第23.9話 百合()

―ある日の昼。

「ねぇ明、今夜誰もいないから家にこない?」

かぐやは甘ったるいような、初々しい素振りを見せながら朱雀に言った。

「分かった。今夜向かう。じゃ、あたしは監視業務があるんでっ…。」

バタンッ

「……。」

静寂が空間の中で満ちていた。

しかし朱雀の頭の中はすんごい事になっていた。

((な、なに!?あのかぐからのお誘いだと!?しかも誰もいないって言ったよな!?まさか…かぐの奴…ダメだ!かぐ!あたし達は女同士だしあたし達は友達で…!!))

…これ以上は同じ事言ってるだけなので省略する。

・ 〜そして夜〜

―かぐやの部屋の前。

朱雀の指は震えまくっていた。

((あたしはこれからかぐとあんな事やこんな事を…いいのか!?本当に…いいのか!?))

この1日、朱雀の頭の中はかぐやのことばかりだった。

監視業務も集中できないレベルで。

((で、でも、かぐとはまだ友達、まずは…お付き合いからでも…))

全然乗り気じゃねぇか。

そして、朱雀は勇気を出して襖を開ける。

「かぐや!あたしは!」

たしかに今夜は誰もいなかった。


というか、かぐやもいなかった。


「…………?」

少しの静寂が流れた時、朱雀の目にあるものが止まった。

だいぶ性能の良さそうなカメラだった。

「……!?」

何かに気づき、さらに周りを見渡したり、部屋の通路を見たりする。

中庭…路地…屋根裏…

至る所にカメラがあった。

そう、朱雀はこの''1日の行動の全て''を観察されていたのだ。

…朱雀は全てを察した。


「「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!」」


―玲愛の部屋。

「ふひゃひゃひゃwwwww!!ひーwww!」

かぐやはモニターの前でずっと笑っていた。

「かぐや様…ちょっと下品ですよ…落ち着いて下さい…。」

玲愛は少し引いている。

「いやだってwwだってwwあはははははwww玲愛ww?見たでしょww?明のあの顔w」

「そんなこと…クスッいや、ちょっと笑いましたけど…。」

玲愛も少し笑っていたみたいだ。

しかし、嫌な予感もする。

「かぐや様…痛い目あっても知りませんよ?」

「wwwあれ?明がいない?」

嫌な予感はすぐに的中した。

かぐやが振り向くと凄い形相をした朱雀がいた。

どれだけ速いスピードで来たのだろうか。

「お前ら…。」

「い、いや…これは全部玲愛が…。」

畜生(かぐや)は全て玲愛のせいにしようとしている。

「そんな言葉で騙されると思うか?1番笑っていたかぐやぁ…?」

全部バレてる…というか全部かぐやのせいになっている。…間違ってはないけど。

カチャッ

朱雀はどこからかロケランを取り出す。

「……( ^ω^)ニコッ」

「は、はは…。」 ―空白期間編、完―

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