第31話 かぐや姫、鳳凰家を知る

―鳳凰邸、最上階。

「…移動完了です。お疲れ様でした。」

「うぅ…胃がキリキリする…。」

どうやら不知火の能力は転移系らしい。

朱雀しか知らない能力だったから助かった。

「ようこそ、書類管理委員会の方々。」

「あなたは…」

見知らぬ男の影が目の前にある。

身長は190くらいだろうか。

腰まで届く程の赤髪と濁りのない隻眼。

かぐやはその男が直ぐに誰か分かった。


「南部気象管理委員会会長、鳳凰さん。」


「如何にも。朱雀明とは良い関係を築けているようで何よりです。」

鳳凰は強面のオジサンっぽい顔ぶれだが性格は悪くないらしい。

…ん?さっきなんて言った?

「鳳凰さん、明という名を知ってるんですか!?」

かぐやは驚いたような顔をして問う。

「当然ですよ、朱雀明は地球にいた頃の記憶を取り戻したようなので。」

驚いているかぐやの顔を横から見ていた不知火は説明をする。

「鳳凰様の能力は我々でも到達しえない程の高みです。''心を見通す目''、と言ったところでしょうか。」

「なるほど、それなら十分説明がつくわね。」

さっきから思っていたが南部気象操作委員会にヤバいやつ多すぎないか?

転移能力の不知火とか透視能力の朱雀とか。

…あれ?でもおかしい。それなら…


「なんで朱雀の事を報告しないんですか?」


自分の娘が悪影響と思われている地球特有の感情に汚染されてるなら、記憶を消すはずだ。

不知火は面倒くさそうに答えた。

「…朱雀様は鳳凰様より強いからです。」

「…???」

もう何言ってんのか分からなくなってきた。

南部操作の会長は鳳凰で?

南部操作で最強は朱雀???

ダメだ、頭がパンクしそうだ。

しばらくして、鳳凰は少し恥ずかしそうに答えた。

「簡単に言えば、朱雀は自由が好きなんです。だから最強の領域にいても会長になるのを拒否しました。」

そうか、朱雀はいわば''公式チートキャラ''

って奴だったのか。

少しそこで治療を受けている朱雀を殴りたくなったが、同時にもう1つ謎が解けた。

「なるほど、朱雀が地球に送られた理由が分かった気がするわ…。」

かぐやは朱雀に少し同情した。

「それに…」

「それに?」

鳳凰はまだ喋り足りないようだ。

「わたしに会長の座を授けてくれた朱雀は今でも感謝しています。そのような娘の記憶を消すなんて野蛮な行為はできません。」

なるほど、やはり鳳凰は良い奴だ。

朱雀の性格がそこまでひねくれて無い理由がよく分かった。

「ありがとうございます、おかげで色々理解出来ました。」

かぐやは鳳凰に向かい一礼をする。

「では、本題に入りましょう。」

鳳凰は声色を変えて言う。


「北部操作委員会との戦争について。」


32話に続く…

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