第13話 かぐや姫、覚えのない罪に問われる②

「「は?」」

第一声この言葉から始まるのはよろしくないが、かぐや姫と玲愛はその言葉しか出なかった。

「忘れたとは言わせんぞ!かぐや!お前が我が父を殺したことは!!」

「いや、なんの事かさっぱり…」

「え、」

「「えええええええええええ!!!」」

かぐやが弁明しようとするが、隣のバカがやかましい。

「玲愛、うるs…」

「かぐや様!月から脱出するって犯罪犯してたのに、もう既に犯してたなんてもはや鬼畜と言う他n…」


「「うるっさいわね!静かにしなさい!」」

「ぐげぇ!!」


バカ従者をエルボーで吹き飛ばし、

半目で見ている朱雀に話を聞こうとする。

「悪いけど、わたしはあなたの父親を殺した覚えはないし、元よりあなたの父親、鳳凰は絶賛ご存命でしょ?」

鳳凰―地球人は炎の神だとかポ〇モンだとかで崇拝しているが、その実は、

地球南部気象操作委員会の会長である。

「た………確かに…」

障子の下から死にかけの玲愛も口を出す。

「あたしの言ってるのは鳳凰のことじゃないわ。」

そう言い朱雀は地球を見て、哀しそうに告げる。

「ま…まさか…」

かぐやは何かを察したのか、顔色を悪くする。

「そう、お前の殺したあたしのもう1人の父親は…」


「地球人だ」


―紀元前200年、前漢。

朱雀は鳳凰家での罪の代償に地球に転生させられた。

朱雀は、そこで父となる者、驪山(リーシャン)に名を受けた。

明(アキラ)と。

貧相な食事、貧相な服装、過酷な労働。

しかし明は父親の愛を受け育てられた。

決して辛くなんて無かった。

「あたし、大人になったらお父さんと結婚するんだぁ」

愛情。

月の民には持ち合わせない感情だが、明はそれを''人間''として授かっていた。

しかし、そんな幸せを天は許してくれなかった。

明が20の歳を迎える前に、夜の空が崩壊した。

月の民が明を連れ戻しに来たのだ。

驪山は明を連れ戻さまいと必死に抵抗した。

明も、決して父を離すことは無かった。

グサッ。

無機質な擬音は、明の髪を真っ赤に包み込む。

そして、父だったモノは明の腕から崩れ落ちる。

「あ」


「「あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''!!」」


怒りと悲しみの共鳴は、夜の空に響き渡る。

そして明は矢を放った月の民を反射的に見つめた。

「…お前だな、忘れないからな」

明は怒りと哀しみで目が充血し真っ赤に染まる。

「いつかお前をぶっこ……し…」

透明な羽衣は明の意識を奪う。


すべてを失った。


父親も、記憶も、''明''という名も。

''朱雀''はそこから、''0''から自分を構成していった。

…そして来るべき1975年。

アポロ計画。

朱雀は明を取り戻した。

そして、憎悪すべき対象を思い出した。

最初は困惑した。

自分では無い誰かが自分の中にいたのだと。

だが憎むべき対処への憎悪はそれを遥かに上回っていた。


そして、かぐや姫の職場の屋根へ。

「…やっぱりかぐや姫が、あの女がそうだったんだな」

2000年越しの恨みを拳で握りしめる。

「覚悟しておきな」

幸せそうな彼女らを見つめ言う。


「絶対に地球へは帰させない」


寂しき少女は、もう失わないと決意した。


第14へ続く…

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