奴隷争奪編

第24話 かぐや姫、脱出計画を練り直す

―月の都の宮殿。

「人間固有の感情が拡大していますね。」

皇女は下に広がる都市を見て言う。

「やはりあの地球人の襲来が原因と見てよろしいでしょうか。」

上級天使、No.256は問う。

「間違いないでしょう。もはや根を絶つには広がりすぎてる状況、汚れた感情を絶つためには1人ずつ、削っていくしかないですね。」

地球は汚れ。

地球の感情は月の民にとっては

地球でいうコロナウイルスと何ら変わりはない。

''感情が感染する''という表現が正しいだろう。

「そうですね、わたくしも汚れた感情を絶つのを望みます。見つけ次第、天使法に基づいて記憶消去を行います。」

そう言ってNo.256は部屋から出ようとするがある事が思いつき止まる。

「陛下、お願いがあるのですが。」

―かぐやの職場。

「なるほど、犯罪を犯して地球に帰る…か。」

朱雀は頭を掻きながら言った言葉が始まりだった。


「あたし、記憶消されたくないんだけど。」


「え、えぇ…。」

これから犯罪会議を始めようとしたかぐやだが、根本的な所を否定されて困惑した。

「いやだって、思い出が消えるのは切ないだろ?」

朱雀は妙にロマンチストな事を言っている。

「なら聞きたいけど、どうやって記憶を消さずに帰るのよ。」

かぐやの質問に、朱雀はどこから持ってきたのかプリントを渡して説明を始める。

「まずあたし達は、どうやって記憶を消してるのかを知る必要がある。」

「は、はぁ…。」

「記憶の消し方は''天の羽衣''だ。」

この記憶の消し方は、実際にかぐやと朱雀、2人とも経験があるので分かる。

「そんな事知っても根本的解決には…」

かぐやの疑問形に対して朱雀は直ぐに答えた。


「お前の能力で偽造するぞ。」


「…天才か?」

かぐやの口から自然と出た。

しかし同時に疑問が湧く。

「で、どうやってすり替えんの?」

数秒たった後、朱雀が返す。

「…今考えなくても良くないか?」

「何も考えて無かったのね…。」

朱雀の知能レベルを階級的に表すなら

玲愛以上、かぐや未満と言ったところだろう。

「ま、方向性は定まったじゃないか。」

「方向それにするとしばらく何も出来ないんだけど…。」

かぐやの反論を無視して朱雀は結論を言う。

「でも、もうちょい協力者が欲しいな。」

特に最上層の月の民、または天使法に関係する者。

それらが今後必要になってくるだろう。

「ま、当分は作戦会議に没頭しましょう、記憶を消されるとあんたがキレるし。」

そんな事で、かぐやと朱雀の真面目な話は5分足らずで終わった。

―北の都、玄釉(ゲンユ)。

「要(カナメ)よ、南部操作委員会が書類管理委員会と同盟を組んだのは存じておるか?」

「はい、滞りなく。」

屏風で囲まれた部屋で少女は答える。

「今から書類管理委員会が我々に対し敵意を持っているか調査してもらう。」

如何にも偉そうな男は少女に命令を下す。

「直接対面することは可能ですか。」

「許そう。」

「有り難きお言葉。では、失礼します。」

少女はかしこまった表情で部屋を後にした。

「…にしても楽しみだなぁ。」

庭の砂利を踏みしめながら少女は独り言を発する。

「何百年ぶりだろうね、実際に会うのは。」

薄いにやけ顔を出した後に少女は言った。


「あのオス女。」―奴隷争奪編、開始―


25話に続く…

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