第14話 朱雀、親の仇に勝負を仕掛ける
「えーとつまり…」
頭を抱えながら玲愛は答えを絞り出す。
「朱雀さんはかぐや様と同じ地球経験者ってことですか?」
「ああ、その通りだ」
朱雀はそれを肯定する。
そして顔をかぐやに向け、
「で、この話を聞いてもまだシラを切り続けるか?かぐや姫」
…かぐやは未だに顔が青ざめたままである。
朱雀が腕を振り上げようとする時、
玲愛がかぐやの前に出る。
「ちょっと待ってください!かぐや様も地球を経験していて今は地球から帰ってからの記憶しかないんですよ!」
そう、今のかぐやに罪は無いのだ。
やっていたのはあくまで記憶を失う前、それも仕事で、だ。
「ふーん、なるほど」
朱雀は納得したような仕草を見せた後、皮肉げに言った。
「覚えてないから犯した罪も消えるんだ」
「そ、そんな言い方!」
玲愛がまた突っかかるがかぐやはそれを止める。
「玲愛、もういいわ」
「かぐや様?」
かぐやはそう言い、朱雀の前に出る。
「ごめんなさい」
かぐや姫は土下座した。
玲愛は目を閉じたくなった。
伊達に1000年以上の付き合いではない。
あの高貴なかぐや姫が、敵に土下座しているのだ。
「わたしの犯した罪の大きさは理解したわ。悪いことをした、到底償えるものでもない」
「か、かぐや様…。」
玲愛の目から涙がこぼれそうになる。
だが、耐えなければならない。
主が誇りを捨てて謝罪に徹底しているのだ。
「ふん、それで許されるとでも…!」
朱雀はまたしても拳を振りかざすがかぐやの一言で止まる。
「でも…」
「でも?」
かぐやは頭を重そうに上げて朱雀に訴える。
「わたし達にはやらなきゃいけない事がある、あなたに邪魔される訳にはいかないわ」
少しの間を置いた後、朱雀が言う。
「そうか、お前らはそんなに地球に行きたいのか」
「…そうよ」
かぐやは朱雀に嘘をつかなかった。
中途半端な嘘は逆に状況を悪化させるだけだからだ。
「ならここは、ゲームで決着を着けよう」
「え?」
朱雀の唐突の提案に、かぐやは声を漏らす。
「あたしの賭けるものは、お前たちを邪魔する権利、そしてお前たちの賭けるものは、
お前たちの犯罪行為そのものだ」
朱雀は各々が賭けるものを提示する。
「なんでそんな賭けをするんですか?」
玲愛は突発的に出た疑問をそのまま問う。
「お前たちはどうせこれからも犯罪行為を繰り返すだろ?あたしがこのまま邪魔し続ければ、200年、300年と続いていく。だから、ここで決着を付けるんだよ」
朱雀は玲愛に分かりやすく返した。
「でも、こっちにはそこまでメリットは…」
玲愛が口答えしている最中に、かぐやは割って出る。
「分かった。受けてやるわよ、その勝負」
「かぐや様!?どうして!?」
玲愛はかぐやの了承に驚く。
「わたしには彼女に申し訳ないという気持ちがある、それに…」
「それに…?」
かぐやは続きの言葉を溜めるようにしてから吐き出す。
「ゲームなんていう素晴らしいアイデアは断り切れないわ」
…玲愛は唖然とした。
そして朱雀は笑顔でとんでもない事を言う。
「申し訳ないっていう気持ちがあるならゲームの選択権もあたしが貰うぞ」
「そんな!それはいくらなんでも!」
「いいわよ、ゲームは?」
玲愛の意見を無視してゲームを聞く。
朱雀は考える間も無くして答えた。
「ポーカーだ」
第15話に続く…
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