第4話 ホワイダニット①

 貸切バスに揺られ小一時間。ようやく民宿へと到着する。まぁ近くの駐車場から民宿へ徒歩で行くのもかなり時間がかかるが。


 民宿で割り当てられた部屋の鍵で扉を開け、荷物を置く。


「いやー、あっちーな、これ」


 畳に横たわり、手で扇ぎながら友人の世良良樹がそう呟く。


「いつも通りって感じだな」


 もう1人の戸高悠也は俺と同じく中1から合宿に参加している。高1で初参加の世良だけはやはり不慣れでこの暑さに舌を巻いているようだ。


 いくら東京の蒸した暑さに慣れていても、海に四方を囲まれた島特有の湿気や、潮の匂いも合わさった暑さにはめっぽう弱い。


「ま、3日も居るんだ、いつか慣れるさ」


 3泊4日と、これといって何かをする訳では無い部活にしては長めの合宿だ。もはや旅行といっても差し支えないレベルの。


「今日はあとは散歩と買い出しぐらいだし、ゆっくりしてていいんじゃないか?」


 戸高がそう世良に言葉をかける。


 そう、もはや旅行レベルのこの合宿では初日は民宿がある町内散策とその合間にスーパーに寄り間食や飲み物を買うのだ。やはりもはや旅行だろう。


「だな~……」


 立ち上がった世良は目ざとくクーラーのリモコンを見つけたようで、さっそく強風にしてクーラーの真下に陣取っていた。




 *




 民宿ならではの美味しい夕食を味わい、残すはお風呂だけだ。部活動のパソコン弄りは明日からだ。


「そうだ俺、合宿でやりたいことあったんだよね」


 世良が、持ち込んだトランプで浴場で売っているアイスの驕りを賭けたポーカーをやっていた俺らを横目に言い出す。世良は参加しなかった。ビビりめ。


「おー、何々?」


 戸高が一枚山札から取ってコミュニティカードに置く。三本先取で一勝二敗、ここでまず勝たなければ。なかなかに厳しい戦いになりそうだった。


 場に出てるカードはハート、クローバーのキングにダイヤの8。あと二枚出る前に既にワンペアが完成しているのだ。


「いやさー……コイバナ、てきな?」


 何か現物を賭けているわけではないのでレイズやコールはなく、フォールドするかしないかだけしかない。


「フォールド」「俺もだ」


「コイバナ、ねぇ……俺らには縁のない話じゃないか?」


 戸高がそう投げ返す。それには俺も同感だった。恋愛や好きな人が出来ることと、そういう話を誰かとするのは全く異なることだと思っているからだ。


「でもお前らも好きな女子がいないわけじゃないだろ?」


 そういわれた瞬間に、一宮玲奈が脳内で思い浮かぶ自分は相当重症なのだろうか。そう考えていると、何故かにやけた戸高と目が合う。……まさか。


「確かにいいんじゃないか?……特に、篠宮には思い当たる誰かさんがいるようだしな?」


……中一から三年以上もの付き合いとなるとこうも見透かされるものなのだろうか?

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