第29話 かぐや姫、敵にハメられる

ここは玄釉の宮殿の内部。

そこで朱雀、玲愛、そしてかぐやがそこに潜入していた。

「今あいつ通ったぞ、急げ。次は三階だ。」

「オーケー、最上階の8階まで急ぐわよ。」

かぐやはダッシュで、朱雀は玲愛を背負いながら階段を駆け上がっていく。

「明、こっちの道は人通りが無い気がするわ、効率は落ちるけどバレないためにもこっち通るわよ。」

そう言ってかぐやは道に駆け入る。

「…はぁ、少し休憩させて…。」

かぐやは物陰に腰掛けてため息をつく。

よく考えたら要の位置をまるで把握できていない。

一体どうやって見つければいいのだろうか。

いたずらに歩き回る訳にもいかない。

どうすれば…どうすれば…


「やっぱり来てたんですね、かぐやさん。」


「!?」

かぐやは目の前の存在に驚き直ぐに立ち上がる。

要だ、要が目の前にいる。

しかし、間もなくして要はかぐやの後ろに回り込み…


首根っこを掴み取った。


「うぐ…!?」

「安心してください、殺しはしませんよ。そこのオス女次第ですけど。」

要は笑顔でもう片方の手を朱雀の方に指さす。

「てめぇ、心の底から腐ってんのか…!」

朱雀は指1本動かせない。

もし動かそうものなら目の前にいるかぐやの首が吹き飛んでしまうかもしれないから。

「何を言おうと自由ですよ、これで''最後''ですから。」

要はあざけた笑いを浮かべる。

「最後だと…?一体何を言って…。」

「うちがここで叫べば、あなた達は不法侵入罪になりますね。」

要は青い髪を指で回しながら言う。

「でもそうしてしまうと、うちも強盗の罪に問われるかもしれません。」

「この野郎…さっきから一体何が言いたいんだ…!」

朱雀の怒りを要は鼻で笑い、手のひらを朱雀の方へ向ける。

「あんたの胸ポケットすごい使えるね。」

要は朱雀の胸を見つめて言う。


「あんたの心臓の位置が分かるから。」


そして要の手のひらから高圧力の流水が吹き出す。

朱雀の胸元に向かって。

「やめなさい…要…。」

かぐやも必死の抵抗を見せるが首元から手は離れない。

「……!!」

「ほら、これで終わりでしょう?」

「…朱雀……。」

かぐやから涙が零れ落ちる。


朱雀の左胸から血が吹き出していた。


「…あがぁ…。」

間もなくして朱雀は白目を剥き、廊下で倒れこんでしまった。

「もういいですね。」

要はそう言って手の力を抜く。

「…ゲホ!ゲホ!」

かぐやは首から手が離れた直後に呼吸に専念した。

「かぐやさん、急いだ方がいいですよ。近いうちに関係者に見つかりますから。」

「…要、あんた!」

かぐやは怒りの目を要に向ける。

「朱雀はこの程度で死なないですよ、ただ、後1ヶ月は戦えないと思います。ですから…」

次の要の言葉でかぐやの呼吸が止まった。


「近いうちに、戦争を仕掛けます。」


「……。」

「じゃ、ごゆっくりどうぞ〜。」

要はそう言って、かぐやの元を去っていく。

「………。」

気づけばそこに動けるのは、かぐやしか居なかった。


30話に続く…

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