第35話 武藤要VS朱雀明
―玄釉最上階。
「要よ、先日の行い見事だったぞ。」
玄武は要に言う。
「勿体ないお言葉です。うちは北部の繁栄の為に貢献しているだけですので。」
要はかしこまった雰囲気で返す。
「そこで要よ、お前に最後の司令を課す。」
玄武は要に言い放った。
「かぐや姫を殺せ。」
「……かしこまりました。」
要は少しの躊躇いを置いて、玄釉を去った。
・
・〜数時間後〜
・
―かぐや宅。
「さーて、そろそろ頃合いかしら。」
かぐやがこの世界では役に立たない時計を見て言う。
「自動セーブって便利だよな。いつでも中断できるから。」
そう言って朱雀はど〇森の電源を切る。
「なぁ、要。」
それとほぼ同時に圧縮された水流が障子を突き破り、かぐやの元に迫る。
しかし、朱雀の炎がそれを蒸発させた。
要は初めてかぐやの職場に来た時と同じ場所に立っている。
「なんで、そんなに動けるのよ。」
要は朱雀を睨みつける。
「悪いな、あたしは不死身なんだ。それと、どんな気分なんだ?」
朱雀は裸足を地につけて言った。
「人を殺すっていうのは。」
「…!!!」
朱雀の言葉を聞いた直後に要の身体のあちこちから圧力が高い流水を吹き出す。
「それは喰らわねぇよ。」
しかし、またしても朱雀から溢れる獄炎がそれを完全に蒸発させた。
「もう一度聞くぞ?どんな気分なんだよ。」
「……うるさい。」
朱雀の質問を要は一蹴する。
「やっぱり''ロボ女''じゃねぇか。」
朱雀はそう言い放ち、中庭は再び轟音に包まれた。
「…明、本当に頼んだわよ。」
かぐやは焦げついた床を踏みつけながら空を見上げた。
・
・
・
―天空。
朱雀と要はひたすら殴り合っていた。
「おい、前みたいなキレを感じないんだが、何か悩み事でもあんのか?」
「…うるさい。」
朱雀の言葉を要は一蹴し続けている。
「そうだよな、殺す事だって感情を無にすれば何も感じないよな。」
「うるさい!!」
朱雀は要に皮肉を漏らし続ける。
「これはお前の意思じゃないんだろ?これは命令、命令だから仕方ないって…自分を暗示し続けてたんだろ!!」
朱雀の拳が要の腹に突き刺さる。
「それの…何が悪いのよ!!」
しかし要はそれを受けきり、手から出される流水が朱雀の頬を掠めた。
しかし、朱雀はそれをまるで気にしないように、攻撃を再開する。
「今のお前は本当の要じゃないんだろ!?」
「あんたにうちの何が分かるのよ!」
要はフェイントを仕掛けて朱雀の脇腹に殴りかかる。
しかし、朱雀には当たらない。
「自分はその程度、そうやって自分を過小評価し続けて、今ここにいるんだろ!」
「それは事実で仕方ない事じゃない!うちは能力無しの並よりも下の存在!今も昔もそう言われ続けてここにいるんだから!」
要は能力無しのゴミ以下の存在。
そう決めつけたのは自分だけじゃない。
…でも、認めざるを得なかった。
「でも、そうやって自由を放棄したんだろ?」
自由になりたいさ。
あんたみたいになりたいよ。
あんたみたいに笑っていたい。
でも、それは仕方な―
「そうやって!奴隷でいたいんだろ!?」
そして、朱雀の右足が要の鼻に命中する。
普通は失神するレベルの痛み。
要はそれを耐えて…
「嫌に…決まってんでしょ!!!」
朱雀の顔面を思い切り殴りつけた。
要は叫ぶ。
「誰が嬉しくて恨んでない人を殺さなきゃならないのよ!うちは殺し屋じゃないのよ!それに、うちがそれをする事でうちの人生が終わる事も知っている!うちは使い捨てじゃないのに…なんで…」
要から涙が溢れ出す。
「なんで…うちなの…?」
生まれた頃からそうだった。
自分が、自分だけがこんな目にあっている理由。
考えたくなかった。
考えなかった。
なぜなら…答えはもう知っていたから。
朱雀は鼻血を指で拭き取って要に問う。
「お前は、どうしたいんだ?」
要は涙と鼻水を溢れさせて叫んだ。
「自由になりたいよ!!!」
36話に続く…
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