第32話 朱雀、猶予期間を得る
「北部操作委員会との戦争について。」
鳳凰は声色を変えて言った。
「そもそも、なんで北部と南部でこんな争いが起きているのですか?」
大元を辿ればこれだろう。
わざわざ争っている理由が分からない。
「北部と争っている理由は過去の出来事からです。」
鳳凰はそう言い説明を始める。
「事の発端は約2000年前、我々気象操作委員会は担当部位を東西南北に分けて運営をしていました。しかしある日、北部が世界中に大雨を降らせました。」
「え?なんで他の地域にも影響させる必要があるんですか?」
かぐやは疑問が募っていく。
「北部の言い分によれば、東西南は水の恵が少ないだとか、その結果起こったのが、地球冠水の危機です。」
なるほど、そんな事があったのか。
でも何故急にそんな事をする必要があったのだろうか。
「我々はそれに怒り狂い、わたしは鳳凰に神獣化して、地球上で大戦争が起こりました。」
「だから今も仲がよろしくない…か。」
かぐやは過去を聞いて何となくだが分かった。
「そして同盟を口実に痺れを切らした北部が、このような状況を生み出しているのです。」
鳳凰は唇を噛み締めながら朱雀の方を見ていた。
いくら重症でないとはいえ、悔しいだろう。
「だからわたしは次こそ奴らを打ち破り、娘の無念を晴らす義務があります。」
なるほど、なんて子供思いな親なんだ。
…あれ、まてよ?
戦場って…地球だよな…?
このままだと地球が冠水するか炎の海になってしまう。
でもどうやって止めよう…。
この人完全にやる気だし。
「戦争なんて野蛮な考えは捨てろ、親父。」
考えてたところに寝転がっている朱雀が言った。
「朱雀、わたしはお前のために…。」
「戦争するって事は、北部と同列に立ってるって事と同義語だよ。」
そう言って朱雀は身体を持ち上げる。
「あたしがこの状況を打開する。戦争も終わらせる。だから少し待っててくれないか?」
…意外な提案だ。
朱雀がここまでするなんて事は珍しい。
鳳凰は少し頭を抱えた後に言った。
「分かった、だが2週間だ。2週間何も無ければ宣戦布告を北部に送り付ける。」
「分かった、会長の言う事は絶対だからな。」
そう言ってからかぐやの肩を叩く。
「かぐ、帰ろう。ゼ〇ブレイドがやりたい。」
「明、傷は大丈夫なの?」
かぐやは恐る恐る聞く。
「大丈夫だ、この程度なんてことはない。」
朱雀はそう言い玲愛を背負い、部屋から出ていった。
「……鳳凰さん。」
「なんですか?」
かぐやは部屋を出る直前に鳳凰の方に顔を向ける。
「明はわたしの友達です。何があっても守ります。」
「ふふ、頼みましたよ。」
かぐやは一礼をして、鳳凰邸から去った。
33話に続く…
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