第7話第四皇子

 第四皇子コニーは悪名高い人物である。ケチだの、銭ゲバだの礼儀正しくないだの、理不尽に婚約者との婚約を破棄しただの、だれも信用しないだの、王族なのに魔法が使えないだのなどなど。真実のものから、虚実のものまで。まさに種々混交といった感じである。




「お久しぶりです、コニー様。」

「久しぶりだな、マーク。」

王宮につくとすぐコニーにあった。崩れた服装と整えていない髪形、王宮には彼以外こんな格好をしている奴がいないので極めて分かりやすい。

「何かご命令でしょうか。」

「ああ、ある盗賊団の後を追ってほしい。」

そういって彼は胸元のポケットから慎重に魔法瓶を取り出した。

「今はもう違法になっているが、この中には紫色の錠剤が入ってる。吸うだけで魔力量が爆発的に多くなるっていう代物だ。」

確かに魔法瓶の中には紫色の物体があった。

「なるほど。で、副作用は?もちろん、そんな強い作用があるのなら副作用も大変なものがあるのでしょう。」

「話が早くて助かる。この薬の副作用、何とびっくりこれを一日以上使ってたやつで生きてたやつはいません。」

「ええええ。マジですか?」

「マジです。」

それは、、、、かなりまずいんじゃないか。

「と、いうわけでお前にはその盗賊団の本拠地を見つけてほしい。」

「了解。」







「じゃあ、」

と。コニーは更に盗賊団の説明を始めた。

「盗賊団の正式名称は、ボロスの手。まさにこの名前にふさわしい凶悪な奴らだよ。詐欺、恐喝、窃盗、殺し、奴隷。法律にあるすべての罪を犯してるんじゃないか?」

「そんな奴らがいたら、まず間違いなく国軍辺りが対処しそうではありますが。」

俺が来るまで放置されてたってのがまずおかしい。

「うーん、それはそうなんだが。・・・でも、、、だから・・・・しょうがなぃ。」

どうも歯切れが悪い。

「さては、、、どこですか?」

少し声のトーンを落とす。コニーもまた、手を口に当てて隠すようにして呟いた。

「ホルツ公爵家。」

あー、と思わず声が出てしまった。ホルツ公爵家。身分格差は撤廃されているのでもとではあるがこの国最古の貴族の一つであり、当主は宰相に匹敵する権力を保持している貴族家である。もちろん、その貴族がバックにいるのであればしょうがない。

「でも、流石にそんなヤバい連中を援護しないとは思いますが。」

「それが不思議なんだよなあ。今まで、清廉潔白で通していたいい領主のはずだったんだが。」

・・・

「なるほど、それも含めて探れと。」

「ああ、そういうことだ。」








元ホルツ公爵領。肥えた土地と、便利な立地によって栄えている都市である。しかし、最も盗賊団が現れる地域の一つでもある。

「このジャガイモうまいですね。十点をあげましょう。シェフを出しなさい。」

彼女は、さっきからこの店のジャガイモ料理が気に入ったようでうまいうまいとずっと言っている。

「はあ。少しお待ちください。」

気弱そうな少年はそういうと、精悍な顔つきをした中年男性が出てきた。

「このジャガイモは最高でした。本当においしいですね。」

「ありがとうございます。実は、この土地でとれる芋は絶品でしてこの料理をぜひ食べていただけると・・・・」






「エリザベスー。お前、何でここに来たかわかってる?」

「わかってますよ。普段忙しい私への慰安旅行でしょう?」

全然違うな。俺たちがここに来たのは調査のためで、お前をここに呼んだのは一人できたら怪しまれるのでカモフラージュのためと俺の護衛だ。

「そうだ。じゃあ、次は盗賊の血でできてる温泉に入りに行くぞ。」

「あらー、物騒。」

と、そこにある人物が現れた。

「どなたでしょう。」

目の前にいる二人の人物を注意深く観察しながら、声を出す。突如、ドラゴンに乗って現れたその女は胸元が大きくはだけて開いており、かなり派手な格好となっていた。顔の掘り込みは深く、まさに正統派美人という感じである。

「第一王女のマリアンといいます。よろしく。」

「護衛のユーリです。」

その横には体格が大きく、大きなシルクハットをかぶった男がいた。執事というには雰囲気に不似合いである。

「どうも、エリザベスといいます。この度、マークの護衛をやっています。」

スン、とした表情でエルザべスはそういった。エリザベスは大体、知らない人についてはこういう感じである。

「あら、S級冒険者の護衛なんてどこからお金出てるのかしら。第四皇子コニ陣営マークさん。」

知られてるか。俺はそこまで大した存在ではないんだが。

「僕は彼女の冒険者の仕事に付き添ってることがあるもんで、そのつてですよ。今回は危ない任務になりそうなんで。」

「へえ、まあ精々気をつけなさい。行くわよ、ユーリ。」

「はい。」

そういって、彼女はまたドラゴンに乗って帰っていった。

「美人さんでしたね。」

「おん。そうだったな。」

エリザベスは顔を覗きこんでくる。

「もしかして、、、一目ぼれした?」

「それはなんで?」

「ぼおっとしてたから。」

そうか。

「まあ、超絶美人の隣にあんなゴリマッチョがいたからな。あれはいい筋肉の付き方をしていた。」

「ああ、そういえば筋肉好きだったね。」

「そうなんだよ、特に勇者がきれいだったな。あんな感じ」

指さした先には、明らかに常人ではない身のこなしをした男がいた。少し猫背だが、隙が見えず、右手に大きなバックを持っている。

「ああ、結構キレイですね。でも、歩く速さが早い。追いましょう」

「話しかけてみるか。」

そいつと同じ位の速さで追い始める。

「どこまで言ったら止まるかな?」

猫背の男はそのまま大通りから入って、曲がりくねった小道に入り始めた。

「結構行きますね。」

「そうだな。見失わないように注意しないと。」

そうして、男は立ち止った。急に周囲をきょろきょろ観察し始める。

「あの建物、か。」

「ここからは私の出番ですね。」

目の前のぼろやに向かって、魔法が飛び出した。

































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