第8話ボロヤの決戦
「容赦ないですねー。こんな廃ビル、炎の魔法使っちゃったら燃えちゃいますよ。」
廃ビルに無事一発目が着火したのを確認すると、続いて二発目の準備に移る。
「水よ、顕現せよ。」
目の前に現れる水の球は、前よりも幾何か大きくなった。
「啄め、鳥。」
慌てて出てきた人相の悪い男たちを鳥のくちばしが襲う。
「な、なんだ?敵襲か。」
「糞、この鳥どもへ。」
「ひっひー。」
およそ二十人ほどか。だが、ボス格は現れない。
「一応聞いておくけど、君達ボロスの手であってる?」
さっきの猫背の男が持っていた袋にそれらしいマークがあったんだが。
「てめえら、ナニモンだ?」
「S級冒険者と其れの付き添いみたいなもんだ。」
「S級か、それぐらいねえと張り合いがねえからな。」
猫背の男は威風堂々と言った感じで、ゆっくりと階段を下りてきた。
「やっぱり、ここのリーダーはお前だったか。念のため聞くが、、、降伏しないか。お前んとこの組織の情報もらえたら、どんなことだろうと死刑がもしかしたら死刑になるかもしれんぞ。」
猫背のくせに隙が無かったからな。
「するわけねえだろ。てめえらが何者かは、、、、まあ半殺しにして聞いた方が速いか。」
「できると本当に思ってる?」
そして、戦いが始まった。
「戦いの基本は、まず弱い奴からと。」
もちろん、猫背の男は僕から襲ってきた。体に小刀を綺麗に隠し俊敏に接近しようとしてくる。
ジャキ!!!!鈍い音がした。
「この隠し杖、俺の給料一年分ぐらいしたんだけどなー。」
杖の樫の木の部分が割れ、金属面が現れた。
「ふっ!!!」
慌てて猫背の男が後退する。
「あらら。そこも読まれてるか。」
直後、猫背の男の身体があった場所から魔法が様々発動した。この杖に仕込まれている物の二つ目である。
「てめえ、、、、少なくともただの付き添いではなさそうだな。」
「どうも。」
この一ターンでだいぶ手札が割れちゃったのはいたい。
「ボロスの手第五の幹部兼A級冒険者のアデルだ。よろしく。」
「急に馴れ馴れしくなるなよ、気持ちが悪い。」
A級冒険者か、道理で強いわけだ。
「すまないな。これをしないとスイッチ入んないんだ。だが、この名乗りをきいて生きてたやつは今までいないぞ。」
「それはどうかな。」
第二ラウンドは静かに始まろうとしていた。
「イノシシよ、顕現せよ。」
その声を聞くまでは。
「おい、マジか。S級の魔物姫本人かよ。これはさすがに分が悪いな。」
「ええ、本人よ。今まで誰だと思ってたの?」
「面が割れてねえからギルドには偽物がいっぱいいるんだよ。」
俺の隣にイノシシが召喚された。逞しい筋肉に、刀をたくさん持った剣士はとても頼もしい。
「さて、また言いますけど。降伏しないですか?」
「本当だと思う?」
「いやー、間違いなく嘘でしょう。」
「本当だって、本当に雇われただけだって。」
あれから、即決で降参してきたアデルをお縄にした後俺たちは尋問を始めていた。
「じゃあ、運んでた小包なんだよ。」
「あれは、、、、、」
あ、なんかやましいとこあるなこいつ。
「あらー、だめじゃない。こんなに。」
エリザベスは奥から、紫色の薬をどっさり持ってきた。
「げ。」
「なあ、この量は死刑どころじゃないな。」
この量があったら、何人の命を絶つことができるだろう。
「そもそも、俺はそんな上役じゃない。重要な情報なんて持ってないぜ。」
「この量運んでんのに、それが通じると思ってんのか。」
今度は黙り込んでしまった。
「なあ、こんなのやめにしないか。知らない方がいいことが世の中にはあるんだ。」
懇願するような顔である。
「それも知ってこその国家だよ。民衆の安全は絶対だ。」
「いいこと思いついた。」
アデルが何も情報を吐かずに、一日が過ぎようとしていた。腹も減ってるはずなのに何も要求しないので、怖くなってきたな。本気で何も言わないつもりらしい。
「一時間に一回この袋を飲め。情報はいたら、吐き出してもいいぞ。」
「・・・・もしかして、これジョークだった?」
「その割には全然面白くないよ、マーク。」
「いや。本当だぞ。」
アデルの顔が恐怖にゆがむ。
「あと薬の効き目を確かめたいってのもあるな。即死以外の効果がないのも気になる。まあ、運び屋やってたけじめみたいなもんだよ。」
「わかったわかった、話すから。ちょっと待て。」
効果はてきめんだったな。
「ふー。まずどこから話すか。いざ話すとなったら、どこから話せばいいかよくわからねえな。」
あごひげを心地よさげに触り始めたので紫色の袋の封を開けた。
「わかったちょっとまて、じゃあ最初はその薬の効果からだ。」
「素直でよろしい。」
「えーと、まずそれの効果は聞いて驚くことなかれ。寿命を減らす。具体的な年数はわかっていないが、ほぼ八袋ですべての人間が死んでいる。」
「寿命を減らす?そんなこと、、、信じられる?」
「まあ。そんなことだと思っていた。」
飲んでも一定量まで達しないと体に悪影響がないのは、せいぜいそんな感じの効果だろう。
「そして、ボロスの手はこの薬で回収した寿命を使って悪魔を召喚することを目的としている。」
エリザベスと自分自身の息が止まる音が聞こえた。
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