第7話 To be,or not to be.That is the question.
民宿の大浴場はそこそこの広さだ。確かに、中高生が十数人押しかけても捌けるだけはある。
「んで、さ」
……そう簡単に現実から目を背けさせてはくれないようだ。戸高に横にびっちりとマークされている。
「なんだよ」
「どうせ明日言うんだから、今教えてくれよ」
何を、とは惚けられない。
脳裏に、一宮の顔が浮かぶ。あまり話し上手ではない俺の話で、たまに浮かべてくれる可愛らしい笑顔。この世にある愛嬌という愛嬌を全て詰め込み、それでも尚余りある可愛さ。
だが、同時に胸の奥から四方八方を突き刺す痛みが湧き上がってくる。玉砕したところで、状況は好転しない。あの笑顔も──
──見れなく、なる
「おい、大丈夫か?」
向かいには、世良が居た。彼らしく、律儀に(?)タオルを頭に乗せて、肩まで湯に浸かっている。
「のぼせたんなら、先に出てもいいぞ?」
戸高もそう言ってくれる。
「まぁ、後で寝る時にでも聞かせてもらうわw」
「あぁ…ありがとう」
そして湯から上がる時、世良がすれ違いざまに、呟かれる。
「あんま思い詰めんなよ」
──俺は、こくりと頷いて大浴槽から上がった。
*
部屋に1人、畳の上に寝転がる。
考えているのは、勿論一宮のこと。
このままでいいのか。いけないのか。それが問題だ。
このまま、とは?
その行く末はどうなるのだろうか。分かりきっている。
このまま、疎遠になる。
彼女の高校一年でよく話したクラスの男子として、朧げながらも記憶され、同窓会用の引き出しにしまわれる。
しかし、今から半年弱は彼女と関わっていられる。彼女の横で、彼女の笑顔を見ていられる。
告白を、したら?
文字通りの玉砕だ。もはや一方的な殲滅であり虐殺だ。
だが、思いは通じる。行く末がどうなろうと、この恋情が。
どうするべきなんだろうか。誰か、教えてくれ。なぁ、ひかり。
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