第19話 かぐや姫、数千年の関係に決着をつける②

三局目、朱雀先行。

一局目から湧き出るこの勝負の異質さは止まる気配を見せない。

まるで、全てを見透かしているかのような動きをする朱雀に、かぐや達は苦戦していた。

((かぐや様…負けないで…))

玲愛はもはや祈るばかりだった。

書かれていたやるべき事リストは全てやった。

後は自分の主人が何とかしてくれる。

しかしこの勝負の動きで、その信用も揺らぎ始めている。

だから、諦めないように、信じるために祈ることをやめれなかった。


…だが現実は祈って解決するものでは無い。


「300ポイントにレイズだ」

「コール」

そう言ってかぐやと朱雀はカードを交換する。

「500ポイントにレイズだ」

「600ポイントにレイズよ」

「ちまちま増やすなよ。2000ポイントにレイズだ」

「………コール」

もはや駆け引きというものを感じられない、虚無に近しい勝負が繰り出されていた。

かぐや姫、8のスリーカード。

朱雀、♢のフラッシュ。

「…ちくしょう」

朱雀とかぐやの戦いは驚くほど朱雀が有利になっている。

このままだと…勝てない。


現在ポイント、かぐや2100ポイント、朱雀7900ポイント。


第四局…

「ちょっといいかしら」

かぐやが立ち上がる。

「なんだ?不正をしているとでも言いたいのか?」

「いや、そんな事じゃないわ」

かぐやは表情を緩めて言う。

「ちょっと外の空気を吸いたいの」

「そうか、10分だけだぞ」

それじゃ、とだけ言ってかぐやは部屋を後にした。

「かぐや様…本当にどうするんですか」

玲愛は不安をぶちまけるようにかぐやに問う。

「まず、今確定していることがあるわ」

かぐやは爪を噛みながら言う。


「朱雀は不正をしている」


「それはわたしにも分かるんですよ!でも何をしているのか…」

玲愛は突っかかるようにかぐやに返す。

「3つ仮説があるわ」

かぐやは指を3本立てて言う。

「1つ目はわたし達の手札が見えているような能力があること、2つ目は単純に朱雀がポーカーを極めていること、そして3つ目はわたし達の心を覗ける能力があること。あーでも2つ目は可能性低いわね、記憶が戻ったの最近だし」

「…となると、残った二つの可能性が高いってことですか?」

玲愛は恐る恐る聞く。

「そうね、これからの数局で探りを入れてみるわ」

そう言ってかぐやは移動しようとするが玲愛がかぐやの裾を掴む。

「かぐや様、わたしは最後まで信じます。勝とうと負けようとわたしはかぐや様の味方です」

玲愛は邪念を取り払うような顔をして言った。

「何言ってんのよ、勝つわよ''わたし達''は」

かぐやは照れくさそうに言った後、振り返ることはなかった。

「遅かったじゃないか、10分ギリギリだぞ」

「………」

かぐやは何も喋らない。

「まぁいい、四局目を始めるとしよう。」

「…………」

かぐやは何も喋らない。

「おい、お前どうしたんだ?」

朱雀は恐る恐る聞く。

「…………( ゚д゚ )ホゲー」


かぐやは、無意識を極めていた。


第20話に続く…

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