第8話 ホワイダニット^2

「……なぁ」


 横にいる戸高が声を発する。


「なんだ?」


 いやさ、と口籠る。どうせ、篠宮の事だろう。


「……どうせ、篠宮の好きな奴、分かりきってるよなぁ」


 何を当たり前のことを、そう俺は独りごちる。


「一宮だろ?」


「だよなぁ……」


 戸高がため息と共にそう言葉を吐き出す。


「なんだ、お前も一宮のこと好きなのか?」


 冗談交じりに。勿論、本気で言ってる訳じゃない。


「ないない。そりゃ好きな奴は多そうだけども」


 一宮鈴奈。結構な美人、というか美少女。テストの成績はいつも上位で、運動も出来る。学校生活での模範的文武両道を体現したかのような人物。


「まぁ、アイツは良い奴だからさ」


「だな」


「まぁ、だから上手く行って欲しい訳よ」


「だから、あの焚き付けか」


 篠宮が積極的になれるように。俺らがアドバイスをしたり、背中を押せるように。まず、名前を引き出す。そうやって段階を踏んで、告白まで持ち込む。それがどうなるかは、俺らは無責任にならざるを得ないが。


「ん……? あぁ、そうだな。そう」


 ……戸高は全く考えてなかったようだが。







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砂浜で好きな人の名前を叫んだら本人に聞かれてた話 Ray @afk3164

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