第30話 かぐや姫、敵地から脱出する

「ふふ、これで命令は完全に成功だね。」

要は長い廊下を歩きながら言う。

「書類も奪い、朱雀を戦闘不能状態にする、うちらが取るべき手段を完全に果たした。」

そう言って要は腰から書類を取り出す。

―なんだ?この感触は?

おかしいと思い要は書類を急いで確認する。


そこには焦げて字が潰れた紙しか無かった。


「かぐやさん、あの状況でよくやれるね…。

…でも大丈夫でしょ。」

要はため息をついた後に言った。

「朱雀がいないだけで南部操作委員会は戦力の5割は落ちるから。」

「明…。」

かぐやは朱雀の近くに寄る。

完全に気を失っている。

本当に1ヶ月動けないのだろうか。

胸ポケットの裏には心臓がある。

確実にあの流水は心臓に突き刺さっていた。

…あれ、おかしい。

要はさっき、なんて言った?

かぐやはさっき要が言っていた事を必死に思い出す。

『あんたの胸ポケットすごい使えるね。』

胸ポケット…。

そしてかぐやはそれに隣接して、あることを思い出した。

『あっ使ってくれてたんだ、スマホ。』

『連絡できる奴は限られるがな。』

…朱雀はスマホをどこにしまった?

まさか!?と思いかぐやは朱雀の胸ポケットを漁る。

「……!!」

かぐやは驚きと同時に、笑みを浮かべた。

「明あんた…とことん幸運な奴ね!」


そこには砕けたスマホがあった。


朱雀の傷は幸いな事に心臓に達してなかったのだ。

だがいずれにせよ危ない状況なのは変わらない。

朱雀の胸の肉がえぐられている。

すぐに脱出しないと。

「…脱出なんて出来るの…?」

よく考えれば気絶している仲間が2人いて20分以上の道を誰にも見つからず逃げるなんて不可能だ。

それにかぐやは朱雀のように大きな力があるわけでも無い。

「…一体どうすれば…。」

かぐやが頭を悩ませた時、朱雀の口がかすかだが開いた。

「………ぁ」

「明!?目を覚まして!?」

かぐやは朱雀に注目する。

だがまだ起き上がれる状態ではない。

かぐやは朱雀が何か言ってる事に気づき耳を近づけた。

「………0…90…」

((電話番号!?まさか…朱雀は…。))

かぐやは何かに気づいたのか一生懸命に朱雀の言葉を聞く。

…間違いない。

これは電話番号だ。

「明、わたしはあんたに頼ってばっかりね…。でも、後はわたしに任せなさい。」

そうかぐやは朱雀に言い、目を閉じる。

集中しろ。

何がなんでも成功させるんだ。

わたしと、玲愛、明の3人で逃げるために!

「……!!」

そしてかぐやは、折りたたみの直方体を作り出した。

ガラケーだ。

「頼むから出て!」

かぐやは朱雀から聞いた番号を高速で打ち込む。

どんな風に助けるかは分からない。

でも今のわたしは朱雀を信じる義務がある!


「不知火!」

トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル。

「はい…どなたでしょうか?」

不知火は誰か分からずに困惑するが、直ぐに正体を掴めた。

「…はい、分かりました。」

不知火はスマホの電源を切る。

そして不知火は身体に力を入れて…


その場から一瞬で姿を消した。


「朱雀様!大丈夫ですか!?」

不知火は来て早々朱雀の方に駆け入る。

「直ぐに治療が必要よ。とりあえずここから逃げましょう。」

かぐやは冷静さを取り戻し不知火に言う。

「分かりました、では行きましょう。」

不知火は朱雀、玲愛、かぐやの3人の手をとってから言った。


「鳳凰邸へ。」


31話に続く…

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