとかは言われたことは無いですがそうなんですかね?それと──櫟っち。ああ、敬称が駄目だからこれからは櫟っちって呼びますからね?」
「何でも好きなように呼んでくれれば良いよ、僕は三丈君がしっくりくるからそう呼ぶよ」
櫟はそういうと何処か人懐っこい顔を向けて来た。
「分かりました、櫟っち宜しくお願いします!」
「こちらこそ、三丈君宜しくね!」
それからは櫟が働いていた前までの会社の愚痴だったり、健一の彼女がいない情報を提供したりと大いに盛り上がった。
その中でも気になった事が。
「そうだ、さっき三丈君怒っていたじゃないか?その時さ──ドラゴン○ールのフリ○ーザの声に似ていたよね!!」
「えっ?そうですか?自分じゃ全然分からないのですが………」
櫟にそう言われた健一は戸惑っていた、自分の声が今までフリ○ーザに似ているなど言われた事が無いからだ。
いないと思うが説明すると、ドラゴン○ールのフリ○ーザを知らない人に教えよう。まずドラゴン○ールとは公民的アニメで海外の人にも人気な最高なアニメだ。
そこに出てくる主人公の敵役の名前がフリ○ーザなのだ、巷では"宇宙の帝王"やら"フリ○ーザ様"なんかと呼ばれ慕われている。今は芸人でそのフリ○ーザの物真似をしている人がいる程人気のキャラクターなのだ。
そんな人気のキャラクターの声に似ていると言われた健一は少し、嬉しかった。
そう考えていると櫟からマシンガンのように矢継ぎ早しに言われた。
「本当に似ているんだって!自分では分からない人も中にはいると言うけど、多分三丈君はその人達と一緒みたいだね、多分何か
「そ……そうですか」
さっきまでおどおどしていた人が流暢に鼻息荒く喋って来たので驚いてしまった。
(──これがオタクという奴か?違うかもしれないけど自分の好きな事や趣味だと人が変わったように話すと聞くからな……今まで自分の周りにこういう人はいなかったからなんか新鮮だな……まあ、友人も片手に数えるぐらいしかいないから比較対象が限られるが)
自分の友人の少なさに嘆いていると櫟に話しかけられた。
「それでね、三丈君。ちょっとさっきの怒ったような雰囲気を出してこの台詞を言ってみて欲しいんだよ」
櫟はそう言うと「今のは痛かった……痛かったぞーー!!」と書かれた紙を渡して来た。
「えっと……これを俺が今から言えば良いんですか?」
「そうだね、出来るだけさっきの雰囲気に近づける為怒った様な感情で、それも少しオネェ口調を作ってフリ○ーザを意識して言ってみてくれ」
「りょ、了解!」
健一は出来るだけ先程櫟を怒った時のことを思い浮かべて、恥ずかしかったが健一が考えるオネェを思い浮かべ、フリ○ーザを意識すると一呼吸入れて紙に書いてあった台詞を叫んだ。
「今のは痛かった──痛かったぞーー!!」
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