第28話 かぐや姫、敵地に不法侵入する

「重要な書類達が全部消えています!」


「う、嘘…。」

かぐやは膝から崩れ落ちた。

「え?どういう事だよ!」

朱雀は訳が分からず問う。

玲愛は俯きながら答えた。

「この部屋にある重要な書類達は様々な事務所の機密情報も入っています。もしそんなものが流出したら…。」

朱雀はようやくどういう状況かを理解して青ざめた。

「このままだと、職務怠慢どころの騒ぎじゃないわ…朱雀、多分このままだとわたしと玲愛は確定で、最悪明も記憶が消されてしまうわ…。」

「そ、そんな…。」

朱雀も事の重大性を理解して膝を床につける。

しかし、すぐにかぐやは立ち上がった。

「すぐに取り返しにいくわよ、明、玄釉まで案内して!」

「分かった。直ぐに取り返しに行くぞ!」

そう2人は言い放ち、3人は部屋から飛び出た。

・〜20分後〜

「つ、ついた。」

目の前にそびえ立つは月の北部都市、玄釉。

建物が大量に生えていて、中心地にここだと言わんばかりの高い宮殿がある。

「かぐや、玲愛、ここからさらに時間がかかる。だからあたしに掴まれ。」

朱雀はそう告げて、2人の片腕を掴む。

「へ?一体何を言って…。」

「しっかり掴まってろよぉ!!」

「え、ちょ!?」


ドゴォォォォォ!!!


地面に向かい大きな衝撃が加わると同時に気づけば3人は空中を泳いでいた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

かぐやと玲愛はものすごい叫びを上げている。

しかし、風の音でそれもかき消されていた。

「もうすぐ着地する、衝撃に耐えられる準備をしろ!」

「いつも急すぎんのよ!わたし達はこんな体験全然しないのよ!?」

かぐやは吠えるが現実で言ったらもう数十メートルで着地してしまう。

「かぐや様!ヨ〇ボーです!ヨ〇ボーを作りましょう!!」

「ヨ〇ボーで何とかなったらパラシュートはいらないわよ!!あーもう10メートルも無い…もうヤケだ!!」

かぐやと玲愛はイマジネーションを最大限に引き出してパラシュートをなんとか作り出した。

「…着地成功。2人とも大丈夫か?」

朱雀は一仕事終えたみたいな顔をして聞く。

「……明…背中には気をつけなさいよ…?」

「え、うん、分かった。でもなんで…?」

かぐやは朱雀を無視して玲愛を見る。

「……………。」

ダメだ、玲愛は完全に気絶している。

「明、これ頼んだわ。」

仕方なしに玲愛は朱雀に背負わせる。

ついに宮殿の目の前だ。

取り返さなければ全てが終わる。

今置かれている義務感を覚えながら、かぐやは叫んだ。

「絶対に取り戻すわよ!!」


29話に続く…

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